第561話 鍾乳洞の先には


 鍾乳洞を抜ける為に、ど真ん中を突っ切って移動中! 水への適応進化で滑らないのはありがたいけど……。


「んー、他に宝石が見つかりませんねー?」


 キョロキョロと周囲を見渡しながら進んでるけど、みなさんの手を借りてもサファイアを入手してからは見つかってないよ!?


ミツルギ : ミナトさんの手を借りても、確実に見つけられる訳じゃないか。

ミナト : 私だって万能じゃないからね? サクラちゃんの視界に入っていれば見つけられるけど、見えてない部分はどうやっても見つけられないから!

いなり寿司 : そもそも何個あるかを知る手段がないんだから、ただ単に存在してない可能性もある訳で……。

神奈月 : まぁ誰であっても、見つけられるかは運次第だな! あれが手に入るまでは!


「あ、そういえばアイテムを探知するスキルもあるんでしたっけ? えーと、確か……『採集探知』でしたっけ?」


 完全体に進化したら知恵のスキルツリーにあるって話だったはず! 名前、間違ってないよね? いつ話題に出たかは覚えてないけど……。


ミツルギ : 『採集探知』じゃなくて『採集感知』だぞ。まだ解放は無理だが……。

G : 具体的な内容は避けるけど、それが手に入れば今とは雲泥の差なのは間違いない。

真実とは何か : それが真実なのである!


「あ、名前を間違えてました!? そのスキル、早く使いたいです!」


 具体的にどういう風に効果が出るのかは分からないけど、絶対に便利なやつだもん! 少なくとも、今のアイテム捜索が圧倒的に楽になりそうな予感はするよね!


「あ、そうしてる間に鍾乳洞も終わりですか。さーて、ここから別の洞窟部分へ切り替わりです!」


 マップを見た限りでは少し狭まった部分があるから、そこを抜ければ奥に入れるはず! えーと、こっちの方向かな? あ、それっぽい場所を発見!


「……なんか暗い入り口ですね? それに、ちょっと下り坂になってます?」


 むぅ……明かりがあるにはあるけど、光るキノコが少しだけで、かなり薄暗い! 結構急な下り坂だし、慎重に進まないと一気に滑り落ちちゃいそうな予感!?


富岳 : まぁ洞窟の環境の変化部分は、そんなもんだ。

ヤツメウナギ : 大体は薄暗くて、真っ直ぐ先は見通せない構造にはなってるぞ。

ミナト : 今みたいな下り坂も結構あるけど、曲がりくねってたり、上り坂になってたり、その時々で違うからねー。

G : まぁ真っ直ぐな時もあるけどな。


「あ、そんな感じになってるんですか! 洞窟に入ってきた時も、そんな感じではありましたもんね!」


 今みたいな急な下り坂ではなかったけども、入り口の辺りも少し下り気味で、ちょいちょい曲がってたもん! そっか、そっか! 鍾乳洞みたいな場所に出るまでは、そういう通路が続く感じになってるんだね!


「んー、下り坂で滑りそうな状態ですし、どうせなら盛大に滑っていきましょうか! 『水化』!」


 ふふーん! ここで慎重に進んだとしても、滑って転ぶ可能性は否定出来ないもんね! それならば、自ら滑っていくのですよ! いぇーい! ジェットコースターか何かみたいなイメージで、滑っていけー!


水無月 : わっ!? 思いっきり自分から滑っていったよ!?

金金金 : 嬉々とした表情の狐っ娘アバター。おい、これは大丈夫なのか!?

ミツルギ : 大丈夫か、大丈夫じゃないかで言えば……大丈夫じゃないんだが!?

富岳 : サクラちゃん、この先の地形がどうあれ……敵は大量だぞ?


「……え? あ、そうでした!?」


 わわっ!? そんなのは分かりきってた話なのに、私はなんでその中に滑って突っ込んでいってるの!? というか、滑るのが長くないですかねー!?


「あっ!」


 ぎゃー!? 滑ってた地面がなくなって、なんか放り出されたー!? え、待って、待って、待って!? 空中にスポーンと綺麗に投げ出されてない!?


「わっ!? わわっ!? あ、ここって、切り立った崖になってます!?」


 うぎゃー!? 足場がないから、一気に落下が始まったー!? ここ、てっきり湖があるのかと思ってたけど、全然違った環境だー!?


金金金 : あー、内部の高低差が大きな洞窟か。なるほど、敵は登ってこれないから、ここで足止めを受けてたんだな?

