第413話 頑強なカブトムシ


 視界の端に見切りの反応があったからなんとかギリギリで避けれたけど、避けた先の地面にカブトムシが刺さってる! なんか間抜けな姿だけど、これは絶好な攻撃チャーンス!


「地面に刺さってるうちに、これです! 『投擲』!」


 知恵が弱点になってるし、頑強なカブトムシだから堅牢系統だもん! 弱点に『知恵』あるから、毒は有効なはず!


「ちゃんと毒になってくれましたね! それじゃ今度はこれです! 『噛みつき』!」


 地面から角を抜こうと暴れているところだけど、その前に捕まえるのさー! ガブリと噛みついて……むぅ!? 妙に硬くて牙が通らない!? でも、動き自体は捉えたから、このまま引き抜くのさー!


サツキ : やっぱり虫に噛みつくのは躊躇ないよね、サクラちゃん。

金金金 : ある意味、Gさんの天敵か?

G : わっはっは! 俺を見ても嫌がらない相手はむしろ歓迎だ! まぁ逃げる奴も歓迎ではあるがな!

神奈月 : それなりの実力がある上に、嫌われるのすら狙ってやってるんだから厄介なんだよなぁ……。


「オンライン版での話だとは思うんですけど、Gさんは普段どんな事をしてるんですかね……?」


 これまでの話の中で、まぁGさんはオフライン版にはいない害虫でプレイしてるのは確実みたいだけど……なんか皆さんに知られてるくらいに色々やってそう! まぁ私はその辺は特に苦手じゃないから、全然平気だけど!


「とりあえずカブトムシが暴れ出したんで、岩に叩きつけておきましょうかねー! えいや!」


 表面はコケに覆われてはいるけど、岩自体はそこら中に転がっているもんね! 噛みつきの効果中は離せないし、暴れられてはいるけど逃げられそうな感じでもないし、思いっきり叩きつけちゃえ!


水無月 : Gさんって、あれだよね? オンライン版で有名な……害虫集団のリーダーだよね? 私、Gさんとはオンライン版では会いたくない!

G : わっはっは、その反応こそ俺が求めているもの! ……まぁ富岳さん辺りには容赦なく殺された覚えはあるがな!

富岳 : あぁ、先週の月曜の最終戦か。いや、でもあれは仕方なくないか? 対人戦の真っ最中の話だろ?

ミツルギ : あの最終戦の時、戦ってたのか! あー、でもその状態はおかしくはないよな。

ミナト : ザっと見た感じ、プレイヤー名が同一で所属が違う人はチラホラいるもんねー。

咲夜 : ……地味にミナトさんは見た事がないんだけど?

いなり寿司 : まぁここでのハンドルネームが、オンライン版でのプレイヤー名とは同一とは限らないからな。同名は使用不可だし。


「おー! Gさんと富岳さんの戦闘は、ちょっとどんなものか気になりますね! 場所によって名前が違うのは、まぁある話ですよねー!」


 ガンガンとカブトムシを岩に叩きつけながら……あ、噛みつきの効果が切れちゃった。それにしても妙に大人しいね、このカブトムシ? どういう様子なのかを確認する為に、一旦離してみても大丈夫……?


サツキ : サクラちゃんの動きが止まったー!

こんにゃく : 思いっきり攻撃してたけど、これって大丈夫か?

ヤツメウナギ : 場合によっては、まぁ相当危険だろうな。

ミナト : 前に戦った時のカブトムシと同じような感覚で攻撃してたからねー。まぁあえて何も言わなかったけど、どうなるかな?


「え、ちょっと待ってください!? 私の戦い方、マズかったんです!?」


 カブトムシのHPは毒の効果が凄くいし、なんだかんだで効きは悪めだけどそれなりに攻撃でダメージは入って3割ちょっとまでは削れてるし……はっ!? 敵だって前よりも色々とスキルを持ってるんだし、堅牢系統の敵が大人しい時って危険だー!

 身構えならもっとダメージは減ってるはずだし、返しの突撃ならもう攻撃は受けてるはず! となれば、溜め攻撃か、もしくは……。


「これ、もしかして『堅守の構え』ですか!? わわっ! ダメージを与えちゃ駄目なやつです!?」


 わー! とりあえずペッっと吐き出して、距離を取るのです! この勢いでHPを減らしていったら、『威力強化【Ⅱ】』くらいにはなっちゃうんじゃ!? 確かⅢになるので半減だったはずだし……これはやらかしたかも!


金金金 : そうしている間にも、毒でHPがどんどんと減っていくカブトムシであった。

イガイガ : あー、このままの減り方だと半減まで行きそう? どのタイミングで発動したかにもよるけど、生命2割減で『威力強化【Ⅱ】』が発動だったよな。

ミツルギ : そうなるなー。攻撃の威力、25%の強化は覚悟しておいた方がいいぞ。


「その覚悟はしたくないんですけど! あ、だったらこれで解除するまでです! 『咆哮』! って、あれー!? 身構えてるのは解けましたし、萎縮にもなりましたけど、『威力強化【Ⅱ】』は出ちゃいましたよ!?」


 待って、待って、待って! スキルの発動自体は止められたのに、その効果まではキャンセルされてくれないの!? そんなの、聞いてないよ!


