第549話 洞窟を進んで


 ふふーん! 今回の洞窟はすぐに行き止まりではなかったし、どんどん奥へ進んでいこー! うふふ、明かりの光るキノコの量の違いが洞窟内部の変化の兆候みたいだし、この先にまた違った景色が……あ、広くなってる!


「少し明るくなってますし、広くなってるみたいですね! 何があるんでしょう?」


 ふっふっふ! いざ、洞窟の景色を見に行こう! どんな場所かなー?


「あ、鍾乳洞ですね、これ!」


 上から細長い岩が何本もツララみたいになってるし、地面からも伸びてるのがあるよね! それに結構広い!


水無月 : おー! 鍾乳洞!

金金金 : ほほう、鍾乳洞ときたか!

ミツルギ : 奥には……続いているか?

いなり寿司 : これは、どうなんだ? 死角が多くて、なんとも言えないな。

ミナト : んー、奥へと進む経路は……ここからじゃ分からないね。ここが行き止まりの可能性もあるけど、広いから奥にまだ広がってる可能性もあるよ。


「あ、そうなんですか! それじゃ、敵に気を付けつつ奥に進んでみましょう! ……ところで、なんか明るいのはなんでですかねー?」


 光ってるキノコはここには見えないんだけど、何が明かりになってるの? なんか地面のあちこちが青く光ってるし、ライトアップでもされてるのかな? でも、それは何か違う気もする?


金金金 : 地面が青く光ってるが……いや、これは地面じゃないのか?

G : その青い光は、水だぞ。実際に目に見える何かいる訳じゃないが、鍾乳洞の一部ではこういう形で光源になってるからな。

ミナト : 一応、『ヤコウチュウ』の一種って事にはなってるけど、あれは海洋性なんだよねー。だから、まぁゲーム的な都合だと考えればいいかな?


「あ、これって水場が光ってるんですか!? 『ヤコウチュウ』って初めて聞いた気がしますけど……どういうものなんです?」


 とりあえずその辺を聞きながら、先へと進んで……。


「わっ!? わわっ!? ここ、滑りやすいです!?」


 この滑り方、沢を進んでいた時に近い感じ! でも、それなら爪を立てて進めば、滑りにくくなるはず! 伏せて四つん這いの状態なら、より良いよね! うん、それで進んでいこー!


イガイガ : 滑りやすいのは当然だな! 水が垂れてきて形成されるのが鍾乳石だし!

水無月 : 沢を進んでた時と同じ進み方だね! これなら進めそう!

G : くっ! 転ぶところが見たかった!


「ふっふっふ! 私だって、そう何度も同じような転び方はしませんよ!」


 進むのが少し遅くはなりそうだけど、まぁ転ぶよりはこの方がいいよね。えーと、青く光ってる所が水場なら、そこは避けながら進んだ方がいいのかな?

 あ、逆に光ってる水の中に何かあったりする可能性もありそう!? んー、どうしよう? とりあえず、一番近くの水場まで近付いてみようっと!


ミナト : あはは、まぁ転ばないのは大事だしね。ちなみに『ヤコウチュウ』は夜に光る虫って書いて『夜光虫』で、まぁこれは海に住んでるプランクトンなんだけど……赤潮とか聞いた事ない?


「あ、赤潮は知ってます! 海が赤くなるやつですよね!」


 何かの動画で見た事あるよ! 多分だけど、授業でも習ったような気もする? うん、そっちは自信はないけど!


ミナト : 必ずしも赤潮と原因が同一ではないんだけど、赤潮みたいな感じで夜に海が青く光る事があってね? それを引き起こしてるのが『ヤコウチュウ』なんだよ。

富岳 : 淡水では起きないはずなんだが……まぁそこはゲームだから、深く気にしなくていい。モンエボならでは景色だと思って楽しんでくれ。

チャガ : リアルのものを基準に使っているとはいえ、リアルとは違ったものも多いからな。

真実とは何か : それが真実なのである!


