第443話 夕暮れの森林深部


 夕陽がどんどんと沈んでいって暗くなっている中、森林深部の北の端まで疾走中! なんというか……この雰囲気ってあれだね!


「どことなくホラーゲームを彷彿とさせる感じですねー! なんか出てきそうな雰囲気です!」


 元々薄暗かった森林深部だけど、もう少しで沈み切りそうな夕焼けの真っ最中はかなりの雰囲気があるよ!


金金金 : あー、言われてみれば確かに。

ミツルギ : 大禍時とか逢魔時と言われる時間帯ではあるし、森林深部の元々の雰囲気と合わせたら……まぁ不思議ではない感想ではあるよなー。

神楽 : 何か不気味なものが出てきそうではあるもんねー。

咲夜 : この場合、出てきているのはサクラちゃんのライオンの方な気がする?

水無月 : 普通に考えたら、こんな森の中に電気を纏ったライオンはいないもんね!?

イガイガ : あー、それは言える。

富岳 : エリアによってはそうは感じない時もあるが、森林深部だとそういう雰囲気はよく出ているな。

ミナト : 森林深部と夕焼けの組み合わせは、不気味になりやすいからねー!


「やっぱり皆さんもそう思いますよねー! というか、私が出てくる方になるんです!?」


 何か出てきそうな雰囲気って事には賛成だけど……まぁこんなところにライオンがいる方が確かにおかしいのかも! どう考えても、私のライオンは普通のライオンでもなかったよ!


こんにゃく : オンライン版だとそういう印象は全然なかったんだが、オフライン版だとそういう印象があるのはなんでだ? 光景自体は似たようなもののはず……?

ミナト : んー、オンライン版だと他の人がいるからじゃない? ソロであちこち動いて、人が少ないとこに行けば、また違った印象になるとは思うよー!

こんにゃく : あぁ、単純に人が他にもいるからか! 言われてみれば、そりゃそうだよな。


「あ、周囲に人がいるかいないかでも印象が変わってくるんですね。まぁ当たり前と言えば当たり前な気もしますけど……折角なんで、木々の間から見える赤く染まった空のスクショも撮っておきましょうか!」


 ふふーん、駆けながらスクショを連写で撮っていくぞー! ……うん、撮れた! 上手く撮れてるかは、サムネイルを設定する時に確認すればいいや!


サツキ : サムネイルの候補のスクショを追加! この雰囲気、苦手な人は苦手だろうねー。

水無月 : ホラーが苦手な人は駄目そう!?

ミツルギ : あー、そういや発売当初はそういう人もいたっけか。まぁ実際に何か変なものが出てくる訳じゃないし、その辺は気にしなくていいんだけどな。

咲夜 : むしろ、その辺はオンライン版の方が……。

神奈月 : 今は、ゾンビやスケルトンの敵が出てくるもんな。専用の苦手生物フィルタが追加されたくらいだし。


「え、オンライン版だとそんなのが出てくるんです!? というか、逆に言えばオフライン版では出てこないんです?」


 進化していく中で、ゾンビやスケルトンになっていくって事なのかな? うーん、それって進化と言うよりは退化してない? そういうのって退化なのか、よく分かんないけど!


ミツルギ : まぁ出てくるとは言っても、ごく一部だけどなー。オンライン版にしか出てこないのは、敵の設定部分がオフライン版と異なってるからか。

ミナト : 基本的には敵とプレイヤーの種族は同一のものだったんだけど、オンライン版のあれらは明確に敵専用として出てきたからねー。

G : だから、オフライン版で出てくる事はない! ゾンビが出てくると知って、ゾンビ軍団を作ろうかとも思ったんだが目論見が外れた……!

イガイガ : サラッと嫌がらせ集団の第2弾が計画されてたのが暴露された!?

富岳 : ……そんな事を企んでたのか。

ミナト : あはは、それはそれで効果的そうなのがねー。


「動植物のゾンビ集団って嫌ですね!? でも、そういうのがメインのゲームもありますし、ありと言えばありなんですかねー?」


 私はその手のは全然やらない……というか、その辺って流血表現とかグロ表現が多いから、大抵は18歳以上の指定! VR機器の個人認証で弾かれるから、私はやろうと思っても出来ません!

 フルダイブになる前のゲームならその辺は結構無視して出来るけど……なんだか古いゲームをやると、物足りなさがあるんだよねー。


 あ、そうしてる間に疾走の効果時間が切れちゃった。でも、かなり北の端まで近付いた! ふふーん、『移動速度強化』の効果はかなり出てる気がする!

