第420話 森林深部を駆けて


 わー!? マップを見たら、赤い印が大量に見えてるよー! これ、全然離れた位置にランダムリスポーンしてないから、大急ぎで離れないと!?


「えっと、南西の方角に沢山見えるので、北東側に出たっぽいですね! なら、北へ逃亡です! 『疾走』!」


 死んだ事で色々とスキルは再使用時間待ちになってるから、そのまま進むのは結構危険だけど、そうも言ってられないのさー!

 ここでまた囲まれるのは予定外! 縄張りの効果でまた集まってくるはずだし、今は逃げの一択だよね!


金金金 : 慌てふためく狐っ娘アバター。これ、その心配はいらないのでは?

ミツルギ : ぶっちゃけ、必要ないな。

ミナト : サクラちゃん、縄張りは死んだ事で解除になってるから、今は交戦状態にはならないよー?


「……え? あ、死んだんだから、そうなるんでした!? わわっ!?」


 思い違いをしてた事を指摘されたら、足元への注意が不十分になってて、踏み外しかけたー!? 危ない、危ない! なんとか転ばずに体勢の立て直しには成功ですよ!


「……下手に急停止も出来ないので、少しこのまま走りましょうか。ちょっと慌てすぎましたねー」


 むぅ……無駄にやらかしちゃった感じだけど、やっちゃったものは仕方ないよね! 普通に再使用時間が過ぎるのを待つ事が出来たっぽいけど、今更言っても遅いのです!


富岳 : そのまま駆け抜けるのもいいが、看破も索敵も無しに未踏破の範囲に進むのも危ないから、コケの生えていない場所で止まる事を推奨だな。

こんにゃく : 割とあちこちにあるから、そういう場所まで移動してしまうのが安全だぞ!

咲夜 : なんだか焦ってたみたいだし、それまでの間の索敵くらいはこっちでやっとく? まぁ見える範囲でだけど。

サツキ : あ、それもいいね! サクラちゃん的には、それはどうですか!?


「あ、お願い出来ますか!? 流石に色々と全く発動無しで進むのは不安ですし!」


 最初はそれが当たり前だったはずだけど、いざ色々と便利なスキルを手に入れてからは……使用しないで進むのはなんか不安! 特に、大雑把といえ『見切り』が便利過ぎるし、『看破』も言うまでもないよね!


ミナト : そういう事なら……左前の木の幹にカブトムシ、その木の根元にキノコがいるから要注意ね! 見えてないけど、更にその奥の木の葉っぱの中に鳥辺りがいるよー!

神奈月 : 相変わらず、見つけるのが早い!

水無月 : 見えてないのまで見つけてるのが凄いよね!?


「上下のどっちにもいて、反対側の木にもいるって微妙に嫌な配置ですね!? えっと、それなら、左側の木を更に左側から迂回していきましょう!」


 それなら正体不明の右側の木にいるって鳥らしき敵には遭遇しないはず! というか、それって看破でも見えないやつだよね! あ、でも今なら『索敵』を発動すれば見つけられる敵でもあるよ!


「あれ? なんだか、この辺って妙に一般生物のハチが飛んでますね? これはもしかして……ハチの巣が近くにあります!?」


 確か知恵系統のハチが護ってるはずだし、避けていった方が良いのかも? あ、でも姿くらいは確認して、可能ならハチミツも採集したいかも! うん、ちょっと1匹のハチを追いかけちゃえ!

 解毒とHP30%の両方の効果があるもんね! ……全然使ってないけど、敵次第では持ってて損はないアイテムだもん!


G : あー、確かにある可能性は十分あるな。

咲夜 : というか、既にハチを追いかけ中。

水無月 : サクラちゃん、いっけー!

イガイガ : ハチの巣だと、守ってるのは聡明なハチか。

ミツルギ : 地味に全てがランダムではない系統の個体だから、厄介な敵なんだよなー。


「え、ランダムじゃない個体とかいるんです!?」


 あれー? 敵のステータスって、全てランダムで決まってるって話じゃなかったっけ? でも、ハチの巣を守ってるのは知恵系統のハチだって言ってたよね? んー? よく考えたら、これってどういう事なんだろ?


