第277話 堰き止められた川


 私は知らない間に川を堰き止めていたっぽい! あわわっ!? これってどうしよう!? 堰き止めてる木々を吹っ飛ばして、流れを元に戻した方が良いの!?

 とりあえず疾走が止められなくて駆け抜けたけど、方向転換をして急加速と減速を何回かして効果時間を使い切ってから川の場所まで戻ってきた!


「……私、盛大にやらかしましたかねー?」


 むぅ、川の上流は堰き止められてて、西側の木々は無事だけど、東側の木々は全焼になってるよ。獅子咆哮で吹っ飛ばしちゃったのが、かなり悪影響っぽい?


金金金 : 困惑する狐っ娘アバター。まぁこうなってるとは思わなかったなぁ……。

ミツルギ : 川の方へ吹っ飛んでいってたとは思ってたが、ピンポイントで川の上に行くとはなー。

ミナト : 川の手前の木々で止まるかなーって思ってたんだけどね。サクラちゃん、獅子咆哮の影響は少なからずあるにあるけど、状況的にそれが主な原因って訳じゃないよー。


「え、そうなんです?」


 それなら良かった! この惨事は私だけの責任じゃない……って、だったら何が原因なのー!?


水無月 : んー? サクラちゃんが原因じゃないなら、何がどうしてこうなったの?

こんにゃく : これはあれだな。川の真横の木まで、火事で燃えちまってる。

名無しのカカシ : おーっす! って、なんか大惨事!? あー、火事の跡っぽいけど、今回は強風な天候?

咲夜 : いや、普通に快晴。巧みなキツネ2体がきっかけで、火事が発生したぞ!

真実とは何か : それが真実なり!

名無しのカカシ : あー、何となく状況把握。火種が多かった方か。

ミナト : 火事の範囲が川まで及んでて、それで燃えて倒れた木々が堰き止めてる感じだね。木々の残骸は川より手前の方に結構あるし、獅子咆哮で吹っ飛ばした分はそんなに堰き止めの要因にはなってないと思うよ。

富岳 : 直接的な原因は、火事で燃えて倒れた木だな。


「なるほど、そういう感じですか!」


 そっか、そっか! 火事が行きつくとこまで行きついてたのが原因だったって感じなんだね! 火事自体に私に一因があるとはいえ、あれ自体は避けようもなかったし! うん、そういう理由なら気にする必要はなーし!


「えっと、この堰き止めてる部分は破壊して流れを戻しておいた方が良いんですかねー?」


 私に問題がなかったというのであれば、気になるのはその部分! 獅子咆哮か獅哮衝波で吹っ飛ばして除去は出来ると思うけど、シンプルにそれが必要なのかが気になるよ!


サツキ : そこはどっちでもいいやつー!

咲夜 : だなー。どっちでもいい。

いなり寿司 : ……適当そうに聞こえるけど、大真面目に好きなようにしていいぞ。

富岳 : 放置すればどこかのタイミングで勝手に決壊して、流されて元に戻るだけだしな。サクラちゃんが壊しても、壊さなくても、最終的な結果自体は変わらん。

ミツルギ : 違いがあるとすれば、ここでサクラちゃんが破壊した場合は……木々の残骸や堰き止められた勢いのある水が下流にいる敵へのダメージになる。サクラちゃんが攻撃したって事でな。


「それ、私が攻撃したって事になるんです!?」


 わー、そういう可能性もあるんだー。姉さんが咲夜さんがどっちでもいいとは言ってるけど、放っておいても勝手にいつか元に戻るし、壊してもその過程で敵への攻撃になる事を除けば、結果的には同じになるからなんだね。

 うーん、どうしよう? この川の下流……今は堰き止められてほぼ水は無いけど、敵の位置って分からないんだよね。どれだけの敵を巻き込むか分からないし、ここは控えておくべき? でも、進化ポイントは欲しい! スルーして川の上流に行くのは出来るけど……うん、決めた!


「ここより下流なら私より格下ですし、乱戦覚悟でやっちゃいましょう!」


 という事で、堰き止めてる少し上流の方へ移動! わー、小規模だけど、自然に出来たダムって感じだよねー! これを壊すなら、獅子咆哮と獅哮衝波のどっちが良いんだろ?


金金金 : この場合の破壊なら、獅子咆哮と獅哮衝波のどっちが良いんだ?

G : 獅哮衝波で範囲を絞った方が良いんじゃね? 獅子咆哮だと、途中でまた堰き止める可能性もあるし。

チャガ : だな。堰き止めてる木々そのものをピンポイントで壊してしまった方が良い。


 おー、私が疑問に思ってた事を金金金さんが聞いてたね! そっか、木自体を細かくしないと、また同じ事が起きるんだ! なるほど、なるほど! それなら獅哮衝波で、ピンポイントで抉り取って破壊し切った方が良いんだね!


「それじゃこっちで破壊しますねー! 『獅哮衝波』!」


 そんなに遠距離を攻撃する必要もないし、今回は1段階目まででいいよね! もしそれで破壊規模が足りないなら、何回か繰り返してやれば良いだけなのさー!


