第421話 木を下りたら


 4本目の木を駆け上ってる途中で疾走が切れたー! ふふーん、この疾走の時間時間の削り方はいいね! まぁ単純に止まれればその方がいいんだけど、そうできない時に便利っぽいかも!


「とりあえず下りないとですね! えいや!」


 着地した時にバランスを崩さないように……うん、着地成功! ふふーん、転びかける事はあっても、結構転びにくくなってきたんじゃないですかねー!


ミナト : あ、こっちに出ちゃったんだ。

ミツルギ : あー、正確な位置が分かってなかったからなー。

サツキ : サクラちゃん、前! 前!


「え、前……って、ハチの巣が目の前です!?」


 ぎゃー!? 目の前の木の枝に、リアルにあったら駆除を頼まなきゃいけないくらいの大きなハチの巣があったよ!

 乱雑に木を駆け上ってたから、方向とか全然気にしてなかったー!? ハチの巣へハチミツを取りに行こうかと思ってたけど、まだその予定はしてないよ!?


水無月 : 目の前の木に、大きなハチの巣だー!?

富岳 : 通ったルートが変則的過ぎれば、流石のミナトさんでも気付かないのか。

ミナト : そりゃ、物理的に兆候すら見えてなかったら判断の手段はないからね!?

真実とは何か : 当然な真実である。


「確かにそれはそうですよね!? わっ!? わわっ!? ハチが針を飛ばしてきましたよ!?」


 ともかく、この攻撃は飛び退いて回避ー! ハチの巣を守るハチは知恵系統の敵なんだから、下手に攻撃を受けたら危険なのですよ! うーん、予定外にはなるけど、ハチミツは欲しいよね。


「もう戦闘に入ったなら、このままハチミツを狙っていきましょう! 『索敵』『見切り』『弱点分析』『看破』!」


 ランダムリスポーンをした時に全部切れたままだったけど、再発動は可能になったから再発動で! 目の前とかいえ、少し距離はあるからその間に体勢を立て直すのですよ!


「わっ!? わわっ!? 見切りに次から次へと反応が出ますね!?」


 うがー! 距離がある場合は、このハチは連続で針を飛ばしてくるんだけど! ともかく回避なのさー! でも、とりあえずこのハチがLv14の聡明なハチなのは確定!


ミツルギ : サクラちゃん、この手のハチの弱点構成は見ておくのを推奨だぞ。特に成熟体を過ぎた辺りからは明確に顕著な特徴が出る。

富岳 : まぁかなり独特ではあるからな。

金金金 : あー、確かに表示を見る限りでは独特だな? てか、こんなパターンもあるのか。


「結構攻撃が激しくて、見てる余裕が無いんですけど!? わっ! わわっ!?」


 飛ばしてくる針に毒があるかどうか、ぱっと見じゃ分かんないもん! 再使用時間があるから全部が毒ありじゃないはずだけど、下手に麻痺毒で動きを止められたら厄介だし、回避一択しかないよね!


サツキ : サクラちゃん、避ける、避ける、避けるー!

咲夜 : なんというか、サクラちゃんの回避は上手くなってる?

ミツルギ : 森の中で、他の木々にぶつからないように避けられるようにはなってるな。

いなり寿司 : 見切りの効果で回避のタイミングが掴みやすいのかもな?

富岳 : 放電のマニュアル操作が得意なら基本的に空間把握能力は高いはずだから、慌てずに観察出来ていれば、障害物が無い方向への回避も慣れてくれば大丈夫だろうよ。


「あ、私の回避って上達してたんですか!? まぁそれはいいとして、ちょっとは反撃していきますよー! 『放電』『放電』『放電』! わわっ!? 一般生物のハチまで大量に出てきましたよ!?」


 むぅ……回避自体は上達したみたいだけど、回避しながら放電の狙いを付けるのが難しい! 外してハチの巣の近くに放電が当たったら、大量のハチが出てくるとは思わなかった! うがー! 雑魚だろうけど、鬱陶しい!


こんにゃく : おー、一般生物のハチの大量出現か。これ、攻撃が当てにくくなるんだよな。

ヤツメウナギ : だなー。まずは周囲のそのハチの一掃からか。


「どう考えても邪魔ですもんねー!? 溜めてから一掃します! 『放電』!」


 一般生物だから、この大量のハチ自体はそれほど脅威ではないけど……それでも、聡明なハチを見失いそうになるもん! 聡明なハチは他のハチよりも明確に大きいけど、それでも気が散るもん!


「あっ!? 放電に触れられました!?」


 ぎゃー!? 折角溜めようとしてたのに、一般生物のハチの1匹に触れちゃって放電になっちゃった!? うぅ……溜めすらやりにくい!


