第14章 色々、変わってきてます!

第486話 登校中に


 今日は水曜日! 夏休みまで、今日を含めてあと3日! 宣伝予定のソフトクリームの試食データやカンペは配信までには用意しておいてくれるって兄さんから聞いたから、放課後になったら配信までに準備を頑張ろー!


 とりあえず通学の電車から降りたとこだけど、まだ朝なのにもう凶悪に暑いよね……。でも、高校まで行けば冷房は効いてるから……それまでの移動が面倒ー。

 駅と学校がそこそこ近いとはいえ、それでも10分くらいは歩かないといけないもん。まぁ文句を言ってもどうにもならないし、歩いて――


「朝からだれ過ぎだっての!」

「わっ!?」


 いきなり背中を軽く叩かれたけど、突然何事!? あ、この人、昨日少し話した料理部の副部長さん? というか、普通にクラスメイトの人だよね!?


「えーと……あ、立花さんだ!」

「……一応は覚えてくれてたようで何よりだね」


 危ない、危ない! 姉さんの名義と同じ苗字だったから、ギリギリなんとか覚えてた! えーと、フルネームは確か『立花楓』さんだったはず!


「毎朝、見かけちゃいたけど……体調が悪いんじゃなくて、ただだれてただけだね?」

「暑いのは、本当に苦手なの……」


 まさかの同じ電車で通学してた人だったー! という事は、意外と家の方角は一緒? あ、でも私の家は学校からかなり遠い方だし、途中で乗ってきてるのかも?

 それにしても、暑さでうんざりしてるのは本当だけど、そんなに他の人から見たらしんどそうに見えてたのかな? うーん、客観的な見え方は分かりません!


「まぁ本当に嫌になるけどね、この暑さは」

「……あはは」


 というか、まともに喋ったのって昨日が初めてな気がするんだけど、距離の詰め方が凄いんだけど!? 同じ場所に行くんだから、同じ電車から降りたら歩くのが一緒になるのは不自然じゃないけども!? なんか妙に緊張するよ!?


「あー、櫻井さん? なんか警戒してない?」

「えーと、その……」


 うぐっ!? 何を話していいのか分からなくて愛想笑いで誤魔化してたら、そりゃそう思われるのよね!? 結月ちゃんが高校でまともに話した初めての相手なくらいだし、こう一気に距離を詰められると何を話したらいいのか分かんないよー!?

 うぅ……配信中なら初対面の人相手でも普通に喋れてるのに、なんか私、リアルでかなりのコミュ障になってませんかねー!? あの中学校の件がある前は、そんな事なかったはずなんだけど……。


「なるほど、こりゃ顧問が結月に鍵を貸して『よろしく』って言う訳だ」

「……もしかして、立花さんも何か言われた?」

「まぁ昨日の放課後にね。でも、こう見てると化けの皮を剥がしたくはなってくるかも?」

「化けの皮って、何も被ってないよ!?」


 意図しない方向で変なイメージが定着してはいたけど、それは私が自発的にやった事じゃないもん!? 病弱だなんて言った事ないもん!? ただ高校で素を出す機会が無かっただけで……それが化けの皮になっちゃうの!?


「へぇ? 結月が言ってた通り、コロコロ表情は変わるじゃん? 既に化けの皮が剥がれ始めてるってとこだね」

「だから、化けの皮なんて被ってないよ!?」

「あはは、そういう怒ったような表情も新鮮なもんだね!」


 別に悪気がある訳じゃないんだろうけど、こういう距離間の詰められ方は苦手かも……。でも、これまでみたいにはしないって決めたんだし、もっと高校でも他の人と交流はしていかないと!

 それに結月ちゃんと同じ料理部の人だし、文化祭での料理部の試食とかも頼まれたもんね。うん、そう考えたら今のうちから出来るだけ打ち解けられるようにしておきたいし、立花さんもそういうつもりで話しかけてきてくれてるのかも!


「あぁ、そうそう。これは先に言っとくけど、別に顧問に言われたから声をかけたって訳じゃないからね」

「……そうなの?」

「教師の言う通りに面倒を見るような良い子ちゃんでもないからね。私の場合は、単純な下心」

「え、下心!?」


 待って、待って、待って!? ある意味、顧問の先生に頼まれたからって理由の方が安心出来るような言葉が出てきたんだけど!? 私に対する下心って何!?