 えーと、再発動まで少しかかるけど、そのまま走っていても問題なーし! 色々といつものスキルの効果は切れたままだけど、別に追っ払ってる今は……って、あれ?


「……いつの間にか威嚇の効果も切れてますね? 今は北の端まで行くのを最優先なので、再発動します! 『威嚇』!」


<『威嚇Lv1』が『威嚇Lv2』に上がりました>


「わっ! 威嚇のLvが上がりましたね! ……使用頻度は下がってますけど、これってなにか便利になります?」


 最近、それほど使ってないから喜んでいいのか微妙なところだよねー。何か追加効果でもあればいいんだけど、その辺ってどうなんだろ?


イガイガ : 威嚇Lv2って、何か追加効果はあったっけ?

ミツルギ : いや、Lv2では特に何もなかったはず?

富岳 : 一応、追加効果はあるにはあるぞ。まぁあんまり意味はないというか、メリットかも怪しいがな。

ミツルギ : え、あったか? あ、いや、思い出した! あったな、確か! ……なんとも微妙な効果なやつ!


「……えーと、どんな効果か教えてもらってもいいですかねー?」


 元々気にしてたとこだし、ここは普通に聞いちゃえ! どうな効果が増えたかの確認は大事!


富岳 : 敵に『移動速度上昇(小)』のバフがかかるのが追加効果だ。逃げる敵は早く逃げるようになって、襲ってくる敵はより早く近くに寄ってくる。

イガイガ : あー、そういう効果があったっけ? 威嚇のその辺の効果、気にした事ねぇや。

ミツルギ : まぁ基本的には追い払う事にしか使わないしなー。

金金金 : ほほう? それって『畏怖の気迫』にも効果が乗る?

富岳 : 乗るには乗るというか、『畏怖の気迫』で使われるのは根本的にスキルツリーの中にある『威嚇』だからな。まぁ『畏怖の気迫』経由では熟練度が入らない仕様みたいだが……。


「え、そんな効果があるんです!? ……なんとも言い難い効果ですね」


 むぅ……格下の敵が逃げるのが早くなる方は問題ないけど、格上の敵が近付いてくるのが早くなるのは微妙! 


サツキ : あっ! 縄張りを使う時には下手に『威嚇』のLvを上げないようにって注意書きがあった気がする!

咲夜 : 言われてみれば、あった気がする!?

いなり寿司 : 『威嚇』は意識して使わないと上がらないスキルだから、その辺を完全に失念してたな……。

富岳 : あまりスキルLvを上げない方がいい類のスキルだな。まぁLv2程度なら、そこまで劇的な効果は出ないからそこまで警戒はいらんぞ。


「そんな落とし穴みたいな仕様って地味に酷くないですかねー!? そこって単純に『逃亡速度上昇』とかで良くないです!?」


 うがー! まさか、スキルLvをあまり上げない方がいいスキルがあるとは思ってなかったよ! でも、威嚇を使う機会ってそこまで多くはないし、問題ないと言えば問題ない?


富岳 : 追い払うだけの効果ならそれでいいんだろうが、引き寄せもするからな。一律の効果としてこういう形なんだろうよ。

ミナト : んー? むしろ向こうから近付いてきてくれるから、サクサク倒していくには便利だよ?

富岳 : とまぁ、使う人によってはこういう評価にもなるからな。

神奈月 : あー、ミナトさんの発言を見れば納得。

イガイガ : 評価軸が全くの逆方向になるのかー。流石は実力派のサファリ系プレイヤー。

チャガ : まぁ近接で戦うなら、別に悪い手段でもないからな。地味に敵同士の同士討ちも狙いやすくはなるぞ?

咲夜 : あ、そういう使い方もありか!

G : ま、使い方次第って事だな!


「おぉ、そういう使い方もあるんですね! なるほど、使い方次第ですか」


 そっか、そっか。一気に格上が群がってくるなら、体当たりとかの攻撃を避ければ他の敵が避けにくい状況ってのも作れるんだね。

 スキルを組み合わせれば効果が化けるって話もしたけど、組み合わせなくても動き方次第で評価がガラッと変わるスキルも色々ありそうな予感! まぁ私に使いこなせるかは、また別問題だけど!


「さてと、そうやって話している間に完全に夜になっちゃいましたねー。北の端まであと少しで辿り着けますし、もう少し頑張っていきますよー!」


 後ほんの少しの距離だから、疾走は使わなくてもいいや! というか、もうここでゴールでも良い気はする! でも、あと配信時間はあと10分くらいはあるから、そのまま北の端まで進んじゃえー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る