第380話 カメを相手に


 なんかイージーではレアで、戦いのは避けたくなるようなエリアボスが出現! でも、硬いだけでダメージ自体を与えられるのなら、倒して倒せないはずはなーい!


「あ、少しでもダメージを与えたいのなら、1段階目までは待っておく必要もないですね! えいや!」


 少しでもダメージを与えなければいけないんだから、動ける間は動いておくのさー! という事で、思いっきりジャンプをしてから爪を振り下ろす! 頭を狙いたいけど、引っ込めてるから無理だし、踏ん張ってる脚狙いで!


「わっ!? ぐふっ!」


 うぅ、カウンターで岩な甲羅で突撃してきたよ!? 結構大きなカメだから、思いっきり吹っ飛ばされた!?


「あ、でも思ったほどのダメージはないです……って上に乗らないでもらえますかねー!」


 うがー! 我が家で飼ってる犬ならともかく、カメに押し潰されて喜びはしなーい! ……私には全然懐いてくれないんだよね、我が家の犬。むしろ下に見られてる感があるから、私はあんまり構う事もないけど……。

 って、それはどうでもいいのですよ! とにかく今はこのカメを退かせて……って、重い!? わー!? 待って、待って!? 仰向け状態から上に乗られて動けないんだけど!?


金金金 : 巨大なカメにのしかかられるライオンと、それに慌てる狐っ娘アバター。今更ながら、相変わらずの奇妙な光景だ。

ミツルギ : 今のは『返しの突撃』だったか。ジャンプして攻撃したのが失敗だったな。

ミナト : ゾウガメほどは大きくはなってないカメだけど、それでも適応進化の【硬】があると重量も増すからね。まさかこんな状態になるとは思わなかったけど……。

咲夜 : 流石、サクラちゃん! これは予想外の展開!

いなり寿司 : 少なくともジャンプする必要は皆無だった。敵が何をしているかの判別自体は正解だったんだろうけど……。


「これ、どうやって起き上がったらいいんですかねー!? 脚が地面に付いてないから踏ん張れないですし、なんか降りてくれないんですけど!?」


 うぅ、いなり寿司さんも言ってるけど、ジャンプしたのが失敗だったー! カウンターの可能性があるのが分かってたんだから、思いっきり振りかぶって攻撃せずにちょこんと爪を当てる程度で良かったんだよね!?


「って、なんだか踏んできてる脚に力が入ってきた気がするんですけど、これって気のせいですかねー!?」


 なんか思いっきり攻撃しようとしてる気がするんだけど!? 待って、待って、待って! 今の状態、甲羅の一部しか見えないから! カメは私の上で、どういう方向にどういるの!?


富岳 : 脚に力が入った? この状態でなら……『重突撃』の溜めに入ったか?

ミツルギ : さっきのカウンターでサクラちゃんがかなり吹っ飛ばされてたから、『吹き飛ばし』の効果を持ってるのは確定だろうな。その次の『重突撃』も、成熟体……それもここまで偏りがある敵なら持っててもおかしくないか。

水無月 : そうなの!? でも、溜め攻撃なら先に発動してるサクラちゃんの方が早いよね!

金金金 : あー、そりゃそうか。何とか甲羅は見えてるんだし、それで何とか吹き飛ばせばいいだけだな。

G : それはまぁそうなんだが……この場合って、あれの効果ってどうなるんだ?

チャガ : あれというと、まぁあれだろうな。……どうなんだ?

こんにゃく : ちょっと前例を知らないな。攻略サイトでも見てくるか。

ヤツメウナギ : 調べても出てこないような気がする……。


「あれが何かよく分かりませんけど、今の状況からの脱出手段はそれしかなさそうです! 1段階目の溜めも終わりましたし、獅哮衝波、発射!」


 ともかく、のしかかってるカメをぶっ飛ばせー! って、カメの脚がライオンのお腹に踏ん張ってるみたいで、しがみついてきてる感じがする!

 ぎゃー!? 一気に動いた感じはするけど、それと同時に私のHPが一気に減ったー!? ちょっと待って、さっきのカウンターよりもダメージ量が多いんだけど!? うがー! ともかく起き上がって、体勢を戻すのさー!


ミツルギ : ……なるほど、『踏ん張り』の効果が出てる時に敵の上にいて、その状態で吹っ飛ばされれば、相手の表皮を削ってダメージになるのか。

ミナト : 色々やってきたけど、これは本気で初めて見るかも?

富岳 : 俺も初めて見たな。再現しようと思えば……いや、この手のエリアボスがそもそも遭遇しにくいか。

チャガ : 見つけるだけならヘルで簡単だろうが、ヘルでこんな状況を作るのは無理だな。その前に殺される。

G : だろうな。仰向けで腹の上に乗られた時点で、踏みつけられまくって殺されて終わり。


「なんか物騒な内容が聞こえた気もしますけど、とりあえず溜め攻撃は潰しておきます! 『咆哮』!」


 やった! ちゃんと溜め攻撃はキャンセル出来たし、萎縮も入った! ふぅ、とりあえずこれで一安心! 色々と焦ったけど、とりあえずはセーフ!