富岳 : 『堅守の構え』での強化効果は、どういう形で終わったとしても1つの例外を除けば必ず効果は発揮するからな。まぁ威力強化【Ⅲ】まで行きそうだったから、その前に止めたのはセーフだぞ。

いなり寿司 : 威力強化【Ⅲ】だと、50%の強化だしな。Ⅱの25%とはかなり違ってくるぞ。


「……考え方によってはそうなりますか。だったら、今やるべきは萎縮のうちに仕留め切るまでです!」


 なんだか堅牢系統の進化の割には思った以上にHPは削れてるけど……これは毒のおかげなのかな? 弱点に『生命』があったし、元々のHP自体が少ないのかも? うーん、まぁいいや!


「今は攻撃あるのみです! 『強牙』!」


 思いっきり噛みついて、今度は簡単には抜け出せないように、思いっきり地面に突き刺す! ……うん、角が見えないくらいに埋まったし、多分これで大丈夫!


金金金 : 地面に突き刺さるカブトムシ……! 今回は武器としては使わないか。

いなり寿司 : 周囲に敵はいるだろうけど、索敵が機能してない現状では1体ずつしっかりと仕留めていく方が安全だろ。

金金金 : あー、まぁそりゃそうだ。

こんにゃく : マップが使えてたら、強化段階になってるカブトムシを武器に使うのもありか? やった事ないけど。

富岳 : まぁ普通はあまりカブトムシを咥えて武器にするなんて事はしないからな。


「とりあえず、今はカブトムシだけに集中した方が良いって事ですね! 『爪撃』『双爪撃』!」


<『双爪撃Lv1』が『双爪撃Lv2』に上がりました>


「あ、スキルLvが上がりましたね! でも、硬いですね、このカブトムシ!」


 威力は決して悪くはないんだろうけど、堅牢系統相手だと効きは悪いよ! 両方の爪で一気に振り下ろした影響で、更にカブトムシが埋まったけど……窒息にまではなってないかな?

 カブトムシって、地面の中で窒息するとかあるの? うーん、分かんないから別にいいや!


「続けていきます! 『連爪撃』『爪刃乱舞』!」


 うりゃりゃりゃりゃりゃー! 同じタイミングで取ったスキルだから、この2つもスキルLvが上がるかと思ったけど、別にそうでもなかった! 元々の威力があるから、スキルLvは上がりにくいのかも?


サツキ : サクラちゃん、怒涛の連続爪ひっかき!

水無月 : どんどんやっちゃえー!


「はい、このまま仕留め切るつもりでいきますよー! 硬いですけども!」


 ふっふっふ、結構萎縮になってる時間も長いし、弱点が知恵なだけはあるね! 体表面が硬いから爪で傷ひとつ付いてないけど、その分だけそのまま地面に埋まる力に変わってる気がする!


咲夜 : どんどん埋まっていくカブトムシ……。えーと、地面の中で窒息ってしたっけ?

G : 土の中で育つ虫系は、土の中では窒息はしない!

富岳 : まぁ毒の継続ダメージが入ってるし、ここまで埋まってしまえば……脱出のために暴れる際に大ダメージは確実だな。

チャガ : そこまで行くまでの間に、サクラちゃんが仕留め切れるか?


「いっそ、どんどん埋めちゃいましょうか! 『振り回し』!」


 地面に杭を打つような気分で、ライオンの前脚で打ち付けるのさー! ぶっちゃけ、こうやって攻撃している間の毒のダメージの方が多いよねー! 減ってない訳じゃないけど、普通の攻撃でのHPの減り方が悪いもん!


「むぅ……もう毒任せでいきましょうかねー?」


 なんか負ける気がしなくなってきたし、萎縮が切れて大暴れしてくれた方が早い気がする! あ、でも毒の効果がそれまで続くかな? もう1個くらい、毒の実をぶつけとく?


「あ、萎縮が切れて暴れ出しましたねー! おー、どんどん毒のダメージ量が増えてます!」


 うふふ、暴れれば暴れる程に毒の効果は増すのです! そのまま地面に突き刺さったまま、毒で死んじゃってください!


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


 あ、ちゃんと仕留められた! ふふーん、毒の実は便利なのですよ!


金金金 : えげつないな、オフライン版の毒の効果……。

ミナト : あはは、まぁ動けば動くほどに凶悪になるからねー。流石に凶悪過ぎるから、その辺の要素はオンライン版じゃ抑えられてるけどさ。

富岳 : まぁここはオフライン版の配信だし、サクラちゃんの好きなように盛大に使うといい。


「あはは、それはそうですよねー! 知恵が弱点で、攻撃が通りにくい敵には毒を有効活用していきましょう!」


 昨日の配信中に結構な数の毒の実は補充出来たし、無駄遣いはしないようにしなきゃいけないけど、使う時はどんどん使っていこー!



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