第582話 平原を抜けて


 思いっきり段差で落ちて転んだけど、そこから立て直して、再び疾走中!


「縄張りも抜けましたし、あと少しで平原の北の端ですねー!」


 ふふーん、ここからエリアの端までは見通しはいいから、もう転ぶ事はなーい! もうあと少し、全力で駆け抜けていくのさー!


サツキ : どんどん、いっけー!

水無月 : あと少しだねー!


「はーい! ラストスパートです!」


 縄張りから出たら明確に速度は落ちたけど、それでもかなり移動は速いのさー! そして、今、北の端に到着なのですよ! うーん、途中で変に止まっちゃったから、微妙に走り足りない気分だし……。


「もうこのまま駆け抜けて入っちゃいましょう!」


 ふっふっふ、切り替わったばかりの場所なら、今の私のLvなら問題なーい! 止まらずに突っ込んじゃえ!


ミツルギ : ……え?

神奈月 : 止まらずに突っ込む!?


<『名も無き平原』から『名も無き河川域』へとエリアが切り替わりました>

<規定条件の達成により『名も無き平原』のエリア名が変更可能になりました>


咲夜 : あー、エリアが切り替わったか。

いなり寿司 : これ、いきなりエリアボスの出現とかは大丈夫か?

富岳 : それ以前に、移動中で色々とスキルが切れてるが……。


「あ、そういえばその危険性があるんでした!? 看破とかも切れてます!?」


 ぎゃー!? ストップ、ストップ!? エリアボスが出てくる可能性とか、スキルの効果状況とか、そういう事の確認を忘れてたー!?

 大急ぎでズサッと止まるるのですよ! 襲ってきそうな敵は……いなさそうかな?


「いつの間に切れてたんですかねー!? 『索敵』『見切り』『弱点分析』『看破』!」


 危ない、危ない! この辺のスキルの効果が切れてたの、完全に見落としてたよ! わっ!? トカゲが目の前に……って、ここでエリアボスとかじゃないよね!?


「あ、この『迅速なトカゲ』、Lv41ですか。……いやー、早々にエリアボス登場ではなかったみたいですね!」


 周囲をぐるっと見回しても、目立つ敵の姿はなーし! 少し離れたところにイノシシがいるけど、Lv41の『頑強なイノシシ』だからエリアボスではないね!


ヤツメウナギ : 慌てて周囲を確認するなら、そもそも止まって慎重に入ればいいのでは?

サツキ : 走るのに夢中になってて、そのまま勢いで進んだんだと思うよ!

ミツルギ : 見てた感じでは、そんな様子だよなぁ……。

ミナト : まぁ走って移動してる最中なら、エリアボスに捕捉されても、意外と初撃は躱せれるけどね。

咲夜 : ……それはまぁ、確かに?

G : 動き続ける事で、的を絞らせないってのは出来るからなー。むしろ、走り抜けるなら半端に止まらない方がいいんじゃ?


「……え? 今、止まってる方がマズいんです!?」


 わー!? なんか不穏な事を言われたけど、大丈夫だよね!? どこかから、既に狙われてるなんて事はないよね!?


金金金 : 慌てふためく狐っ娘アバター。でも、それっぽい敵の姿はないが……?

ミナト : あはは、まぁそういう可能性もあるってだけで、実際に今、エリアボスが近くにいた訳じゃないよー。ザッと見た感じでは、多分エリアボスはいないね。

G : 不用意に突っ込んで、不用意に止まったから、ちょっと脅かしただけだな!


「あ、そういう事だったんです!? ……ビックリしましたよ、もう!」


 私が見つけられてないだけで、この近くでもうエリアボスから狙われてるのかと思った! ……うん、確かに色々と不用意に突っ込み過ぎた気がするし、そこは反省!


「……それにしても、ここも『名も無き河川域』なんですね?」


 『カラメル河川域』の東側で下流になるから、エリア名に『下流』とか付くかと思ってたけど、意外とそうでもなかった!

 パッと見た感じでは、『カラメル河川域』と違うような感じだけど……ここから、川が見えないし!


ミツルギ : 川に関しては独特な要素もあるんだが……ネタバレ案件になるな。その辺、どうする?

神奈月 : ネタバレ案件とはいっても、些細な範囲ではあるけどなー。

G : まぁここの要素は、確かに些細か。ある意味、もう答えには到達してもいるしな。


「えーと……そういう事なら、その要素を教えてもらってもいいですかねー? どういう事なのかは気になります!」


 川ならではの独特な要素ってなんだろ? エリア名が同じ事と関係ありそうだよね?