「……それにしても、『吹き飛ばし』にこんな効果あるとは思いませんでした! って、私も『踏ん張り』を持ってるはずですけど、なんで吹っ飛ばされてたんです!?」


神奈月 : ジャンプしてたからじゃね? 踏ん張れる場所じゃなきゃ、そもそも踏ん張れないぞ?

こんにゃく : まさか、敵の身体の上まで踏ん張れる対象とは思わなかったけど……いや、踏ん張り切れずに吹っ飛ばせたんだから、効果自体は薄めなのか。


「ジャンプして攻撃したのが、そもそもの間違いだったんですね!?」


 うぅ、変にジャンプして攻撃なんてするんじゃなかった! あ、でも今のでいい事を思いついた! ふふーん、ひっくり返って動けないのとか、ライオンじゃなくてカメで有名な話だもんね!


金金金 : 何か思いついた狐っ娘アバターの悪い笑み! さて、何をやる気だ?

サツキ : はっ!? なんとなく分かった!


「サツキさん、内容は言わないでくださいねー! さてと、萎縮になってる今のうちです! 『爪撃』!」


 怯んで甲羅の中に頭も手足も引っ込めてる状態のカメの甲羅の端に爪を引っかけて、真上に振り上げる! むぅ、持ち上がるには持ち上がったけど、ちょっと重くて勢いが足りないから、続けてこれだー!


「『振り回し』! これならいけます! えいや!」


 浮いた隙間に反対側の前脚で、更に振り上げてカメを垂直まで持ち上げるのに成功! ここまできたら後は飛び乗るようにしてカメをひっくり返すのさー!


「ふっふっふ、やりましたよ! カメのひっくり返し、成功です!」


 カメはひっくり返ると、自力では起き上がれないって話だもんね! これで私の身の安全は確保出来た! ……って、あれ? そもそも踏ん張られて、その反動でお腹を削られた以外は大してダメージは受けてないような気もする?


水無月 : おぉ! 見事にひっくり返ったー!?

サツキ : やっぱりそう来たね、サクラちゃん!

イガイガ : あー、カメだからひっくり返したのか。でも、自力で起き上がれるって話じゃね?

ミナト : 普通に起き上がってくるよ? 首でグイっと自分を持ち上げてブリッジをする感じだね。リアルなら重量があると起き上がれないけど、モンエボではどんなサイズでも起き上がってくるよー。

ミツルギ : まぁその間は隙だらけだから、ありな手段ではあるぞ。ただし、『返しの突撃』を発動されたら、その効果で体勢が変わる点は要注意だ。


「え、カメって自力で起き上がれるんです!? というか、そういう回避方法もあるんですか!?」


 絶対に起き上がれないと思ってやったのに、まさかの復活方法が存在してたよ!? でも、隙だらけになるならそれでも十分! ……まだHPは1割くらいしか削れてないけど、ここからは私の一方的な攻撃タイムなのですよ!


「萎縮の間にひたすら攻撃です! 『放電』『放電』『放電』『放電』『放電』『放電』!」


ヤツメウナギ : 探せば、一応あるもんだな。『踏ん張り』の効果は、基本的には地面に脚が着いてないと駄目だが、敵の上だろうが踏ん張れる場所なら半分程度の効果は出るとさ。そして、その場所を痛める効果はあるとの事。

ミツルギ : あったのか、今の状況に当てはまる情報!?

金金金 : その場所を痛める効果……それが、サクラちゃんの受けたダメージか。

ヤツメウナギ : 情報があったのは、アクセス数がほとんど無さそうな個人サイトだったぞ。敵の上って事で変に考えてたけど、要は泥濘で踏ん張れずに滑るようなもんだとさ。この場合、地面の形状が変わるほどに痛んでいるって判定か。

ミナト : あ、シンプルに考えたらいいんだね。プレイヤーの身体も、敵の身体も、その判定と同じ要領でダメージが算出されるんだ。

富岳 : イメージとして繋がってなかっただけで、効果自体は既に知ってたようなもんか。まぁ敵に乗られて、踏ん張られる状況自体がないからな。

チャガ : 敵に乗る事もあるにはあるが、それで吹き飛ばされる事もないか……。

咲夜 : 木を倒して乗る事はあっても、根で刺されたり、根で掴まれたりだからなー。うん、吹っ飛ばされる事は確かにない。


「そういう情報もあったりするんですね! って、本当にHPが減りませんね、このカメ! 『放電』『放電』『放電』『放電』『放電』『放電』!」


 うがー! まだ1割ちょっとしか削れてないよー! うぅ、今は萎縮になってるから起き上がる素振りもないけど、萎縮が切れたらどうなるの!?

 でも、このカメを倒すと決めたんだから、意地でも削っていくしかないね! とりあえず今は回復速度よりもダメージ量の方が上回ってるから、ひたすら攻撃あるのみだー!

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