第604話 続く乱戦


 ウナギとナマズは倒したから、陸地に上がっている敵で残ってるのはブラックバスだけだね! そこそこのサイズだから、攻撃は当てやすい!


「『強爪撃』! むぅ……少しHPが残りましたね」


 放電でかなりHPが減ってる状態だけど、微妙に仕留め切れなかった! でも、あと一撃でも当てれば――


「……え? わわっ!? これ、なんですか!?」


 待って!? ちょっと待って!? 真横から見切りに反応があったから、後ろに飛び退いたら思いっきり水が流れてきたよ!?

 ぎゃー!? こっちに水がきたー!? え、何がどうなってるの!?


金金金 : 慌てふためく狐っ娘アバター。これ、『放水』か?

ミツルギ : 溜めて使った場合の『放水』だな。まぁ見た通り、水弾じゃなくて放水するような形になる。


「これ、『放水』だったんです!? というか、私を追いかけてくるんですけど!?」


 凄い勢いの放水だし、止まったら流されちゃいそう!? ともかく、放水が止まるまで逃げろー!


神奈月 : 今の放水は……コイがぶっ放してきてるな。

富岳 : ぶっちゃけ、今のサクラちゃんなら逃げ回らなくても問題はないぞ?

ミナト : そだねー。『縄張り』を展開してるなら踏ん張れる範囲だし、魚がこの手の攻撃を使う時は口から出てるから『雷纏い』がそのまま流れて……あ、止まったね。


「……え? あ、麻痺させるチャンスだったんです!?」


 むぅ……そういう事が出来るなら、なんか惜しい事をした気がするよ!? でも、もう放水は止まっちゃったんだから――


「……って、またですか!? しかも、今度は2ヶ所同時!?」


 ぎゃー!? これ、避けるべき!? ううん、踏ん張れるって言ってたし……でも、それは放水が1つだけの話だし、別方向から同時になら避けた方がいいの!?


ヤツメウナギ : あー、なるほど。堅牢系統かつ、器用が高い個体が3体いるっぽいな。

こんにゃく : まぁあれだけの数がいればなー。

いなり寿司 : 今回の放水は……あぁ、どっちもコイか。

咲夜 : なんかコイ率が高いなー。でもまぁ、今くらいの進化階位で水中へ攻撃したら、たまにあるよな、こういう状況。

ミナト : もう少し種族にバラつきは出るんだけどねー。まぁたまにはこういう偏りも出るかな?


「わっ!? わわっ!」


 どうなるか分からないから、ここは回避なのですよ! というか、水弾も他の敵から飛んできてるし、川からの攻撃が激しくなってきてる!?


サツキ : サクラちゃん、躱す、躱す、躱すー!

水無月 : これ、耐えられないの?

ミツルギ : 流石に2発同時は躱した方がいいぞ。予期しない方向に流れが向く事があるから、そこで大きく崩れる可能性もある。

真実とは何か : それこそ、真実なのである!


「悩みましたけど、躱して正解だったんですね!? わわっ!?」


 2つの放水が交差するように動いてきたから、真上にジャンプして回避! ふぅ、なんとか飛び越えて避けられ――


「っ!? 空中まで追いかけてくるって酷くないですかねー!?」


 うがー! こんなの避け切れないよ! むぅ……思いっきり後ろに流され……あれ? あ、雷纏いが流れていって、放水がおかしな向きになっちゃってる!?


サツキ : 暴れ狂うホースみたいになっちゃった!?

ミナト : あはは、コイに麻痺が入って、向きが滅茶苦茶になっちゃったね。


「そんな事ってあるんです!? わっ!? わわっ!?」


 制御されてない放水はどう動くか全然分かんないよ!? 土手の近くまで吹っ飛ばされたし、そっちまでもう片方の放水は届いてきてるし! 


「あー!? もう雷纏いの効果が切れ――わっ!?」


 待って、待って、待って!? 脚が何かに払われて、盛大にバランスを崩した……って、目の前にカニだー!?


「何でハサミを振り上げてるんです……ぐふっ!」


 ぎゃー!? 思いっきり顔面を殴りつけられたー!? しかも朦朧になったし、このカニは何をしてくれてるんですかねー!?


咲夜 : サクラちゃん、押され始めたか。

G : 『畏怖の気迫』をオフにしてるから、好戦的な個体が攻めてきてるしな。まぁ堅牢が高くなってるから、ダメージ的にはまだまだ平気だが……。

こんにゃく : それでも、数の暴力は恐ろしい! 陸地の敵も、ちょいちょい混ざり始めてるのがなー。

イガイガ : このタイミングで『朦朧』は痛い!

いなり寿司 : 大して使えないうちに『雷纏い』の効果が切れたの痛いか。


「それはそうなんですけど、このカニ、頭ばっかり殴りまくってくるんですけど!?」


 うがー! 顔面に張り付いて、ハサミで殴りまくってくるとか、嫌な攻撃だー!? ぐぬぬ、HPの減り方はまだ大丈夫だけど……状況が悪いよ!?