ミツルギ : では、説明しよう! まぁ川は数エリア、同名エリアが続く事があるって話なだけなんだがな。

ミナト : 丘陵エリアみたいに1つの巨大なエリアではなくて、同じような場所がいくつかに分かれてる感じだね。まぁ場所にもよるんだけど、2〜4エリア分くらいかな?

咲夜 : 下流であっても、『下流域』というエリア名はない! あるのは『河口域』や『渓流』だな!

ヤツメウナギ : ……同名エリアが続く件はいいとして、そこは言っていいのか? いや、『渓流』は別に問題ないんだろうけど……。

咲夜 : あ、しまった!? これ、別件か!?

G : またやらかしたのか、咲夜さん……。


「……あはは、まぁ川のエリア変化についての話の1つですし、問題ないですかねー? 『渓流』は既に行ってますし、下流に河口があるのは当然ですからねー!」


 むしろ、河口がない川って何って話だよね! そこは少し考えれば分かる事だし、関連性がある内容だから問題なーし!


「ところで、なんで同名エリアが繋がってるんです? いっそ、丘陵エリアみたいに広い同じエリアでいい気もしますけど?」


 んー、その辺の理由がよく分かんない! なんでそんな仕様になってるんだろ?


こんにゃく : エリアを区切ってないと、敵のLv帯が変わらないからだな。川の場合、水中のみで育てる事も出来るようになってるし。

いなり寿司 : とはいえ、陸に進出するよりは範囲が狭いけどな。

イガイガ : 海へ下るか、時間を飛ばしながら川の上流と下流を往復するか、陸地に進出するかって選択肢になる感じだ。


「あ、そういう理由なんですね!? なるほど、水中だからこそって話ですか!」


 そっか、そっか! 今の話を聞いて、エリアが複数に分かれてるのは納得! やっぱり魚は水中で泳ぐものだしねー!


「そういえば、ヒレで地面を歩く魚とかいましたよね。陸地へ進出する場合、適応進化でああいう形になるんです?」


 正確にいつだったかは忘れたけど、そういうのを見た覚えはあるもんね。あれ、私のライオンが水中へと進出する為の適応進化の魚版なのかも?


富岳 : 適応進化『地』が、陸地への適応になるな。主に水棲生物が陸地で進出する為に使う適応進化だ。

咲夜 : 欠点としてはあれだな! 水中に戻った時以外、絶対に解除出来ない適応進化って事だ!

神奈月 : ……適応進化を維持す為の増幅をするのに、陸地で一旦解除したものの、そのまま死にまくるという事があるんだよなー。

ヤツメウナギ : なんなら、さっさと進化階位を上げて、増幅せずに再び適応進化を発生させた方が早いくらいだぞ。


「そんな事ってあるんです!? あー、でも増幅する為には一旦保存しなきゃですし、そうなりますよねー」


 なんだか微妙に変な仕様な気もするけど、逆に考えれば増幅は不要な適応進化なんだね! まぁ私のライオンでは必要ない内容……あれ?


「あのー、ちょっと疑問なんですけど……昨日の実況外の配信プレイで『火』の適応進化が保存された宝石を手に入れてるじゃないですか? あれと同じ感じで『地』も手に入ったりします?」


 もし、その手段で手に入るなら、ライオンでもその適応進化は出来るのかな? やって意味があるのかは疑問だけど!


ミツルギ : 入手確率は相当低いけど、その方法で入手自体は可能だぞ。

咲夜 : ぶっちゃけ、陸の種族ではほぼ役に立たんけどな!

富岳 : 雷での『放電』、水での『放水』みたいな攻撃に使えるスキルは手に入るが……入手難度と実用性を考えたら、凄まじく微妙だ。

ミナト : んー、まぁ実用性はともかく、入手難度が現実的ではないからねー。

神奈月 : ミナトさんなら実用性があると聞こえるが……あ、そういや足場にして空中に駆け上がるのに使うんだっけか!?

こんにゃく : あー、あったな。上級者向けの運用方法だったはず……って、昨日サクラちゃんがやった水を足場にしてやるヤツに簡易版か!

いなり寿司 : あぁ、『水化』がなくても足場に出来るから、その分だけやりやすいんだったか。……それでも高難度なのは変わらなかったはずだが。


「あ、昨日やったあれですか!? ……空中戦をやる手段としてはありですね」


 でも、根本的に入手出来るかは運任せじゃどうしようもないよね! それに、上手く扱い切れる気もしないのですよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る