咲夜 : こうして破壊慣れしていくサクラちゃんなのであった。

ヤツメウナギ : まぁ、モンエボをやってりゃそうなる。

こんにゃく : 確かになー。絶対に破壊しなきゃいけない訳じゃないけど、その方が楽ではあるし。

富岳 : オフライン版でこういう仕様なのに、なんでオンライン版の初期はあんなに荒れたのやら……。

ミツルギ : よく考えたら、巻き込む可能性は普通にあるもんな。

ミナト : ……人の悪意って嫌なもんだよね。

G : あー、他人の邪魔をする目的で裏で揉めるように誘導してた奴がいたんだっけ。あれは本当に迷惑な話だ。

神奈月 : 何も違反はしてないんだろうけども、Gさんが言うのは説得力に欠ける。

咲夜 : それは確かに。

G : なにおう!? 俺は何も違反はしてねぇぞ!? あんなのと一緒にしないでもらおうか!

こんにゃく : そこが厄介なんだよなぁ……。

サツキ : んー? いまいち話が分かんないね?


「そうですねー? オンライン版って、何か問題でもあったんです?」


 Gさんが害虫でプレイしてて他の人を驚かしてるみたいなのは今まで聞いたけど、それとは何か違う雰囲気っぽいよね?


ミツルギ : あー、オンライン版は3つの勢力に所属分けがされてるんだけど、こういう破壊行為に巻き込まれたのにキレまくったり、他人に好き勝手な事を要求しまくるって勢力があってな。それでサービス開始から少しした頃に……まぁ色々と対人トラブルがな?

イガイガ : 単純に言えば、仲間割れしまくった集団と、仲間割れしない集団に分かれた! そして、仲間割れした1つの勢力の裏には扇動した黒幕がいたって話。


「もの凄く嫌な話ですね、それ!? オンラインゲームって、怖いですね……」


 他人に好き勝手な事を要求……うん、それって私も1つだけやったオンラインゲームで経験した気がする。私はゲームは、やっぱり自分のペースで楽しみたいなー。


ミナト : まぁ今はその辺は解消してるけどねー。

ミツルギ : 上手く噛みあった勢力が、勢力同士の大規模な集団での対人戦で完全に一強状態になった時期もあったからな。まぁ今でも強いのは変わらんけど。

G : ここのコメントをしてる中でも、そこの所属にしてる人もいるはず。

いなり寿司 : 地味に全勢力が入り混じってるだろ、ここのコメント欄。

水無月 : そうなの!?

ミナト : あはは、そうだろうねー! 名前が一緒な人で心当たりもあるし。

富岳 : そういう言い方だと、ミナトさんは名前が違うのか?

ミナト : そこは教えられないよねー。


「何気に凄い状況なんですね、私の配信のコメント欄!?」


 オンライン版のモンエボは勢力分けされてて、それぞれの人達が入り混じってるんだ! というか、大規模な集団での対人戦とかもあるんだね! なんかオンライン版って、このオフライン版とはかなり違ってそう。聞いてる感じだと、破壊に巻き込まれるのが前提なのかな?


「あ、いつの間にか2段階目の溜めまで完了しちゃってますし、もう使っちゃいますね! 獅哮衝波、発射です!」


 溜めを待ってる間の雑談はここまで! 狙いは堰き止めてる木々の中でも、一番丈夫そうなど真ん中のやつ! あれを抉り取ってへし折るのですよ! 1段階目までで止めるつもりだったけど、まぁいいや!


サツキ : サクラちゃん、いっけー!

金金金 : 地味に2段階目での発動は初か?

咲夜 : あ、そういやそうか。


 そういえばそうだった! まぁそこは気にしないって事で……わー! 堰き止めてる木々が盛大に抉れて、決壊して水が一気に――


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


「……何かを仕留めたみたいですけど、何を仕留めたんですかねー?」


 2段階目の獅哮衝波だけで倒せる敵もいるんだ? 流石に即死は無理な気がしてたんだけど、そうでもなかったっぽい。何を倒したのかが分からないけど!

 ともかく、これで川は元通りに流れていってるはず! 敵は……わー、マップを見てみたら、赤い印が下流の方に4体くらい表示されてるよ。でも、どんどん遠ざかっていくね?


「これ、敵が思いっきり流されてます?」


いなり寿司 : 鉄砲水に打たれたようなもんだしな。体格の良い種族なら耐える場合もあるけど、小動物系ならそうもなる。

富岳 : 耐えた場合が厄介だったが、その心配は必要なさそうだな。

ミナト : ちなみに今、サクラちゃんが仕留めたのはLv17の巧みなリスだねー! 一気に流れ出した川の水と、一緒に流れた木々にぶつかりつつ、獅哮衝波の余波も受けて死んだ感じ。

水無月 : リス、いたんだ!?

イガイガ : 気付かなかった……。

咲夜 : 相変わらずの観察力!


「そういう感じだったんですか!」


 そっか、さっき倒したのはリスだったんだ。ミナトさんが把握出来てるって事は私にも見えてたはずなんだけど、分かんなかったよ! 咲夜さんも言ってるけど、ミナトさんのその辺の観察力は流石だね!

 それはそうとして、下流に流されていってる敵はどうしよっか? うーん、わざわざ仕留めに動くのも面倒だし、放置でいいかな? うん、そうしよう! それじゃ上流に進んで、水源の場所まで行くのさー! どんな場所かなー?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る