第571話 どんなゲームにするか


 私はお客様という事で、コンピュータ部の人達の分のたこ焼きは、副部長の立花さんと1年生の料理部の3人が作り始めた! それはいいんだけど……なんか私に注目が集まってるよ!?

 なんで不思議そうに……って、私だけが部外者だから!? でも、手伝うかもって話自体は通ってるんじゃ!?


「美咲ちゃん、私達に見せてるのを共有してあげてー!」

「あっ! そういえばそうだった!?」


 わわっ!? 私だけで勝手に内容を決めちゃうもダメだから、コンピュータ部の人達が予定を前倒しにして来てたんだった!? それなのに、何もしないんじゃ変に思われても仕方がなかったよ!?

 えっと、えっと!? あれ!? 既に共有済みのものを、新たに共有するのってどうすればいいの!?


「えーと、日向ちゃん? これ、ろくに説明を受けないまま着いてきたけど、これってどういう状態?」

「ふふーん! 櫻井さんの腕が、私達の予想を遥かに上回ってきちゃってね!」

「……へぇ? そんなに凄いのか」


 えっと、今の人がコンピュータ部の部長さんで良さそうだね! うん、思いっきり春日さんとの距離が近過ぎてイチャイチャしてるし、これはバカップルって言われるのも分かる! ……なんか姉さんが新婚の時の様子を思い出すなー。


「櫻井さん、視界の共有! 早く、早く!」

「わっ!? 待って、待って!?」


 ぎゃー! 料理部の部長さんの春日さん、急かさないでー!? 追加で共有の出し方が分かんないんだし、そう言われたら余計混乱しちゃうから!


「美咲ちゃん! 一回、共有を解除してから、もう一回、改めて共有申請! 共有申請時に近くにいた人にしか共有されてない状態だから、個別に申請を出すより、そっちが早いよ!」

「あ、うん!」


 結月ちゃん、パニクってるのに気付いてくれてありがとー! えっと、えっと、一旦解除してから……再共有! あ、いけたかな?


「そうそう……あれ? 何か機械の手とか、機械の猫が増えてる? わっ!? なんか凄いよ、これ!?」

「……確かにこれは、想像以上だな!」

「どれどれ? ……はい?」

「ちょ!? すげぇ上手いんだが!?」

「待て待て!? この機械の手とか猫って、たこ焼きを食いながら描いたって事か!?」

「櫻井さん、こんな特技があったのか!」


 こうして面と向かって言われると、なんかむず痒いね!? 思いっきり手抜きなラフ画像なんだけど、こんなに反応があるとも思ってなかった!


「これだけいけるなら、校内全体を舞台にしてのARシューティングとかもありじゃね!?」

「校内に現れたモンスターを撃破して、そのモンスターの種類によって得点を振り分けて……」

「いやいや、校内全体よりも広い教室を確保して、範囲を区切って密度を上げる方がよくないか?」

「……体感式の、迎撃ありのお化け屋敷って方向性もいけるか?」

「少なくとも、ただのボールと的当てじゃ勿体なさ過ぎる!」


 えっ!? えっ!? なんだか急にテンションが上がって、気合いが入って話し始めたんだけど、これって私はどうすればいいの!?


「こら! あんたら、テンションが上がるのはいいけど、櫻井さんがまだ正式に引き受けた訳じゃないってのを忘れてんじゃないでしょうね?」

「「「「「あっ」」」」」

「全員揃ってその反応かい! 負担も考えず、いきなり突っ走ってんじゃないよ!」

「「「「「……すみませんでした」」」」」

「……あはは」


 立花さんの一喝で、一気に盛り上がったのはすぐに落ち着いてくれた。ふぅ、ちょっと私もいきなりやり過ぎた感があるよねー。うん、まずはちゃんと引き受けるかどうかからしっかり決めないと!


「櫻井さんとしては、どんな感じだい? こういう連中だけど、やれそうかい?」

「何かを作るのに夢中になる気持ちは分かるから……うん、多分出来ると思う!」


 ただ、夢中になって力の入れ過ぎには要注意だね! あくまで、私が楽しめる範囲で頑張ってやってみる!


