第433話 北へ向かって


 雑談をしつつ、再使用時間が経つのを待って……足元にあったチドメグサの採集も完了!


「それでは改めて出発です! 『索敵』『見切り』『弱点分析』『看破』『疾走』!」


 ふふーん、獅哮衝波で薙ぎ倒した木々を足場に駆け抜けていくのです!


サツキ : サクラちゃん、駆け抜けろー!

水無月 : 駆け抜けろー!

金金金 : さて、この状況で注意すべき点は?

ミツルギ : あー、倒れた木の上を『疾走』で駆けていくなら、止まれるだけの距離が無いのは要注意だな。

富岳 : 『疾走』で駆けていく事自体は問題ないが、倒した木だから法則性がある訳じゃないのも要注意だぞ。密集して倒れている部分や、逆に全然倒れてきてない部分もあるからな。


「あ、確かにその辺は言われてみれば当然な話ですね! 注意して進んでいきたいと思います!」


 いつもみたいにズサッと止まるのは、木の上じゃ無理だもんね! それに渓流エリアほど密集してる訳じゃないんだし、これから進む場所が倒れた木で全て埋まっているとも限らないもんね! その辺は本当に注意しながら、どんどん駆け抜けていくのさー!


「足元に注意が必要なのは変わりませんけど、前方の視界が見えやすいのは進みやすくていいですねー!」


 ふっふっふ、決して走りやすいとは言えないけど、こういう場所を通るのは初めてじゃないから大丈夫! 爪を立てる感じで走れば、安定するのは分かっているのですよ!


いなり寿司 : こうやって破壊して進む場合の一番の利点はそこだな。視界の確保が、一気に楽になる。

こんにゃく : とはいえ、左右のチェックは忘れるなよー! 決して敵がいない訳じゃないからなー!

咲夜 : 油断してるところを、横からドカッと!

神奈月 : 毎度思うけど、咲夜さんが言うと現実のものになりそうなんだよな。


「……それは困るので、左右も確認しながらですね! 索敵の効果で、姿は見えてなくても把握できるはずですし!」


 普通に移動してた時と比べて警戒すべき方向が少し減ってるし、進む方向も固定になってるから、かなりやりやすくはなってるもんね! ふふーん、今の移動は快適、快適!

 それに、その辺をちゃんと確認出来るようにわざわざ再発動出来るようになるのを待ってたもん! 


「あ、左側に何かいますねー? まぁ疾走が切れるまでは、スルーでいきますよー!」


 索敵に反応があっただけで看破に反応は出てないから、直接視認は出来ないけど、位置が変われば見える距離にいる敵! でも、疾走で止まりにくい状況には変わらないから、わざわざ止まって戦う気はなーし!


G : あ、スルーでいくのか。

ヤツメウナギ : まぁ、状況的にはそれが無難か。

チャガ : 戦闘をしながら進むなら、『疾走』は使わない方がいいしな。


「とりあえず倒した木々の範囲を抜けるまでは、そのつもりでいきますよー!」


 多分、途中で疾走の効果時間が切れるだろうから、その時くらいは戦うかもしれないけどね! そこまでは、目の前に敵が立ち塞がってこなければそのままスルーでいくのです!


ミナト : あ、サクラちゃん。もしその途中でエリアボスを見つけたら、流石に教えた方がいい?

神楽 : エリアボスは流石に大事?


「あ、エリアボスなら流石にスルーはしないので、そこは教えてもらえると助かります! というか、このタイミングでミナトさんがそれを言うって事は、既に見つけて通り過ぎてるとかです……?」


 ミナトさんなら、それはあり得るよ! 私自身は見落としてるつもりはなくても見落としてる事は結構あるし、実はそうなのかも!?


咲夜 : その可能性はあるな!?

富岳 : ……それっぽいのを見た覚えはないが、ミナトさんなら他の全員が見逃していたとしても見抜いている可能性はあるか。

イガイガ : 実際にそれがありそうなのが凄まじい!

ミナト : あはは、今回は違うよー! でも、いつどこで出てくるかは本当に分からないから、先に確認は取っておかないとね?

いなり寿司 : あぁ、今回は見つけてた訳ではなかったのか。


「ミナトさんなら見つけてても不思議じゃないですしねー! でも、今回はそうじゃなかったんですね」


 そっか、そっか。まぁミナトさんだってなんでも分かってる訳じゃないのはチラホラと言ってたりもするし、今回はそっちのパターンだったんだね!


ミナト : 本当にどういう種族がエリアボスになるか、どういう系統で出てくるかは運次第だから、要注意だよ? 器用系統ならかなりの遠距離から攻撃を仕掛けてくる事はあるからね!

