第408話 帰省も終わり


 色々と話しながらの朝ご飯を食べ終えて、お昼までは姉さんから色々と教えてもらいながら、聡さんからもお茶の宣伝の手順も聞いた!

 好き勝手に言っていいけど、提供の試飲データであることと、そのお店のホームページへ行けるようにするのだけは必須らしいね! うん、まぁ好き勝手に言っていいとは言われてるけど、昨日のお茶なら特に問題はなーし!



 そうこうしてるうちにお昼だー! もうお昼かー。姉さん、帰っちゃうんだよね……。なんか過ぎてみればあっという間の姉さんの帰省だった気がする。

 それは仕方ないとしても、姉さん作の和室の中で色々とやってたけど……今日はこれが必要になりそうって事で、小物作りを頑張ったのですよ! うん、中々に良い出来栄えな気がする!


「うん、立派、立派! これなら今日の配信から使えるね!」

「流石にマグカップじゃ、緑茶は味気ないもんねー!」


 という事で、作ってみたのは湯飲みです! いつもの感じで作ってたら姉さんに色々と駄目出しされたけど、アドバイスを受けながら頑張ってみた!

 なんというか、デザインの仕方や形の作り方というよりは、私が感覚でやってた部分の無駄な手順の省き方みたいなのを教わった感じ! 色々と勉強になりました!


「……それにしても、結構無駄な手順が多かったんだね」

「まぁ美咲ちゃんのは完全に我流だからねー。そこに無駄が出てくるのは仕方ないよ?」

「それはそうだけど……姉さんのは我流じゃないの?」

「ふっふっふ、その辺は同業者の人達と色々と情報交換をね。他の人のやり方を聞くのも、参考にはなるんだよ?」

「おー、そうなんだ!」


 私は1人で作ってばかりだったし、そういう機会って全然無かったけど……そっか、他の人のやり方を参考にさせてもらうのもありなんだ。プロ同士の会話なんだし、すごい話をしてたりするんだろうなー!


「参考までに、どういう話をしてるか聞いてもいい!?」

「いいよー! よーし、それじゃその辺はお昼を食べながらにしよっか!」

「はーい!」


 という事で、フルダイブは終了にして自室のベッドから起き上がるのです。姉さんは敷布団を持ってきて私の部屋の床に敷いて、その上でフルダイブしてた! 別に私の部屋まで来る必要はなかったはずだけど……まぁその辺は姉さんだからね!


「あ、そういえばお父さんとお母さんはなんか出かけるって言ってたような気がするけど……これからお昼を作る感じになるの? 姉さん、その辺は話してたよね?」


 私が湯飲みを作るのに集中してたから、フルダイブ中の外との会話は姉さんが代わりにやってたもんね。姉さんが帰る時に、お父さんもお母さんもいなくていいのかな? まぁ別にいつでも連絡は取れるけど……。


「あれ? お昼までには帰ってきてお母さんが作るって言ってたんだけど、お父さんもお母さんも帰ってきてないね。あ、なんかメッセージが来てる? 美咲ちゃんの方にも来てない?」

「え? あ、本当だー!」


 集中してる最中だったから通知はオフにしてたけど、姉さんに言われて携帯端末を見てみれば確かにお母さんからメッセージが来てるね。えーと、内容は……。


「交通事故があって、渋滞に巻き込まれてるんだ!? 当分帰れそうないんだ!?」

「あらら、結構な事故みたい? ご飯は自分達で用意しなきゃ……美咲ちゃん、一緒に作ろっか!」

「え、でも帰る時間は大丈夫なの?」

「あ、そっか……。流石に今から作ってると、帰る時間が遅くなっちゃうなー。うーん、事故が起きた場所って帰り道だし、これなら迂回しなきゃだよね……」


 初めから一緒に作るつもりだったなら大丈夫だけど、急にだと無理だもん! 何を作るかにもよるけど、冷蔵庫の中にあるものだけで手早く作れるもの……って、まずは冷蔵庫の中を見てみないと分かんないよ! 今から食材の買い出しに行く時間は、流石に厳しいし……。


「うん、それならコンビニでお弁当でも買ってこよっか。それなら歩きでもすぐだしね」

「それが良い気がするし、そうしよー!」


 兄さんは家にいるはずだけど、ご飯はどうするんだろ? 割と休日のお昼はそれぞれでご自由にって感じだけど、今日はお母さんが用意するって事だったけど……うん、聞いてこよ! 考えるよりその方が早いのです!


「ちょっと兄さんはお昼をどうするのか、聞いてくる!」

「あ、美咲ちゃ、ちょっと待って」

「姉さん? なんで止めるの?」


 自室のドアを開け放ったところで止められたけど……あ、兄さんが階段を上ってきてる? あー!? なんか袋を持ってるから、買い物帰りっぽい!


「ここはちょっと、普段は冷静な俊くんを驚かせて――」

「……何を言ってるんだ、このバカ姉は」

「……え? あー!? 俊くん、なんでそこにいるの!?」

「なんでもなにも昼飯を買ってきて、帰ってきただけなんだが……。色々と集中してたみたいだから聡さんと一緒に買ってきたが……姉さんは必要ないらしいな」

「あ、買ってきてくれたんだ! 兄さん、ありがと!」

「……え?」


 そっか、兄さんと聡さんが気を利かせてお昼を買ってきてくれたんだね! 姉さんは……うん、今のは自業自得としか言いようがない気がする! 本人を目の前に、いたずらをしようって宣言してたんだもん!