ミツルギ : あー、すまん。一応はランダムの個体ではあるのか。

富岳 : 正確にはランダムに生成された個体の中で、一定の条件を満たしたハチが出た時に、その周辺にハチの巣が生成されるという流れになるな。

G : ハチの巣、どこにでもある訳じゃないからなー。ハチミツは結構なレアアイテム。

金金金 : なるほど、そういう仕様か。


「あ、そういう感じなんですか! それなら納得です!」


 それに、ハチミツはレアアイテムなんだー! それならもう少し回復量が多くてもいい気はするけど……あ、回復量が一定とは限らないのかも? 守ってるハチが強くなるんだし、それだけハチミツの質が上がる可能性はあるよね!


「……それにしても、ハチを追い抜いちゃったんですけどどうしましょう? 近くに止まれる場所がありませんかねー!?」


 当たり前と言えば当たり前だけど、疾走中だから追い抜いちゃったよ! 前の方にはハチの巣らしいものは見当たらないし、ハチの巣が無い方向に進んじゃった気がする!


ミナト : んー、追い抜いた辺りで方向が変わってたし、ハチの巣がある場所は通り過ぎちゃったかな? あ、多分止まれる場所も一緒に通り過ぎちゃったかも?

ミツルギ : 位置的に近過ぎて、疾走しながらだと無理な位置だったな。

いなり寿司 : あそこに止まろうと思ったら、グルっと迂回してこないと無理だな。

チャガ : 地味にサクラちゃんが走ってる位置的には、木が邪魔になっていたのもあるか。


「え、そうなんです!?」


 わー!? 止まれる場所まで通り過ぎちゃったみたいだけど、近過ぎて止まれないとかもあるんだ!? あ、でも確かに近過ぎて、その上に間に木があれば小回りが出来ない今の状況なら確かに止まれないかも! ……むぅ、やっぱり疾走を使うには向いてない場所な気がする!


富岳 : 止まる場所が無いなら、思いっきり急加速して効果時間を使い切るという手もあるぞ?

ミツルギ : ただ、その場合は初めに加速させる時の場所に要注意だな。コケの上でやると、足を取られかねんからな。


「あ、そういうのもありなんですか! ……だったら、これならどうですかねー! えいや!」


 近くの木の幹にジャンプして、その状態で木を駆け上がるように急加速! 爪を立てながら、木を駆け上るのですよ! おぉ、幹が爪でボロボロになってる木がするけど、それでもこれはいけるね!


水無月 : おぉ、ライオンが木を駆け上ってるね!

金金金 : 木を駆け上るライオン! あっ……。

G : あっ……。

ヤツメウナギ : あー、そうきたか。


「ちょっと待ってください!? 何かを攻撃したっぽい気がするんですけど……とにかく、着地が先ですね!」


 枝の部分まで駆け抜けた時に、なんか感触が少し違ったよ!? でも、それより先が無いから、これ以上は駆け上りようがないし、着地に失敗したら転ぶやつ!

 こういう時は着地した後にそのまま駆け抜けるつもりで、木の反対側に向かって跳んで……おぉ、ちゃんとバランスを崩さずにちゃんと駆け抜けられたよ! でも、疾走の効果時間が切れてないから、同じ要領で他の木を駆け上っていくのさー!


イガイガ : なんというか……妙なとこで器用な事をするよな?

富岳 : それは確かになー。てか、さっき踏みつけてたのは……ナナフシか?

ミナト : 擬態してたし、迅速なナナフシかな?


「さっきの変な感触って、ナナフシですか!? ナナフシって、あれですよね!? なんか枝みたいな虫!」


 前にどこかで話題が出てた覚えがあるよ! 今は疾走の効果時間を減らす為にまた木を駆け上って、ジャンプして着地しようとしてる最中だから確認出来ないけども!


ミナト : うん、そうだけど……もう姿は見えないかな? いた場所とは違う部分に移動しちゃったし?

水無月 : さっきの木があった辺り、赤い印は出てるよー!

富岳 : もし戦う気があるのなら、疾走が止まってから戻れば行ける範囲だな。まぁ『隠れ身』を使って生命の表示を隠されたら……見つけにくいが。


「あ、確かそんなスキルもありましたっけ!? まぁとりあえずは、疾走の効果時間を削るのが先です!」


 ふふーん、地味に木を駆け上るのは有効な手段っぽいもんね! これなら足を取られて転ぶことはないのです! ……でも、さっきのナナフシみたいに何か敵を攻撃する可能性もあるみたいだから要注意で!

 あ、そう考えてる間に4本目の木を駆け上ったところで疾走の効果が切れた! よーし、これで着地したら普通に動けるね!

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