第501話 エリアボスの雄健なワニ


 うがー! まだ縄張りを使うつもりじゃなかったのに、誤発動になっちゃったー! マップを見れば明らかに他とは違う動きをしてる赤い印があるし、これがエリアボスのワニなのは確定!


「……そういえばこのワニ、進化系統ってどれでしたっけ?」


 なんか逃げてばっかだったし、昨日の事だから地味に忘れた! えっと……遠距離じゃないのは確実だから、『巧妙な』ではないのは間違いないよ!


神奈月 : そのワニは『雄健なワニ』だったはず!

イガイガ : 屈強系統になるな!

ヤツメウナギ : あー、そういや弱点まではしっかりと見れてない気がする?

ミナト : えーと、一応その辺は見ているけど……サクラちゃん、聞く?


「いえ、どの進化系統なのかだけ分かれば、あとは自分で確認します! ここまで辿り着くのに時間がかかりそうですし、溜めていきましょう! 『獅哮衝波』!」


 凄い勢いで迫ってきてるけど、ワニがいた位置は縄張りの範囲内ギリギリだったみたいだし、1段階目の溜めの完了くらいの時間はあるはず! 今回はもちろん凝縮していこー! どこまで凝縮するかは、溜め終わった段階で近付いてきてる距離次第!


ミナト : そういう事なら言うのはやめておくねー。それにしても……ギリギリだけど、縄張りの範囲内にいてくれてよかった!

こんにゃく : 範囲内にいなければ、まぁ無駄に使うだけになってたからなー。

ヤツメウナギ : 縄張りの再使用時間、長めだしな。


「あ、そういう危険性もあったんでした!?」


 誤発動だったから発動する位置とか考えてなかったし、ちょっとの位置のズレで無駄になってたんだ! むぅ……そういう意味では、これで良かったのかも?


神奈月 : サクラちゃん、間違っても『放電』や『雷纏い』を使おうとはするなよー! なんか慌てたタイミングで使おうとして、盛大に隙を作りそうだし、要注意で!

G : なぜをそれを言ってしまう!?

金金金 : それを少し期待してたんだが!?

イガイガ : そうだぞ! わざわざ教えなくてもいい事を!


「どういう期待をしてるんですかねー!? 神奈月さん、本当にうっかり使ってしまいそうなので、忠告ありがとうございます!」


 咄嗟に麻痺を狙って使おうとしちゃいそうだし、その辺は要注意! 普段とは違う場所での戦いなんだし、要素も一部違うんだから本当に気を付けないと!


「あ、こういうのはどうですかねー?」


 獅哮衝波の1段階目までなら溜めてる間は動けるから、今のうちに色々準備しとこー! ふっふっふ、アイテム欄から毒の実を大量に水中へ放り出すのです!


ミツルギ : ん? なんで毒の実を大量に出した?

富岳 : ふむ……これは罠か?


「ふっふっふ、その通りです! 思いっきりワニには噛まれましたし、噛みついてくるのが分かっていますし、その途中にある毒の実を食べてくれるのに期待です!」


 水中で動けるようになってるとはいえ、元々水中で戦えるワニに地の利はあるもんね! だから、ここは私も頭を使っていくのですよ!


金金金 : ドヤ顔の狐っ娘アバター。まぁ戦術としては大真面目に有効か?

ミナト : うん、普通にありな手段だね!

チャガ : 上手く食べてくれるかは運任せにはなるが……まぁそこを補う手段もあるな。

水無月 : おー! そんな手段もあるんだ!


「いざとなれば、放水でワニの口の中に押し込んでやりますよー!」


 うふふ、少し前に倒したブラックバスにやったみたいにやればいいのですよ! ワニめ、大口を開けて襲ってくればいいのです!


「あ、そうしてる間に1段階目の溜めは完了で……来ましたね、雄健なワニ!」


 目視出来る距離までワニがやってきた! ここから2段階目の溜めまでは無理だから、凝縮率を調整して……って、近付いてくるのが早いよ!? うがー! 細かい調整はいいや! 凝縮率100%で、射程圏内に入ったらぶっ放すのさー!


「そこです! 獅哮衝波、いっけー!」


 私に溜めをする時間を与えた事を後悔して……って、わー!? なんか避けられた!? あ、でも完全には避けられてはいない!


サツキ : あ、完全ではないけど躱された!?

水無月 : そんな事ってあるの!?


「このワニ、今の明らかに避けましたよね!? というか、動き自体もゆっくりになりました?」


 うがー! 避けきれてはいないから2割くらいはHPを削ったけど、直撃にならなかったよ!? むぅ……まさか避けられるとは思わなかった!

