第575話 今日の配信の準備


 よーし、髪飾りはこんなもんかな? あとはVR機器の方でちょっとだけ弄って……って、もうすぐ降りなきゃいけない駅だー!?


「わわっ!? 降りないと!?」


 危ない、危ない! 気付くのがもう少し遅れてたら、降り損ねるとこだった! でも、なんとかギリギリセーフ!


「この時間なら、配信までは余裕あるよね?」


 駅から家までは遠くないし、電車1本分は余裕を持って帰ったから大丈夫! 今のを乗り過ごしてたら、色々アウトだったけど! ……その辺、注意しないとねー。


「とりあえず、アイスでも買って帰ろー!」


 コンビニに寄ってアイスを買って、帰ってからシャワーを浴びて、その後に食べるのです! 時間が大丈夫そうなら、メンチカツと一緒に、さっき作った髪飾りも取り込んでいこー!


「アイス、何がいいかなー?」


 時々変な味のアイスがあるけど、またそういう新製品はありませんかねー? ああいうの、見たら1度は買ってみたいやつ! ただ、大体は2回目に見る事はないんだよねー。



 ◇ ◇ ◇



「……暑い」


 コンビニでアイスは買ってきたけど、特に変わったのはなかったから抹茶アイスで! 店員さん、姉さんの友達の人だったけど……なんかジロジロ見られてた気がするのは気のせい?


「むぅ……姉さんの事だから、気のせいじゃない気もする……」


 かと言って、『私の姉が、私の事で何か言ってましたか?』なんてよく聞かないよ!? ぐぬぬ、姉さんの魔の手は一体どこまで広がってるの!? 学校での事すら、知られてたし!


「……まぁいっか!」


 姉さんの妹だという風に見られるのは……まぁ正直、居心地がいいとは言えないけど、それでも頑張っていかないとね! どうやったって私の中から切り離せない部分なんだから、『私は私だ!』ってのを自分自身で押し出していかないと!


「んー、それだと、あんまり姉さんに教わり過ぎるのも駄目なのかな……?」


 最近、ちょっと姉さんに教わったりし始めたけど、それを聞いてて思った! 私のやり方に無駄が多いのは分かったし、そこは改善すべきとこだけど、姉さんとは意外と違った方法でやってた部分もある感じ!


「文化祭の分だけでも、全部自分だけでやってみようかな?」


 火の球の炎感にいまいち納得いってないんだけど、そこは自力でやってみよう! 文化祭に関しては、私自身が楽しめるようにやっていくのが1番大事!


「それにしても……やっぱり暑いなー」


 文化祭のを手伝うのはいいんだけど、この行き来だけはどうにかなりませんかねー? 夏休み中に学校まで行くの、割と面倒なんですけどー!

 まだ結月ちゃんから話し合った内容を整理したメッセージは届いてないけど、その時に何か手段がないか聞いてみよっかな? フルダイブでのVR空間だって作れるんだし、学校まで行かずに話し合いとか出来たりしない?


「まぁ、それは後でだねー!」


 とりあえず今は、家に帰るのが先決だー! そして、この気持ち悪い汗はサッとシャワーで洗い流すのですよ!



 ◇ ◇ ◇



 家に辿り着いて、すぐに冷凍庫にアイスを放り込んで、シャワーで汗を流し終えた!


「ふぅ、さっぱり……あ、着替え、忘れたー!?」


 わわっ!? ちょっと慌ててたから、思いっきり忘れてきちゃった!? ぐぬぬ……まだ今日は誰も他には帰ってきてないし、今のうちだー! バスタオルを巻いて、自分の部屋まで移動!


「……セーフ!」


 階段を上がる時に玄関の前を通るんだけど、そこで兄さんが帰ってきてドアが開くなんて事はなかった! 見られたら怒られるけど、なんとか誰にも気付かれずに自分の部屋まで戻ってこれ――


「わっ!? あ、新着メッセージ?」


 机の上に置いてた携帯端末から通知だったみたい。普段は頭に付けてるヘッドバンド型だけど、外してると通知音は出るんだよね。

 内容確認の前に、服を着ようっと! バスタオルのみでほぼ裸な状態で、気も張ってたからビックリしたよ! ……着替えは忘れずに、しっかり持っていっとかないと!


 よーし、着替え終わり! このメッセージ、誰からだろ? タイミング的には結月ちゃんからかな?


