第381話 ひたすら削って


 うがー! このカメ、硬過ぎるー! もう何回したのか分からないけど、放電で攻撃しまくってようやく2割削れたところ……。


「あ、萎縮が切れました!? というか、萎縮の効果がなんか長くなかったですかねー!? 『放電』『放電』『放電』『放電』『放電』!」


 なんか体感的にそんな気がする! 実際、どうだったかは分からないけど!


ミツルギ : 弱点に『知恵』もあったからな。効果時間が長くなる事もあるにはあるし、ここまで極端な偏り方をしてる敵だと、知恵は相当低いか?

富岳 : 場合によっては、Lv上昇以外では全く知恵が上がってない事もあり得る。『異常耐性Ⅰ』すら持ってない可能性があるぞ。

水無月 : それって確か知恵のスキルツリーの第2段階のスキルだよね? 無いとどうなるの?

咲夜 : シンプルに状態異常になりやすくなる! あと、相対的な知恵のステータスの差で、状態異常の効果時間が長くなったりしたはず!


「あ、そんな事ってあるんですね!?」


 体感的なものじゃなくて、本当に効果時間が長くなってたっぽい! そっか、知恵のステータスの差がそのまま効果時間に影響を与えるんだ! 


ミナト : サクラちゃんはその辺はもう既に体感してるはずだよー! 知恵のステータスが不足気味になって萎縮の効果時間が短くなった経験はあったでしょ?

いなり寿司 : 効果が真逆なだけで、理屈としては一緒だ。


「あ、そういう事になるんですね! それなら確かに体感してます! 『放電』『放電』『放電』『放電』『放電』!」


 知恵のステータスが不足気味になった時に、効果自体が出にくくなったり、効果時間が短くなってたりしてたもんね! そっか、そっか! 弱点と表示されても、どの程度まで弱いかまでは明確に分からない感じなんだ。

 んー、敵のステータスやスキルを見る事は出来ないって話もあった気がするし、その辺はあくまで推測だったりするんだろうねー。でも、さっきの萎縮の長さを考えると、知恵の差は相当ありそうなのは間違いないなさそう!


「その割には、中々麻痺はしてくれませんけどー!? 『放電』『放電』『放電』『放電』『放電』!」


 あ、カメが頭を出して、首で自分の体を持ち上げようとし始めた!? でも隙だらけってのも本当だ!


「起き上がらせはしませんよ! 『放電』『放電』『放電』『放電』『放電』!」


ミツルギ : 放電での麻痺は低確率だからなー。明確に知恵の差が出てる状況なら少なからず確率は上がってるはずだけど……これは運の問題?

こんにゃく : 仕様的にはそうなってるはずだし、何度か麻痺になってもよさそうな気はするけど……。

G : サクラちゃんは本当に今日はひたすら運が悪い日か?

真実とは何か : それが真実なのかもしれない……。


「そういう真実は嫌なんですけど!? 『放電』『放電』『放電』『放電』『放電』!」


 でも、普段よりも麻痺確率が上がっててもこれだけ麻痺しないって事は、本当に今日は運が悪いのかも!? うがー! このカメ、起き上がるなー!

 昼間の件で色々と偶然が重なって、ずっとあったモヤモヤが一気に薄れたし、そっちで運を使い果たしちゃった? うーん、まぁそれならそれで仕方ない気もするけど……。


「とりあえず起き上がるのは邪魔しておきましょう! 『振り回し』!」


 再使用時間が過ぎてたから、これでひっくり返ってるカメのお腹部分の甲羅を叩きつけるのです! 甲羅だと爪が弾かれそうな気がするから、こっちで! 岩みたいだから、硬そうなんだもん!

 ダメージはほとんどないけど、まぁ起き上がりかけてたのを妨害出来たからいいや! ふふーん、そのままずっとひっくり返ってるといいのですよ!


サツキ : サクラちゃん、ナイス!

神楽 : これって、いっそカメの上に乗っちゃうのはどうなのー?


「あ、それもありですね! ちょっとやってみましょう! えいや!」


 私だって乗られたんだから、乗り返すのもありだよね! という事で、カメの上にジャンプして着地!


「わわっ!? 私よりも小さいから乗りにくいです!? グラグラと揺らさないでもらえますかねー!? って、全然駄目ですよ、これ!」


 うがー! 乗れなくはないけど、上に乗ってバランスを取る事だけに集中しないと無理! これじゃまともに攻撃が出来ないから却下!


神奈月 : あー、うん。まぁそうなるだろうな。

いなり寿司 : 直球で言うけども……乗る前に、見てても分かる話。

神楽 : ……あはは? そう言われると、そうだったかも?


「……確かに勢いだけでやったのは失敗でしたねー。『放電』『放電』『放電』『放電』『放電』!」


 神楽さんの一言にそのまま乗っかっちゃったけど、よく考えたら分かる話だった! うん、焦らずに落ち着いて行動しよう! そうしよう!