ミツルギ : 他に可能性がある場所もあったが、まぁ今回の理由はそっちみたいだな。

ミナト : んー、そうでもないかも? どうも、両方の複合要素のパターンみたいだよ?

富岳 : あぁ、確かにそのようだな。なるほど、これなら結果的に『水化』は正解かもしれん。


「あ、下が水場になってるんですか!? わっ!?」


 ドボーンっと盛大な音を立てて、湖に落下したけど……あ、全然衝撃が無かった!? もしかして、『水化』を使ってたから!? それに思った以上に、ここって深いかも!


「って、わー!? なんか真っ白なワニがいるんですけど!?」


 待って、待って、待って!? 他にも真っ白な魚が次々と迫ってくるよ! あ、光ってる魚も……って、それどころじゃなーい!? これ、どうすればいいの!?


金金金 : 慌てふためく狐っ娘アバター。まぁ割といつもの事か?

こんにゃく : それは確かになー。慎重に進むかと思ったら、いきなり突っ込むし……。

神楽 : まさか、滑ってそのまま突入とは思わなかった!

G : だが、それでこそサクラちゃんだ!

真実とは何か : 紛れもなく、それが真実なのである!


「わわっ!? これ、どうすればいいんですかねー!?」


 ぎゃー!? 魚が次々と突撃してくるよ!? 堅牢が上がってるから耐えられてるけど……わー!? ワニが大口を開けてきてるー!?


サツキ : えっと、えっと!? サクラちゃん、ファイトー!

ミナト : サクラちゃん、まずは落ち着いて? 冷静に対処しないと、袋叩きに遭って死ぬからね。

チャガ : まず、いつものセットを使うといい。ここなら、戦闘の感覚は昨日の湖に近いからな。


「あ、はい! 慌ててる場合じゃなかったです! 『索敵』『見切り』『弱点分析』『看破』!」


 うぅ……この辺の使用は、ここに入る前にやっておくべきだった気がする! うがー! 過ぎちゃった事は気にしても仕方ないし、まずはせまってくる敵の対処が先! ともかく、迫ってきてる白いワニの攻撃を避けて……。


「あ、普通に避けれました! あ、そっか。『水化』の使用中だから、水中でも早く動けるんでした!?」


 ふっふっふ! 他に見切りでの赤い表示が出ても、陸地と同じ要領で横に回避! でも、数が多いから、これだけじゃ厳しいよ!?


サツキ : サクラちゃん、ナイス回避!

富岳 : 慌ててさえいなければ、こういう状況自体は初めてという訳でもないからな。縄張りで強化も入っているから、そこも忘れるな。

神奈月 : ぶっちゃけ、外よりは敵の数は少ないからな!

こんにゃく : え、それって言っていいやつ?

ヤツメウナギ : 敵はマップに表示はされてるし、問題はないんじゃね?

こんにゃく : あ、それもそうか。


「冷静に……ですね! とりあえず、一旦、状況を立て直します! 『疾走』!」


 うん、ちゃんと水中を駆けられた! 湖がありそうな予感はしてたけど、こんな風に落ちるとは思ってなかったから慌てたけど……冷静にやれば大丈夫だよね!

 あ、襲ってきてる敵以外には、私から逃げていく白い魚や光ってる魚が結構いるよ! 状況的にあんまり詳しく見てる場合じゃないから、今は細かい部分はスルーするけど!


「これ、どこかに陸に上がる場所がありませんかねー?」


 落ちてきたなら、戻る為の場所もある気がするんだけど……それはどこだー!? 水中戦をしてもいいんだろうけど、ここの敵は陸地にまでは上がってこないっぽいし、狙うなら陸からがいいよね!

 それに、敵の情報も色々と確認したいもん! だから、一旦、湖から離れたいのです! その為にも、水の上に移動して……走りながら周囲を見渡す!


水無月 : 陸地……陸地……。あ、上に進んでいけるような通路はあるね!

神楽 : 通路はあるけど、そこに登るまでの経路が見当たらないよ?

ミナト : んー、落下中にそういう場所なら確認したけど……サクラちゃん、聞く?

イガイガ : あの落下中に、そこまで見てたんかい!

神奈月 : 相変わらずとんでもないな、ミナトさん!?


「ミナトさん、それを教えてもらえると助かります!」


 やっぱりミナトさんの観察力って凄いね! 私、落ちてて混乱してただけだったのに、そこまで見ててくれたんだ!


ミナト : それじゃ回れ右だねー。方向、真逆だから。


「……え? 真逆なんです!?」


 待って、待って、待って!? 位置が分かっても、真逆は困るよ!? 後ろから結構な数の敵が迫ってきてる状態なんだけど!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る