「姉さんの分はいらないよな? 美咲が量的に食べられないなら、俺の晩飯にするか」

「俊くん、待って、待って!? 私だけお昼抜きなの!?」

「俺を驚かせて……何をする気だったんだ?」

「……ごめんなさい!」

「……はぁ」


 なんというか、未だに姉さんと兄さんの力関係がよく分かんないなー? 5歳ずつ離れてて姉さんが一番年上なはずなんだけど、正直兄さんの方が一番年上な感じはするんだよね。……兄さんがしっかりしてるのは確実にあるんだろうけど、姉さんの仕事絡み以外の部分が……その、あれだよね。



 ◇ ◇ ◇



 なんとか姉さんは兄さんに許してもらって、兄さんと聡さんが買ってきてくれたコンビニ弁当でお昼は食べ終えた! 状況が状況だったから仕方ないけど、なんかコンビニ弁当だったのはちょっと寂しい感じだよね……。


 もうそろそろ姉さんと聡さんが帰っちゃう時間かー。結構な距離があるからあんまり遅い時間に出発すると夜になっちゃうし、流石の姉さんもこれ以上はお休みを取る訳にもいかないんだろうね。

 聡さんが我が家の古いホームサーバーを車に積み込んだし、持ってきていた荷物とかも片付け済み。……もう後は帰るだけなんだね。


「美咲ちゃん、寂しそうにしないでー!? もう聡さん、いっそこっちの近くに引っ越しちゃう?」

「葵、流石にあそこを離れるのは賛成しかねるよ……?」

「うん、分かってる。今のは言ってみただけ。あそこを離れるのは流石に無しだもんね」


 あれ? そういえば、姉さんが今住んでいるマンションって一度も行った事がないような気がする? 結婚直後に住んでたマンションから引っ越したのっていつだっけ? 時期は忘れたけど、引っ越した直後くらいから姉さんが仕事で大忙しになってて、そのままのような?


「姉さんの今住んでるマンションって、どんなとこなの?」

「あ、そういえば美咲ちゃんはまだ一度も来てないような!? えっと、前のマンションよりかなり広いよ! そして大家さんが何気に私と同年代のお金持ちのお嬢様!」

「まぁあの人は変わり者ではあるよ。マンションのオーナーではあるけど、わざわざ自分で管理人をしているくらいだしね」

「そうなの!?」


 マンションの持ち主でお金持ちなのに、わざわざ自分で管理人をしてるんだ!? そこって普通は誰かを雇ったりしてそうなのに、そういう人もいるんだねー!


「それでね? 去年辺りからは大忙しになり始めた頃に、ちょーっと前のマンションでご近所トラブルに巻き込まれて、まともに仕事のならなくなっちゃった事があってね」

「それで大急ぎの引っ越しを考えてた時に『変な事に惑わされず、やりたいことに専念しなさい!』という理由で割安で部屋を貸してくれているんだよ。本来なら、前のマンションより遥かに高いはずなんだけど同等額でね」

「そんな事があったの!?」


 引っ越した理由までは聞いてなかったし、なんで割と近くで引っ越してるのかが不思議だったけど、ご近所トラブルとかあったんだ……。姉さんの仕事は自宅でやってるんだろうし、大忙しになった時期にそういう事があれば大変だよね。


「そうそう、それと同じマンションにご同業の夫婦もいてねー! 確か、今は弟さんが大学に通う為に居候をしてるんだっけ?」

「葵、そういう事はあまり人には言わないように。それは個人情報だからね」

「あ、そうでした!」

「……あはは」


 相変わらず姉さんは口が軽いよねー。それにしても、姉さんの今住んでるマンションには同業者の方が住んでるんだ! それを知ってるって事は……もしかして、私の配信を見に来てる人の中にいたりするの!? ……正直、分かりません!


「んー、名残惜しいけどもそろそろ出ないとねー! 美咲ちゃん、夏休みになったら一度こっちに遊びに来る?」

「それは行きたい! あ、でも配信は……」

「あぁ、それなら僕の方で俊くんと相談して、こっちの環境ででも実行出来るように整えようかい? 配信用の仮想空間は流石に普段とは別物になる可能性はあるけども……」

「出来るんですか!? それならお願いします!」

「即答だね。それじゃその方向で調整しようか」


 この場には兄さんはいないけど、決定だー! 配信が出来なくなるのを気にしてたけど、姉さんの住んでるマンションに遊びに行きたいよ! ずっと変わる訳じゃないし、数日くらいなら配信用の部屋が変わっても問題ないよね?


「よーし! そういう事なら『サクラちゃん』用のとっておきのVR空間を――」

「その前に新しい仕事を片付けようか、葵」

「早めに仕事を片付けて、全力で作りましょうとも!」

「姉さん、それは待って!? なんかとんでもない物が出来そうなんだけど!?」


 なんか姉さんの気合が入りまくってるけど、止めないと変な事になりそうな予感!? 姉さん、お願いだから自重してー!?

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