 そう言われると、交流していこうと思ったのも距離を取りたくなってきた! うん、結月ちゃん、ごめん! 同じ料理部の副部長さんとは仲良くできそうにないかもしれない!


「あはは! 露骨に距離を取ってくるね?」

「だって、下心って!? 私、何を狙われてるの!?」


 結月ちゃん、もしかして姉さんの事を言っちゃった!? それとも、この人は同性でも良いって人!? 何にしても、変な狙われ方をするのは嫌ー!?


「別に取って食っちゃおうって訳じゃないさ。結月から聞いたけど、櫻井さん、絵が描けるんだってね?」

「……え? あ、うん、まぁそれなりには?」


 あれー? これ、どういう話になってるの? というか、もしかして結月ちゃん、私の『サクラ』の事を話しちゃった!? まぁ別に知られて困るものでもないけど……はっ!? 下心って、最近宣伝をするようになったから、金銭的な部分!?


「……なんでそこで更に距離を取られる? え、絵が描けるって事は知られたくない事なの?」


 あれ? 思ってたのと何か違う反応だよ? 結月ちゃんが一体何をどこまで話したのかが分からないから、何とも反応し辛いんだけど!? 結月ちゃん、ヘルプー!


「美咲ちゃん、おはよう! 楓もおはよう! まさか一緒にいるとは思わなかったよ」

「結月ちゃん、ヘルプー!」

「えっ!? いきなりどうしたの!?」


 ナイスタイミングで、結月ちゃんが登場だー! いつの間にか校門前まで歩いてきてたし、背後に隠れて避難なのですよ! うがー! この立花さん、何をどこまで知っていて、何を狙ってるの!?


「えーと、楓? これ、どういう事?」

「あー、ちょっと昨日の件を頼んでみようかと思ったんだけど……思いっきり言い方を間違えた?」

「……え? それ、私が言うって決めてたじゃん!?」

「いやー、つい目の前にいたもので? 普段は気にしてなかったから忘れてたけど、何気に電車は一緒なんだよ」

「あ、そうなんだ?」


 これ、どういう話になっているのかがさっぱり見えないままなんだけど? うん、少し整理してみよう! えーと、結月ちゃんが私に何かを頼もうとしてて、それを先に立花さんが下心とか言っちゃた感じ? 立花さんも、私と電車が一緒なのはさっきまで気にしてもいなかったっぽい?

 うーん、なんだか警戒心自体は薄めてよくなった気もするけど、私に頼みたい事ってなんだろ? それが下心だとして……絵が描けるのとどういう繋がりがあるの? うん、分からない事は聞いちゃえ!


「結月ちゃん、どういう話なの? それと、どこまで話したの?」

「あ、知らないとこで話が進んでたから、変な警戒が入っちゃってる!? えっと……楓、あっち行ってて! 話せないから!」

「えー? 私には話せないような、何かがあるって事?」

「……少なくとも、美咲ちゃんの許可なしでは言えない事はあるよ!」

「はいはい、そういう事なら先に行ってますよっと」


 ふぅ……立花さんが先に教室に向かってくれたから、これで一安心。混雑が嫌だから少し早めの電車で登校してるけど……それでよかったー! 人が決して多い訳じゃないから、変に目立たずに済んだよ!

 それにしても、今の言い方だと結月ちゃんは私の配信の事や姉さんの話はしてなさそう? うーん、そうだとしたら絵を描けるって部分だけ話したのかな? でも、それってなんでだろ?


「美咲ちゃん、他の人にはあんまり聞かれない方が良いよね?」

「うん。私の方はともかく、姉さんの方は聞かれたくないかも?」

「やっぱりそうだよね! あ、その辺、誰にも話してないから!」

「うん、それでお願い」

「分かった! それじゃこっちね! 本当は昼休みにでも話す気だったんだけど、手早く状況は説明しちゃうから!」

「うん!」


 色々と変えていく決意はしたけど、ちょっと変化が早過ぎて心の整理が追いつき切ってないからね。『立花サナ』の妹だと、堂々と隠さずに言えるのは……今はまだちょっと無理。

 それにしても、どういう話なんだろ? 昨日の件って、文化祭の打ち合わせの事かな? でも、試食役って話だったし、どう絵が絡んでくるんだろ? うーん、まぁとりあえず人があんまり来ない場所に移動してるから、そこで聞いちゃうのが早いかな?

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