富岳 : 確かにそうだな。上空から超遠距離での攻撃なんて事も、無いとは言えん。

こんにゃく : あー、戦うのが嫌になるタイプのやつ!

ミツルギ : 育成の仕方によっては、対処が出来ない系統のボスだな。


「あはは、確かに上空からの攻撃は厳しいですよねー! まぁ私のライオンなら放電がありますし、なんとかなる範囲な気もしますけど!」


 そういう上空の敵でも、1段階目までの獅哮衝波や咆哮を駆使すれば倒せるはず! まぁ獅哮衝波は再使用時間の経過待ちだけど、今出てきた訳でもないから問題なし!


咲夜 ; そうやって話していると、そういう敵が出てきたり……?

G : あー、無いとは言えない可能性ではあるな。

いなり寿司 : 木を薙ぎ倒して、拓けた部分を移動しているだけ……相手からしたら狙いやすい状況か。


「まだここのエリアでの上限のLvまでと到達してない状況で、それは勘弁してもらいたいですね……。あ、右側に迅速なリスが……全速力で逃げていきましたね。経験値が美味しい個体だったみたいです!」


 今の私のライオンがLv17で、逃げていったリスもLv17だったねー。うーん、もうあっという間に逃げられたけど、今のは惜しかったかも。あれ、仕留められたら一気にLvが上がってた気がする!


サツキ : 今のリスを倒せてたら、経験値が美味しかったのにねー。うーん、勿体ない!

イガイガ : まぁ今のは仕方ないって。

いなり寿司 : 今の移動手段の最中に、あの手の逃げる敵を仕留めるのはなー。せめて、『疾走』が切れてる時か、そのまま『疾走』で追いかけられる時じゃないと……。


「経験値が美味しい敵は、可能なら仕留めていきたいんですけどねー。あ、そうしてる間にそろそろ疾走の時間切れです!」


 なんだかんだで雑談しつつ、走り抜けてたら結構な距離を移動してたよ! 疾走の効果が切れて移動速度が落ちたから、再使用が可能になるまでは普通に走っていこうっと!


神奈月 : それにしても……木々の倒れた位置はバラバラなのに、特に問題なく飛び移りながら走ってたなー。正直、どこかで転ぶかと思ってた。

ヤツメウナギ : 危なげなく、普通に走ってたもんな。

ミナト : 移動のみに集中出来ていれば、そこまで変な事にもならないっぽいね?

真実とは何か : 1つの事に集中出来れば問題はない! それこそが真実なのである!

サツキ : それは大正解! サクラちゃんは同時作業が苦手だけど、1つの事に集中すれば集中力は凄いもんね!

富岳 : これまでの傾向から何となく分かっていた事だが、サクラちゃんは同時作業が苦手なんだな。だから、意識が分散した時にどこかで抜ける部分が出てくるか。

ミツルギ : あー、なるほど。確かに、そういう傾向はあるよな。


「サツキさん、ちょっとそれは言い過ぎですよ!? というか、私ってそうなんです?」


 あんまり自覚はなかったけど、確かにこうして言われてみれば同時に何か色々とやるのは苦手な気もする? んー、どうすればその辺って改善出来るんだろ? 慣れの問題なのかな?


ミナト : その辺は人によって得手不得手が出る部分だからねー。サクラちゃんは、サクラちゃんの得意な部分で頑張ればいいと思うよ!


「あはは、確かにそれもそうですね! って、わわっ!? 視界に赤い表示って事は攻撃ですか!?」


 これ、見切りの反応だよね! とにかく飛び退いて……って、あれ? 消えないよ!? え、なんで!? 攻撃も飛んでこないし……って、わー!? なんか周囲から一斉に鳥が飛び立った!?


ミツルギ : あー、これは『見切り』の反応じゃなくて、『威嚇』の表示か。

富岳 : そうみたいだな。『索敵』の範囲内に新しく赤い印が出た途端だし、向こうも『索敵』持ちか。

ミナト : サクラちゃん、知恵系統か器用系統の敵の可能性が高いから要注意! 場合によったら、エリアボスの可能性もあるよ!


「はい、分かりました! えーと、赤い光が強いのは……木々が倒れてない東側の森の中ですか!」


 そういえば威嚇でこういう反応が出てくるのがあったのをすっかり忘れてた! 見切りも赤く表示されるから、忘れてると同じものかと勘違いしちゃったよ!

 ともかく好戦的な敵なのは間違いないし、疾走は止まってるから戦闘開始なのさー! まだLvは少し低いけど、エリアボスだとしても全然歯が立たない程じゃないはず!

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