第603話 陸地に上がった敵


 ふっふっふ! 溜めた放電では死ななかった敵が戻ってきてる……けど、これってどう倒そう!? 水中戦は出来ないよ!? 放電もまだ再使用時間は過ぎてないし――


「わっ!? わわっ!? 次々と水が飛んでき始めました!?」


 ぎゃー!? 見切りへの反応で、視界が真っ赤に染まってるよ!? えっと、えっと、えっと!? これだー!


「『疾走』です! これで少し川から距離を取りますね!」


 もう個別に避けられる範囲じゃないから、避けるんじゃなくて、根本的に距離を取るのです! 


サツキ : サクラちゃん、戦略的撤退だー!

水無月 : 撤退だー!

咲夜 : 思った以上に遠距離攻撃を持ってる個体が多いな?

ミツルギ : あれ、別に遠距離攻撃だけの反応じゃないぞ?

神奈月 : 生き残ってるのは堅牢系統が多いだろうし、突撃してきてるヤツの方が多いはず。

咲夜 : あ、そういやそうか。


「……という事は、今、私の後ろって……わっ!? ピチピチと跳ねてる魚が沢山です!? わー!?」


 その状態から更に私に向かって跳ねてきてる!? うん、この状態は逃げに徹した方がいい気がする!


金金金 : なんか前にも見たな、こんな光景。

こんにゃく : まぁ大量の川の魚を一度に相手にすれば、よくある光景だな。

ヤツメウナギ : 進化階位が上がれば上がるほど、適応がなくても地上で生き残る時間も延びるしな。その分だけ、攻撃もしてくるぞ。


「なんかその話も聞いた覚えがあるような気がします! でも、逃げてばっかもあれなので、これでいきましょう! 『獅哮衝波』!」


 ふふーん、ズサっと止まって疾走を終わらせてから、溜めを始めつつ、再び走り出すのです! 背を向けてはいるけど、完全に逃げはしないのですよ!


サツキ : サクラちゃん、広範囲攻撃で一掃する気だー!

富岳 : 範囲的に全部の個体をまとめては倒せんだろうが……悪くはない手段だな。

ミナト : サクラちゃんを追ってきてるから、その直線上に並んだ敵を一掃するのがいいかもね?

金金金 : となると、逃げる方向は真っ直ぐの方がいいか。


「確かにそれはそうですね! よーし、それじゃ縄張りの外に出ない程度に、下流へ向かいましょう!」


 ふふーん! 獅哮衝波を溜めながら、下流へと駆け抜けていくのです! ちょいちょい川の方からも水が飛んでくるけど、走ってるから全然当たらないのですよ!


サツキ : 思いっきり駆け抜けちゃえー!

水無月 : 駆け抜けちゃえー!


「はーい! 思いっきりいきますよー!」


 いぇーい! 縄張りでの強化があるから、私には全然攻撃が届いてないね! ふっふっふ、このまま溜め切って――


「……え? わわっ!?」


 真っ正面から、見切りに反応!? 大急ぎで、横に飛び退いて――


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


 ……避けた部分に、なんか衝撃波が通っていったよ!? 待って、待って、待って!? 今の獅子咆哮か、そんな感じの攻撃だった!


「っ!? 『巧妙なオオカミ』ですか!?」


 ぐぬぬ、進行方向にLv44のオオカミが待ち受けてたよ!? 格下なのに、遠距離攻撃を仕掛けてくるとか! ……『畏怖の気迫』をオフにしてるから、追い払う効果は出てないよねー。


ミツルギ : 今のは『狼叫衝波』か?

富岳 : 凝縮した『狼の雄叫び』の可能性もあるが……まぁ躱したし、どっちでも問題はないな。

ミナト : このオオカミをどう処理するかの方が問題かなー? 背後の敵は何体かオオカミが仕留めちゃったけど、まだ結構残ってるしさ。


「というか、私の経験値を奪わないでほしいんですけど!? あ、逃げました!? 逃しませんよ!」


 うがー! 攻撃するだけでしておいて、即座に逃げるとかどういうつもりですかねー!?


金金金 : 逃げるというよりは、距離を詰めないようにしてる?

チャガ : 生命と堅牢が弱点になってるし、スキルで屈強も俊敏も弱点に出てるから、完全に遠距離特化型だな。知恵と俊敏が高いから、下手に距離は詰めてこないぞ。

ヤツメウナギ : とはいえ、縄張りの中だしな。極端に引き離される事も……いや、そうでもないな?