「それにしても……本当に麻痺が入らないし、HPも中々削れません!」


 これだけ放電しても、まだ3割まで削れてないよ!? むぅ……これは凝縮した獅子咆哮か獅哮衝波じゃないとまともにダメージが与えられない感じ? どっちもそろそろ再使用時間は過ぎそうだから、それで攻撃をしていくしか……。


「あ、知恵が低いならこれならどうなんですかねー? 丁度、攻撃がまともに入りそうな頭も出てますし! 『双爪撃』!」


 折角だから、昨日解放した新スキルで攻撃だー! ライオンの両方の前脚の爪で、同時に一気に頭を切りつけるのですよ! なんか回数が多い方が、狙ってる事が上手くいきそうな予感!


「おぉ、成功です! 出血の状態異常になりましたよ!」


 やった! 狙ってた事、大成功! うふふ、知恵が低いのなら状態異常が効きやすいなら、この出血だって有効だよね!


サツキ : あ、出血! その手があったね! サクラちゃん、どんどんやっちゃえー!

水無月 : わっ!? 起き上がろうと動いてるから、その分でも出血のダメージが大きくなってるみたい!?

金金金 : なるほど、このカメには継続ダメージが有効か。

G : ここまで知恵が低いっぽいなら、確かに弱点中の弱点になるな。

ミナト : サクラちゃん、ナイス判断だよー!


「ふっふっふ、私だってやる時はやるのです! それに頭の方がダメージ自体も入りやすい……って、出血というか、継続ダメージが有効ならこれもありですよね! 『投擲』!」


 弾として使うのは、ここにランダムリスポーンしてくる前に補充してきた毒の実! ふふーん、沢山採集したから盛大に使っても大丈夫だもんね!

 身体を持ち上げようと必死になっているカメの頭に狙いをつけて、毒の実を弾き飛ばすのです! 相変わらず投げてる感じのしない投擲だけど、そこは気にしない!


「よし、毒も入りましたね! って、あれ? 『微毒』じゃなくて『毒』……わわっ!? こっちの方が毒性の強い毒の実なんです!? あ、さっき採集したのは『微毒』じゃなくて『毒』でした!? あ、地味に『麻痺毒』の毒の実も混ざってます!?」


 全然気付かずに『微毒』のつもりで、さっきの投擲の弾に指定してたよ! でもまぁより強力な毒だから、結果オーライ?


イガイガ : 気付いてなかったんかーい!

金金金 : なんで何の言及もないのと思ったけど、気付いてなかったのが理由か。

サツキ : サクラちゃん、使える毒の種類の確認は大事だよ?

富岳 : 昨日の実況外のプレイを見てると、まぁ実感出来る言葉だな。

ミナト : あはは、サクラちゃん、その辺は要注意ね!


「……それはそうですね。以後気を付けます!」


 姉さんに言われるまで気付かなかった麻痺毒が使えるようになってた事もあるし、この辺は要注意! まさか『麻痺毒』も『毒』も、採集出来る毒の実になってるとは気付かなかった!

 むぅ……アイテム名はどれも『ドクウツギの実』で変わらないから気付かなかった! 一応(麻痺毒)とか(毒)とか書いてたけども、完全にスルーしちゃってたよ! うーん、採集した元の木が違ってたはずだから採る木によって毒の種類が違う……って、あっという間に、出血と毒でHPが5割近くまで減ってるー!?


「なんか凄い速度で弱っていってるんですけど!? え、弱り過ぎじゃないです!?」


ミツルギ : これは……出血と毒の効果が切れないようにするだけで、後はのんびりしてても勝てそうか?

ヤツメウナギ : 確かにそれだけで勝てそう……というか、それ以外の手段だと時間がかかりすぎそうだな?

いなり寿司 : ひっくり返った状態から起き上がろうとして、動き回っているのも継続ダメージを増やしている要因だな。

咲夜 : 継続ダメージって、動けば動くほどダメージが増えるもんな!

ミナト : 真っ向から削るのは相当厄介な相手だけど、結果的には一番効果的なダメージの与え方になったみたいだね。あとは、仕留め切るまでその状態を維持だよ!


「あ、はい! ……それにしても、ひっくり返してから攻撃らしい攻撃ってしてきませんね?」


 攻撃されない方が楽だからいいけど、エリアボスがそれだとなんだか味気ない気もする? というか、なんで何もしてこないのー?


G : ぶっちゃけ、ひっくり返った状態自体が敵の攻撃の妨害みたいなもんだしなー! そうなった敵は、まず元の体勢に戻るのが最優先の行動パターンだ!

神楽 : まぁ普通はこの状況で攻撃は優先しないよね。

富岳 : ここまで知恵が低いとも思ってなかったが、良い結果になってるな。ただ、近接攻撃が苛烈になり過ぎると防御行動に移る可能性が高いから、そこには気を付けろ。……地味に放電の連発は対象外ではあるけどな。

ミナト : 溜め無しの放電は、1撃ずつの威力は低いからねー。まぁサクラちゃんの連発なら積み重ねで結構なダメージになるけど、判定的には防御行動にはなりにくかったり?

ミツルギ : その辺が放電の強みでもあるからなー。溜め攻撃や連撃数の多い連撃攻撃を仕掛けまくる方が、実は防御行動にはなりやすい。


「あ、そういう部分もあったんですか!? それじゃ元に戻りかけたらそれを妨害するのと、出血と毒を切らさずにいれば問題なさそうですね!」


 ふふーん、これでこのカメへの勝ち筋は見えてきた! なんか思ったよりあっけない気もするけど、こういう倒し方もありだよね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る