ミツルギ : 一般生物の活用は、こういう妨害に絶大な効果を発揮するからなー。

神奈月 : いるだけで邪魔なやつだよなー。

G : いやー、そういやオフライン版でこういうのもあったもんだ。……なぜ、プレイヤー間でもこれが有効だと気付かなかったのか。

ミナト : あ、先週の話? んー、あれは意外と盲点だったよねー!

富岳 : あぁ、進化階位の低い人達の大量投入か。確かにあれは盲点だったな。

咲夜 : あれはびっくりしたわ!

水無月 : え、何の話?

いなり寿司 : オンライン版での話だ。大規模な対人の集団戦の最終戦が先週あったんだけど、その時にまだまだ弱い人達を大量投入して妨害に動いた勢力があってな?

水無月 : あ、そうなんだ? 私が始める前にあったやつでの話っぽいね!


「オンライン版、対人の集団戦とかあるんですね! わわっ!? もう邪魔ですね! だったら、これです! 『獅哮衝波』!」


 回避すればハチにぶつかるけど、これなら溜めの妨害はされないもんね! 衝撃凝縮は一応使う事にして、これなら1段階目までで一気に数は減らせるはず! オンライン版の話は気にはなるけど、今は話してる場合じゃなーい!


サツキ : サクラちゃん、ここで大技を発動!

ミナト : 間違えても、ハチの巣には当てないようにねー! それ、壊しちゃうから!


「え、そうなんです!? それは要注意ですね!」


 まさかのハチの巣を壊すなんて事があったよ!? それ、絶対に勿体ないから避けないと!


「それにしても、ハチが多いんですけど!? 前に遭遇したハチの巣って、こんなに数はいましたっけ!? わわっ!?」


 うがー! 一般生物のハチが邪魔過ぎて、聡明なハチから意識を逸らさないようにするのが難しいよ! でも、ちゃんと見据えてないと見切りの効果が発揮しないから、絶対に見失わないようにしないと!


ミナト : ううん、前はこれほどの数はいなかったよ。でも、サクラちゃんが強くなってるように、敵も強くなってるからねー!

富岳 : まぁ敵の進化階位が上がれば、それだけ厄介さは増していくぞ。

咲夜 : 難易度が上がれば、一般生物以外もハチの巣の護りに出てくるんだっけ?

ミツルギ : 確かノーマルまでは一般生物のみで、ハード以降で屈強系統の個体が追加だったか。進化階位によって、出現数が増えてくるんだったはず。


「あ、そういう違いがあるんですね! というか、そういう強化要素があるなら、どう考えてもハチミツ自体の効果も上がってる気がするんですけど!? わわっ!?」


 これ、絶対に解毒とHP30%の効果じゃ割に合わないよね!? 毒の実だって毒の種類が変わって強力になってたりもするし、変化がある部分な気がする!

 それにしても、この聡明なハチは全然距離を詰めさせてくれないね!? ハチの巣を壊さないようにするのなら、あのハチとハチの巣が射線上に重ならないようにしないと……うーん、回避しながら溜めが完了した時には、そういう位置取りにしなきゃいけないんだね。


イガイガ : 別に言ってもいいけど、完全にネタバレ案件だぞ?

G : それは間違いないな!

咲夜 : 出来るだけハチの巣は壊さないようにして入手したいとは言っておこう!


「もう、それって効果が変わるって言ってるようなもんですよねー!? どういう風に変わってるかは、自分の目で確かめます!」


 でも、まだ全然聡明なハチにはダメージを与えられていないんだよね。もうすぐ1段階目の溜めも終わっちゃって動けなくなるし、今の位置から狙うと木の枝にあるハチの巣には当たっちゃいそうだよね。

 うーん、少し危ない気もするけど、ここは強引に位置を変えちゃおう! 雑魚のハチの一掃が目的だったけど、ピンポイントで聡明なハチを狙うのです!


「目指すは、聡明なハチの真下です! 『獅哮衝波』!」


 ハチの巣からは少しだけど離れてるし、衝撃凝縮は100%に絞って範囲は狭めて威力重視! 麻痺毒さえ受けなきゃ、この際、他の毒は受けてもいいのですよ! ただ、近付くとどうなるかが問題だよね。


サツキ : おー! サクラちゃんが距離を詰めた!

ミツルギ : 真下から、最大火力で撃ち込む気か!

富岳 : ほう? さて、これはどうなるか……?

チャガ : ハチの巣を巻き込まないようにするなら、それが確実だな。

水無月 : サクラちゃん、頑張れー!


「はーい! これで、死んでくれればいいんですけどね!」


 あ、そういえばこの聡明なハチの弱点をちゃんと確認してる余裕が無かったけど……って、あれ? なんか意識してみたら、なんか表示が変だよ!? これ、どういう事!?

 うー、その辺を考えるのは後! もう溜めが終わるし、聡明なハチも針を飛ばすのを止めて直接刺しにきてるもん! って、わー!? 針に黄色い液体が滴ってるって、麻痺毒じゃないですかねー!?

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