「やっぱり結月ちゃんからだ! えーと……あ、配信準備もあるだろうから、文化祭の件は配信が終わってから送ってくれるんだね」


 そっか、そっか! まぁ確かに今から内容を確認してたら、内容次第では遅くなる可能性も否定出来ないもんね! とりあえず『分かった!』って返事を送っておいて……。


「あ、バスタオル……戻してこようかな?」


 流石に素っ裸で家の中を動くのは嫌だったからバスタオルだけは持ってきちゃったけど、使った後のは洗濯カゴに入れとかないと! あ、それにアイスも冷凍庫に入れたままだー!?

 うん、どっちにしても1階まで降りる必要は確実にあるね! まだ時間的には……余裕がある訳じゃないけど、多少の猶予はある! 迷うより先に、行動開始! まずは階段を降りて……。


「……はぁ」

「あ、兄さん!? 何でいきなりため息なの!?」

「……その手に持ってるものを見りゃ、大体分かる。また、着替えを忘れたな?」

「それは……その……すみませんでしたー!」

「別に俺はどうでもいいが……こうやって開けた時に、通りすがりの誰かに見られる事があっても知らんからな」

「うっ!? それは嫌ー!?」

「嫌なら気を付けろ」

「……はーい」


 どうやったって玄関の前は通るんだし、そのタイミングで誰かが扉を開けたら、外に見える可能性もあるんだったー!? ……本当にそれは嫌だから、気を付けないと……。



 ◇ ◇ ◇



 色々と慌しかったけど、配信用の和室にフルダイブして、お肉屋さんのメンチカツと、電車の中で作った髪飾りのデータは配信用の方に反映は完了! うふふ、昨日のかんざしの流用での即席だけど、右耳のちょっと上辺りに付けた桜の花びらモチーフの髪飾りも良い感じ!

 ふぅ、かなり時間ギリギリにはなったし……すっかりアイスを食べるのを忘れちゃってるけど、あれはまぁ晩御飯のデザートにしちゃおう!


「……それにしても、ネット通販がない商品の宣伝をしてどうするんだろ?」


 今日のメンチカツ、そういうものなんだよねー。お店のホームページもないから、住所とお問い合わせ用の電話番号のみ! 画像で商店街のどの辺にあるかの地図は用意されてるけど……。


「んー、この商店街って、観光客とか多いのかな?」


 姉さんの住んでるマンションは結構都会の方だし、近場に大きな駅も、観光名所もチラホラあるから……そういう人向けなのかも? 私の配信に、その方面に旅行する人がいるかは分からないけども!


「まぁ、いっか!」


 何の意味もなければ聡さんが無意味だって突っぱねてる気がするし、何か意味があるからこそだよね! 私への報酬はソフトクリームよりも少しお安めだけど、この辺は通販がないってのが理由な気もする!


「これはやっぱり、姉さんのマンションに遊びに行く時、見に行かないとね!」


 お盆に姉さんが帰省してから、そのまま着いていって3泊する予定だもんね! そのうち、1日は食べ歩きでも良さそうな気がする!

 いっそ、ARで私の姿に『サクラ』を上書きして、リアルで宣伝したお店突撃とかやっちゃうとか!? ……思いつきだけど、これって実際に出来るのかな? うーん、分かんない!


「……その辺はまぁまだ先の話だし、今はいっか!」


 ともかく、今日は今日の事をやっていこー! もう17時50分になるし、配信開始だー!


<配信を開始しますか?>


 さーて、今日は【初見プレイ】Monsters Evolve part.16! もう16回目なのか、まだ16回目なのか、いまいちピンとはこないけど……それでもこの配信を初めてから色々と変わったよね。

 まさか、今みたいな状態になるとは思ってなかった! うふふ、配信を始めようと思ったあの時の私、ナイスなのですよ!


サクラ☆モンエボ実況配信中! #***

 18時から第16回の配信をやっていきますよー!

 今日は食べ物の宣伝もあり!

 美味しいかなー?


 配信会場はこちら!

 【初見プレイ】Monsters Evolve part.16

 URL:*tp://***


 洞窟から出たところなので、平原を進んでいくところからスタートです!


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 今日は宣伝もあるし、頑張ってやっていこー! メンチカツ、美味しければいいなー? あ、それとどこかでサイコロタイムはやらなきゃね!

 んー、どういう内容でやろっかな? 進化ポイント結構な量になってるはずだし……あ、でも開始早々にサイコロタイムに突入もマズいのかな? まぁその辺は実際にやりながら考えよー! とりあえず配信開始なのですよ!


 

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