 それに……私を警戒するように、一気に迫ってくる様子がなくなったね。……この動き、なんか嫌な予感!


ミツルギ : あー、『見切り』で攻撃を察知されたか。

富岳 : 今の急な回避挙動は、まぁそうなるだろうな。ふむ、弱点の構成的にも使ってきておかしくはないか。

こんにゃく : このワニ、相当強いタイプだな。


「えっと、弱点は……え、明確な弱点は『器用』だけなんです!? スキルではと『堅牢』と『知恵』が出てますけど……ステータスで弱い部分は『生命』くらいで少ないんですけど!」


 ぐぬぬ、なんというバランスのいいワニなの!? 遠距離攻撃こそ弱いけど、そこまで極端に打たれ弱くもないし、攻撃力も素早さも兼ね備えてるって事だよね、これ!


ミナト : 地の利もあるから不利だけど、サクラちゃん、頑張って!

サツキ : サクラちゃん、ファイトー!

水無月 : ファイトー!


「はい! 頑張って倒します! でも、この動かない様子は……はっ!? 溜め攻撃ですか! だったらこれです! 『咆哮』! って、これも躱します!?」


 待って、待って、待って!? 溜め攻撃だと思って破ろうと思ったら、スーッと泳いで回避されたんだけど!?


神楽 : 『見切り』って『咆哮』も避けられたりするの?

ミツルギ : いや、『咆哮』は分類的には補助スキルだから、『見切り』には反応しないはずだけど……今の回避は偶然か?

富岳 : 多分、ただの偶然だな。今もサクラちゃんの周りを回るように泳いでいるし……溜めながら動く行動パターンの動き出しに重なっただけだろう。

神楽 : それ、運が悪いね!?


「ただの偶然で咆哮を避けないでくれませんかねー!? というか、動きながら狙ってきてる感じですか!?」


 うがー! 確かに私の周りを回って泳いでるし、対応する為にずっと方向を変え続けなきゃいけない状況! 厄介な事をしてくれるね、このワニ!


「でも、察知された訳じゃないならこれでもいけますよね! 『覇気の咆哮』!」


 ふっふっふ、今の私にはこれもあるのです! 咆哮よりは確率は下がるけど、それでも凝縮してしまえば確率は上がるはず!


咲夜 : おぉ、それがあったか!

G : 確率にはなるが、それはありだな。


 ただ相手が動いてるから、多少の動気があるのも考えて……うん、凝縮はこのくらい!


「……えっと、当たりはしたっぽいですけど、キャンセルにはなったんですかねー? 萎縮はダメだったっぽいですけど……」


 うーん、動きが止まったから、キャンセルには成功したのかな?


ミツルギ : 多分、使ってたスキルは『獅哮衝波』に相当する『硬砕牙』だろうけど……動きが止まったなら、溜めが終わったか、キャンセル出来たかのどっちかだな。

ミナト : 今のは『覇気の咆哮』がちゃんと当たったから、多分キャンセルにはなってるはず? そうじゃなきゃ、もう思いっきり噛みつきにきてるはずだしね。

こんにゃく : 凶悪な攻撃のキャンセル、成功!

G : あー、突進するような勢いで突っ込んできて、噛み砕く『硬砕牙』か。ライオンでも使えるけど……凶悪な攻撃なんだよなー。


「なんか聞いた覚えがあると思ったら、ライオンでも使えるスキルでした!? まぁキャンセル出来たみたいですし、ここから攻撃ですね!」


 うーん、口を開けてくれてたら毒の実を放水で放り込むんだけど……全然まだ開けてくれないんだよねー。私に噛みつこうとしてくるタイミングを狙うしかないのかな?


「わっ!? 突っ込んできました!?」


 目の前に見切りに反応ありで、赤く表示が出た! 今ならカウンターで毒の実を……って口は開けてないよ!? これ、噛みつき攻撃じゃなくて、体当たり攻撃だー!?

 回避、回避ー! 真後ろに下がっても意味はないから、横へ回避して――


「ぐふっ!? な、なんですか、今の!?」


 回避が遅れてギリギリで避けたら、背後から思いっきり衝撃があったよ!? え、何をされたの!? ダメージはそれほどじゃないけど、ビックリした!?


ミナト : あらら、尻尾で追撃された感じだね。

チャガ : ワニの向きが変わってるし、体当たりの直後に向きを変えながら尻尾を叩きつけてきたか。


「そんな攻撃、ありなんですかねー!?」


 うがー! 確かに体当たりしていったワニが私の方を向いてるし、そういう動きだったんだろうけど……むぅ、水中でワニと戦うってこういう厄介さがあるんだ! うぅ……水中での動きや方向転換が早いよ!?

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