「いい返事だね。さて、引き受けてくれる事を前提として考えるとして……何がどこまで出来るかの確認が必要だったね。バカップル、その辺はどうなんだい?」

「えーと……デザイン周りは全面的に任せたいとこだな。ただ、どこまでやるかは……コンセプトそのものを練り直さないと駄目っぽいか」

「え、そうなの?」

「この水準だと世界観から作れそうだからね、日向ちゃん。……櫻井さん、どの程度までなら力を貸してもらえるんだ?」

「……えっと?」


 どの程度までって言われても、正直、こういうのを誰かと作るのって初めてだから、どれにどのくらい時間がかかるか分かんないよ!?

 えっと、えっと、何を作る必要があって、それにどれくらいの時間が必要で、いつまでに作る必要があるのか……ぎゃー! そんなスケジュール管理とかした事ないよー!?


「美咲ちゃん、大丈夫!? 何かパニクってない!?」

「……うぅ、何にどれだけの時間がかかるか、分かんないよー!?」


 引き受ける気ではいたけど、いざ実際にやろうとしたら、何をどうやっていけばいいのかが分からなくなってきたー!? 私のデザイン次第で、方向性までガラッと変わりような状態だと、尚更どうやったらいいのかが分かんない!


「……こりゃ、共同作業自体が不慣れな感じだね。コンピュータ部の方で、大雑把でいいから方向性だけでもしっかり決めちまいな。そこの決定まで案を出させるのは、ちょいと負担が大き過ぎるよ」

「みたいだなー。あんまり大規模にするとそれはそれで負担をかけ過ぎそうだし……何が必要かをこっちで明確に決めて、それを頼むのが無難っぽいか」

「克也くん、頑張って!」

「おう! 頑張るぜ、日向ちゃん!」


 なんかイチャつきながらだけど、どういう風にしていくかの方向性は決まった感じ? ふぅ、私に負担がかかり過ぎないように配慮はしてくれる感じだし、なんとか頑張ってみよう!


 具体的にどういうものを作ればいいかの指示をもらえれば、多分、それなりに必要ないものも見えてくるはず! でも、なんというか思った以上に色々決まってなかったんだねー。もっと色々と決まってるものだと思ってた!


「さて、まずはゲームのコンセプトからだけど……日向ちゃん、先にたこ焼き食っていい? 腹減った……」

「あ、うん! はい、あーん!」

「あーん!」

「……このバカップルが!」

「くっ、折角の女子の手料理も、このバカップルを見てると腹が立つ方が上回る!」

「えぇい、そのバカップルは放っとけ! とりあえず、飯だ、飯!」

「……もう相手にするだけ、疲れるしな」


 なんだかコンピュータ部の他の人達から、野次が飛んでるのは……うん、気にしないでおこう! このバカップルっぷりは、これからも何度も見る事になりそうだし!


「美味い、美味い! あっ、熱っ!?」

「おいおい、慌てて食うな……って、辛っ!?」

「……は? え、なんで辛い!?」

「あはは! いくつかワサビが入ってるけど、味わって食いな!」

「……ほほう? よし、ワサビ入りを見極めろ! そして、全部部長に回せ!」

「「「おう!」」」

「ちょ、待て、お前ら!? なんの恨みがあって――」

「「「「どの口が言うか!?」」」」


 あはは、コンピュータ部の部長さん、部員の人から恨みを買ってるねー。まぁこのバカップルっぷりを目の前で見せつけられてたら、そういう気持ちにもなるのかも。

 誰かを好きになるって気持ちは実体験がないから分かんないけど……妬ましいって思う人もいるよね。私的には、どちらかといえば鬱陶しいって感じではあるけども! 立花さんがバカップルの片割れって呼び方をしてた理由は、なんとなく分かった!


「あー!? なんで私が取ってるたこ焼きを、みんなですり替えてるの!?」

「「「あ、バレた!?」」」


 あはは、料理部は料理部で、部長さんの前のたこ焼きを1年生のみんながワサビ入りのに入れ替えてたっぽいね? まぁ、目の前でずっと『あーん!』ってやってたら、そうしたくなる気持ちも分かる!


「美咲ちゃん、こんな感じでバカやってるとこだけど、なんとかいけそう?」

「うん、頑張ってみるね! 私も私なりに楽しみたいし!」

「そっか! それじゃ、一緒に頑張ろ!」

「うん!」


 今はとりあえず、お昼を食べてしまうのが先かな? それからコンピュータ部の人をメインに、どういうゲームにしていくかの話し合いをしていく感じだよね。

 私が今日する事は、そのアイデアを元にラフデザインを描くくらいかも? うん、やるべき事は見えてきたし、楽しみながらやっていこー!

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