第15章 頑張って進めます!
第528話 意識の変化
今日は夏休み前の最後の授業がある日! 明日は終業式だけだから、もう少しで夏休みだー!
「……暑い」
登校中の電車を、高校の最寄駅で降りれば夏の暑さが襲いかかってくる……。ぐぬぬ、この暑さはなんとかなりませんかねー?
「でも、今日を乗り切ればもう夏休みは目の前!」
文化祭を手伝うかもしれない件もあるけど、その話は明日のお昼から! 姉さんの住んでるマンションに遊びに行くのはお盆になったから、そこまでに配信用の和室の庭作りと並行して出来そうならいいなー。
「……服かー」
姉さんを筆頭にしたプロの人達に『サクラ』の着せ替えを狙われてる状態だけど、それはそうとしてリアルの私の服もちょっと考えなきゃねー。
姉さんのマンションに遊びに行くだけだけど、流石に完全ないつもの普段着じゃ駄目な気がする! 学校に行く時は制服でいいけど、そうじゃない時に出歩く事って少ないもん。
「……お金は大丈夫そうだし、何か買おうかな?」
色んなお店の宣伝で結構な金額はこれから何件か貰えるんだし、それで買うのもありかも! 今持ってる服、姉さんが買ってきたやつばっかだしねー。成長してサイズが合わなくなったのを含めたら数はあるけど、物理的に着れないのは意味ないし!
それに、『サクラ』の着せ替え衣装を自分で作るのもありだよね? 家にあった和服を参考にはしたけど、普通に売ってる洋服を参考にしてみるのもいい? そのまま丸パクリは駄目だろうけど、参考にするくらいはいいよね。
「何か悩み顔だけど、どうかしたのかい?」
「あ、立花さん」
出たね、料理部の副部長さん! まぁ同じ電車で見かける事があるって言ってたし、同じクラスなんだから通学路が被ってて当然だけど!
「それで、本当にどうしたんだい? 暑さでダウンしてた?」
「それも無くはないけど、少し悩み事が……」
「まぁ色々とあるみたいだし、悩む事もあるんだね。私で良ければ、話くらいは聞くけど?」
うーん、立花さんに相談するのはどうなんだろ? リアルで服を買いに行きたいっていうのはあるけど、『サクラ』の方も少しは絡んでるし……ちょっと悩ましい!
「あー、どうも私には言いにくい内容みたいだね。おっと、いいところに結月を発見!」
「わっ! 楓、いきなり何!?」
「櫻井さんがなんか悩んでるみたいだし、相談に乗ってやんな! 私は先に行くからね!」
「えっ!? あ、楓!?」
わー、少し前を歩いてた結月ちゃんの元に走り寄って、そのまま駆け抜けて行っちゃった。なんか気を遣わせちゃった気がする!?
「えーと、美咲ちゃん、大丈夫? 悩み事って、何かあったの?」
「あ、大した事じゃないよ!? 服の事を考えてただけ!」
「……服? あ、夏用の衣装を考えてたの?」
「それもあるんだけど、リアルの方の服も買おうかなーって。あんまり持ってないんだよね……」
「そっか、両方ともなんだ。あ、だから楓には話せなかった感じ?」
「うん、そうなんだよねー。お昼に、ちょっと相談に乗ってもらってもいい?」
「もちろん! 文化祭で無理を言う事になっちゃってるし、私に出来る事なら可能な範囲でやっちゃうよ!」
「ありがと!」
姉さんに相談するのは今回は駄目だし、兄さんや聡さんに相談するのは何か違う内容だもんね。それに、同年代の友達とこういう話をするのは新鮮な気がする!
◇ ◇ ◇
忌まわしき午前の授業は終わって、お昼休み! 夏休みまでの授業もあと僅か! そして、お弁当を食べる為に結月ちゃんと一緒に家庭科室へ向かっていってるのです!
「もう夏休みも間近だねー。あ、大丈夫だとは思うけど、美咲ちゃんは補講は大丈夫?」
「うん、大丈夫! ……ギリギリだったけど」
「え、ギリギリなの!? ちょっと意外だったかも?」
「……あはは」
自分で言うのもあれだけど、私は成績はあまり良くないのですよ! でも、変に定着しちゃってたイメージの方では頭が良さそうには思われてそうな予感! ……ぐぬぬ、イメージって恐ろしい!
「でもまぁ、補講になってないなら普通に夏休みは動けるね」
「うん! 夏休みの課題は山積みだけど……」
「……あはは、その辺も計画的に終わらせなきゃね」
「正直、面倒だよ……」
夏休みの課題がどんどん配られているのは気が滅入るよね……。うがー! 夏休みは夏休みだけでいいんですよ! 課題なんかいらなーい!
そんな事を話している間に家庭科室の前まで到着! 結月ちゃんが手慣れた様子でドアを開けて、冷房も入れて、お湯を沸かし始めた!