「あ、朦朧が治りました! 一旦、仕切り直します! 『畏怖の気迫』オンで!」


 今襲ってきてるのはどれも格下の敵だから、これで追い払えるはずだよね? ……うん、攻撃が収まって、逃げ始めたよ!

 顔に引っ付いて殴りまくってきたカニも、凄い勢いで逃げていってる! むぅ……あのカニは腹が立つから仕留めてしまいたいけど、もう川の中まで逃げていっちゃった……。


「……ふぅ、酷い目に遭いました。やっぱり数が多いと厳しいですねー」


 流石にちょっと縄張りを使った影響が大きかったかも? 畏怖の気迫を使ってないと、普通に格下の敵でも襲ってくるもん! ……襲われ過ぎじゃないですかねー?


ミツルギ : 格下でも『畏怖の気迫』を使ってなければ、普通に襲ってくるからなー。

金金金 : 格下は、普通は避けてくるんじゃねぇの?

ミナト : それは交戦状態に入ってない場合だね。縄張りを使ったら範囲内の全ての敵と交戦状態に入るから、好戦的な敵は普通に襲ってくるよ。

咲夜 : Lv10以上離れてたら、流石にそれもないんだけどなー。

金金金 : あぁ、なるほど。普段は『畏怖の気迫』がオンになってるから追い払えてるだけなのか。

富岳 : そういう事になるな。まぁ今みたいに、厳しくなればオンにして仕切り直すのはいい判断だぞ。


「……あはは、仕切り直さずに済むならそれが良かったんですけどねー」


 まぁ死なずになんとか仕切り直せるなら、悪い状態でもないの――


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


「……え? 今、何が死にました?」


 いきなり撃破のアナウンスが出たけど、内容が謎過ぎるよ!?


ミナト : 多分、陸地に上がってたブラックバスかな? コイの放水で土手の上まで吹っ飛ばされてたし、川に戻れず死んだのかも?

イガイガ : あー、そういう事もあるよな。って、放水で吹っ飛ばされてた!?

こんにゃく : 相変わらず、よく見てるもんだな。


「あ、あのブラックバスですか! ……地味に仕留め損ないましたけど、まぁ結果的に倒せたならよしとしましょう!」


 経験値は結構入ったし、逃げられて生き延びてるよりはいいもんね! ふふーん、ブラックバスには勝ったのですよ!


富岳 : あ、サクラちゃん。ボス戦で縄張りを使うなら、再使用時間は気にしとけよ。

G : あー、再設置するのに10分は必要だしな。


「……えーと、あと5分は再使用は出来ないですね。まぁまだLv47なので、挑みに行くのも危険ですけども!」


 Lv50に到達してなければ、あのデンキウナギとの戦闘で縄張りを使うのは自殺行為だもん! 格上の敵が大量に……って、場所的にはそうでもないかな?

 エリアボスのデンキウナギが出た場所は、河川域の東の方だから……多分、Lv47前後の敵が出る辺り? これ、もう割と近くまで進めるLvにはなってるのかも?


神奈月 : あの辺なら、もうボス以外は同格くらいじゃね?

ミナト : Lv帯としてはそうなるねー。もうLv1か2上げれば、挑みに行ってもいいかも?


「そろそろ挑みに行っても大丈夫なんですか! それなら、HPが全快したら出発しましょうかねー?」


 なんだかんだで結構時間も経ってるし、ボス戦が済めば今日の配信は終わりくらいかな? うん、そうしよー!


サツキ : 今日の目玉は、ボス討伐だー!

水無月 : ボス討伐だー!

チャガ : ボス戦をするなら、しっかりと胃袋のストックも回復させとけよ。


「あ、はい! それはちゃんとやっておかないとですね!」


 実質的にHPが増えるようなものなんだし、回復アイテムを使ってでもちゃんと胃袋のストックはしておかないと!

 でも、出来ればアイテム以外でストックしておきたいなー。まぁその辺はHPが全快してから考えるとして……。


「あ、放電の再使用時間が過ぎました! ……流石に最大まで溜めて使うと長いですねー」


 さっきの戦闘中に思いっきり使いたかったけど、再使用時間の最中は使えないのが痛いのです……。


ヤツメウナギ : まぁそこはそういう仕様だからな。そればっかりは仕方ない部分だぞ。

金金金 : そういやふと思ったんだが……あのデンキウナギ、『麻痺耐性』は持ってるのか?

ミナト : あら? そこを聞いちゃう?

ミツルギ : ネタバレ案件になるんだが……サクラちゃっん、どうする?


「え、ネタバレ案件なんです?」


 てっきり麻痺は効かないものとばっかり思ってたけど、なんだかこの反応の感じではそうでもないっぽい? このネタバレ案件……聞くか、聞かないか……どうしよう!?


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