「あのオオカミ、速くないですかねー!? 何で今の私で追いつけないんです!?」


 俊敏のステータスも縄張りで1.5倍になってるはずだよね!? それでも追いつけないって……元々、そのくらいのステータスがあるの!?


ミナト : 多分だけど、『逃走』を使ってるかな? 向こうが格下だし、発動条件は満たしてるよ。


「あー!? そういえばそんなスキルもありましたね!? あ、溜めが終わりました!」


 むぅ……溜めが終わったから、強制的に走るのが止められたー! ぐぬぬ、あのオオカミは何となく逃したくないよ!

 というか、絶対にまた攻撃を仕掛けてくるよね!? それなら、いっそここで仕留めておいた方がいい気がする!


「……決めました! まずはあのオオカミを仕留めます!」


 まだ視認出来る範囲にいるし、逃げてる先は河原だから大丈夫! マップでも射程とオオカミの位置を確認しつつ、ちゃんと当たるように凝縮して……あ、マップで見た感じでは射線上に他の敵もいるみたいだけど……直接は見えない? うん、まぁいいや!


「獅哮衝波、発射です! いっけー!」


 これが回避されたら痛いけど、私に背を向けて走ってるんだから、見切りでは見れてないはずだよね!?


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<サクラ【巧妙なライオン【雷】】が成熟体:Lv47に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを4獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


 いぇーい! 河原を抉り気味での攻撃になったけど、なんとかオオカミに直撃させられ――


「わっ!? わー!?」


 ぎゃー!? 後ろから何か衝撃が……って、ブラックバスが体当たりしてきてた!?


「っ!? 大きなナマズまでいます!? ぐふっ!」


 ぎゃー! 思いっきり体当たりされたー!? 待って、待って、待って!? このナマズ、1メートルくらいない!?

 あっ!? バランスを崩して転んだところを、ウナギが首に巻き付いてきた!? うがー! 離せー!


金金金 : オオカミの攻撃では殺されなかった魚達が、次々と襲いかかってくる! いや、容赦ねぇな?

ミナト : まぁ水中に放電を放つって事は、こういう事だからねー。

咲夜 : 届く範囲の相手を、全て敵に回す!

真実とは何か : それが真実なのである!


「それは分かってますけど、魚なのに陸地で動き過ぎですよ!? むぅ、これでどうですかねー! 『雷纏い』!」


 溜めた放電で麻痺してた敵が多いんだろうし、これなら効くと思うんだけど……あ、やった! ウナギは麻痺して、巻き付いてた首から離れたね!

 それにのしかかってきてたナマズも、ピチピチと跳ねながら突撃してきてるブラックバスも麻痺したよ! ……川から飛んできてる水は、今は無視で!


「とりあえず、陸地に上がった魚から殲滅ですね! 『双爪撃』からの『強牙』!」


 この中で1番攻撃が当てにくそうなウナギに爪を振り下ろして、そのままガブっと噛み付くのですよ!


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


「ウナギは撃破完了です! 次、ナマズです! 『連突撃』!」


 今回の標的は大きいから、当てやすいはず! でも、魚だから踏ん張れないだろうし、吹き飛ぶのを前提に考えて……ここ!


「おー! 結構、吹き飛びますね!」


 1撃当たったら、次の狙いが出るから……あ、ある程度は勝手に距離を詰めてくれるんだ! だったら、これで!


「次々、いきましょう! これでどうですかね!」


 ちゃんと狙いを定めさえしたら、連続での突撃動作はやってくれるのはありがたいね! ちょっと狙いをつけるのが忙しいけど!


サツキ : サクラちゃん、怒涛の連続体当たり!

水無月 : 今回は上手く決まるねー!

ミツルギ : 意外とこの手の連続した体当たりは当てにくかったりするんだが……サクラちゃんは、やっぱり妙なとこで精度が高いよな。

富岳 : 確かにな。この辺のスキルも空間把握能力が大事なんだが……サクラちゃんはその辺が秀でているのは間違いない。


「あ、そうなんです? んー、いまいち実感はないですけど……」


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


「とりあえず、ナマズの撃破は完了です! 次はブラックバスですね!」


 ふふーん! 順調、順調! 陸に上がってきてる敵を一掃し終えたくらいで、放電の再使用時間は過ぎるかな? 過ぎてれば、連発で仕留めていこー! 

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