「まぁ夏休みの課題の話は置いておくとして……あ、美咲ちゃんは今日も緑茶?」
「うん、緑茶で!」
「はーい。それで服の話だっけ? 配信で話題に出てた浴衣とか? 服って事は、水着ではないんだよね?」
「あ、うん。お盆に姉さんのとこに遊びに行く事になったから、その時用に服を買おうかなーって? あと、『サクラ』の着せ替え衣装の参考になりそうなやつも見てみたい!」
「んー、それならアバター用の服のデータも一緒に買えるのとかがいいのかな? リアルだけなら実店舗で色々見ていくのもいいけど、フルダイブの衣料品店ならその手のデータも――」
「あ、その手があった!?」
わー!? 普段は全然意識してなかったけど、そういえばフルダイブで仮想空間での販売店とかもあるんだった!? リアルの服とアバターの服を一緒に買うとか意識した事がなかったよ!?
「えっと、美咲ちゃんって普段はどこで服を買ってるの……?」
「……姉さんが買ってきたのを着てるだけで、自分で買った覚えがないような?」
「そうなの!? あ、だから相談!?」
「うん、そうなるね!」
姉さんのマンションに遊びに行く時用の着替えでもあるんだから、姉さんに選んでもらうのじゃ意味がないもんね! あー、でもリアルと『サクラ』で同じ服が着れるっていうのは全然考えてなかった! そっか、そういう選択肢もあったんだね。
尻尾は服があっても着替える時に貫通するようにはなってるから、問題ないはず! というか、『サクラ』を作る前のアバターの服ならそれなりにあった気がする!
「あ、でも下手に『サクラ』の衣装を変えたら、狙われてるのはどうなるんだろ?」
服とアバターは別々に作ってるから、衣装データさえあれば着せ替え自体は簡単だけど……普通に売ってる服に着替えるとなると、姉さんに狙われる!?
「え、狙われてるって……どういう事?」
「あ、言ってなかった気がする? 実は、姉さんが『サクラ』の着せ替えを画策しててね? なんだか姉さんの同業者の人達も一緒に狙ってるみたいで――」
「えー!? コメント欄の色んな人がいるとは思ってたけど、そんな事になってるの!?」
「結月ちゃん、声が大きいよ!?」
「あ、ごめん。……美咲ちゃん、それはやらないの?」
「……流石に気後れしてて、悩んでるところ。なんかお金を払うから着せ替えさせてって話になってるし……その筆頭が姉さんなんだもん」
「……見てみたい気はするけど、揃ってる人が人だから確かに凄い事にはなりそうかも?」
「だよね!?」
有名どころの人が多いし、下手に受け入れたらとんでもない事になりそうな気がする! 姉さん1人だけならまだしも、集団で狙ってきてるのが危険だー!
「んー、美咲ちゃんって『立花サナ』の妹って事がバレるのは嫌そうだったよね?」
「あ、うん。それで色々あったから……」
「それは聞いたけど……それって、今でも?」
「……え?」
今でも嫌……なのかな? 姉さんの名前で色々言われたのがあって、中学のあの時以降は比較されるのが嫌だったのは間違いないけど……今もそうなの?
色々と意識が変わってきた状態で考えてみたら、そうでもないかも? むしろ、この前の連休で姉さんに色々教わったし、ある意味では弟子みたいな状況にもなってきてるよね。それまでは自分でやるだけだったけど、姉さんに本格的にやり方を教わったのってあれが初めてだし……。
「……言われてみれば、今は嫌じゃないかも?」
「そっか。私が偉そうな事は言えないけどさ、堂々と宣言しちゃうのも考えてみるのもいいんじゃない? 超えたい相手なら尚更にさ!」
「……それは、確かにそうかも?」
もう既に『ヤラセ』だとか言われたりしてるし、聡さんには『野生の金の卵』とも言われたし、別に姉さんが嫌いな訳じゃない。私が私として頑張っていくなら、『立花サナ』は憧れの目標だし、実の姉でもあるけど師匠にもなってきてるもん。
そっか、いつまでも『立花サナ』と比べられるのを怯え続けてても仕方ないんだよね。あはは、自分が思ってる以上に意識は色々と変わってきてるっぽい!
「結月ちゃん、その辺はちょっと考えてみるね」
「うん、色々と考えてみるのがいいと思うよ! それに、美咲ちゃんは美咲ちゃんだし?」
「あはは、ありがと。あ、ゆっくりし過ぎてたら食べる時間がなくなっちゃうね」
「あ、それはそうだね。とりあえず食べながらにしよっか。はい、緑茶をどうぞ」
「うん、ありがと」
まだこの場ですぐに決める事は出来ないけど、それでもなんだか自分自身の意識がどんどん変わってるのを実感した気がする。
これまではただひたすら拒絶してたけど、今はじっくりと考えて、その上でどうするかを考えてみようっと!
――――
お待たせしました、連載再開です!
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