「あ、はい! なんとか爪を立てながらなら滑らずに進めそうなので、慎重に進みつつ楽しんでいきますね!」


 ふふーん! 青く光る水場が、天井の鍾乳石まで照らしているのは幻想的な光景だもんね! 滑りやすいのが難点だけど、まぁ水場がこれだけあれば仕方なーい!


「耳を澄ませば、『ピチョン』と水が落ちる音も聞こえてきますねー!」


 モンエボに限らずフルダイブのゲームではよくある事だけど、自然にある音だけになるもんね。でも、外で聞こえる音とはまた違った新鮮な――


「わっ!? え、なんか『バサッ』って音が聞こえ……あ、コウモリです!?」


 どこから飛び立ったのか分からなかったけど、コウモリが奥へと飛んでいったのが見えた! 洞窟内で、初めて動物を見た気がする!


ミナト : えーと、今のコウモリは一般生物みたいだね? でも、普通の敵も出てくるから注意してね。

咲夜 : コウモリは群れてくる事が多いから、特に要注意だぞ!


「群れって事は、知恵系統の個体が率いているんですか!? ……この足場で、コウモリの群れは相手したくないですね!?」


 滑りやすい場所で、遠距離攻撃しか届かない飛ぶ敵とか相手にしたくないのですよ! しかも、知恵系統がいるなら尚更にだよね!


いなり寿司 : まぁその気持ちは分かる。分かるけど……敵はそういう都合は考慮してくれないからな。

イガイガ : そうなんだよなー。まぁ敵もランダム生成だから、そこは運次第か。

サツキ : コウモリの群れが出ないといいね!


「そうですね! というか、通った部分しかマップが埋まってないので、索敵があんまり役立ちませんね!?」


 看破だと死角は見抜けないし、ぶら下がってるのや地面から伸びてる鍾乳石に隠れてたら分からないよ! ぐぬぬ、これは地味に戦闘をする場所としては厄介かも!?


「あ、奇襲対策でこうしておきましょう! 『放電』! わっ!? え、勝手に流れていきました!? え、なんでです!?」


 待って、待って、待って!? 溜めながらカウンター用に置いておこうと思ったのに、なんでそうなったの!?


こんにゃく : あー、鍾乳洞の地面は全体的に薄っすらと水がある状態だから……放電は溜められずに流れていくぞ。

イガイガ : 光ってる水場に近ければ近いほど、その可能性は高まるしなー!

真実とは何か : この地での真実なのである!

サツキ : サクラちゃん、水場に近付いてるもんね!


「え、そうなるんです!? むぅ……それは厄介ですね。って、水場の中から何か出てきましたよ!? あ、トカゲ……じゃなくて、サンショウウオですか!?」


 さっきの放電で攻撃しちゃった事になるのかも? というか、水場の中にも敵はいるんだね!?


サツキ : おー! 『巧妙なサンショウウオ』だ!

金金金 : Lv33……洞窟内の敵って、Lvはどう決まっている?


「わっ!? 水を飛ばしてきましたよ、このサンショウウオ!? 『身構え』! Lvは離れてますけど、その辺はどうなってるんですかねー!?」


 下手に回避に動いたら転びそうだし、Lv差はあるからここは耐えるのです! その上で、他にも放電で呼び寄せた敵がいないかを確認だー!


ミツルギ : あー、まぁある意味ではサクラちゃんが基準ではあるけど……洞窟で出てくる敵のLvの範囲は、その洞窟があるエリアのLv帯が反映されるぞ。

富岳 : ここの場合は入ってきた平原のLv帯が反映されるから、Lv31〜40の範囲になるな。まぁ洞窟内では奥ほど強くなる傾向があるから……ここでその程度なら、まだ奥はあるな。

ミナト : 敵のLv分布で、洞窟の広さはそこそこ推測は出来るんだよねー!


「あ、そうなんですか! なら、この辺ならそれほど強い敵はいなさそうですね! ……なんか、続々と集まってきてるようですけど」


 水の中からサンショウウオが何体も出てきてるし、水の中から水を飛ばしてきてる敵もいるみたいだもん! マップに地形は出てないけど、交戦状態になった赤い印が……6体くらいいるよねー? これ、どうやって相手にしよう? 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る