第278話 水源に向かって


 ふふーん、堰き止められてた川は……多分元通り! 元を知らないから断言できないけど、堰き止めてた燃えた木々の残骸は撤去できたからそれでよし! 


「さてと、下流の流された敵は放置して上流に向かいましょう!」


 乱戦を覚悟してたけど、流されちゃって私の方にやって来る気配がないからスルーで良いや! 私の目的地はあくまで、この川の水源!


サツキ : あ、スルーなんだねー!

いなり寿司 : まぁあっさり流されるサイズの種族ばかりだったみたいだしなー。

ミツルギ : わざわざ倒しに行くのも面倒なのは分かる。


「そうですよねー! という事で、出発です! 川のすぐ近くなので、疾走は使わずに行きましょう! あ、こっちは使わないとですね。『看破』!」


 どうしても川の近くは滑りそうだし、ここは焦らずじっくりと進む! それにしても、油断するとちょいちょい看破の効果が切れてるよね。看破は大事だから、そこは出来るだけ切らさないように気を付けよー!


水無月 : どんな水源なのかなー?

金金金 : 川を見た感じ、渓流エリアの湧き水よりは水量がありそうだ。

サツキ : その辺は行ってのお楽しみ!


「確かにそうですよねー! 渓流エリアにあった沢よりもこっちの方が水量は多いですし、楽しみです!」


 さっきまでは堰き止められてたからよく分からなかったけど、一気に流れた後で見た感じは思ったよりも相当水量は多かった! うん、それだけ水が堰き止められてたって事だから、そりゃ下流にいたら流されるよね!

 というか、そもそも川の雰囲気自体が渓流エリアとは全然違う! 流れが緩やかだから水草がいっぱい生えてて、緑でいっぱいだー! のどかな森の中の風景って感じ! あ、実際その通りの場所なのかも?


「あ、川の中にも敵はいますねー。強烈なヤマメに、巧みなイワナですか。どっちもLv18ですけど、どうしましょう?」


 ここなら渓流エリアみたいに次々と補充されていくって事はなさそうだし、ちょっと戦ってみるのもあり? でも、普通に先にも進みたいから悩みどころだよね。


ミナト : そこはサクラちゃんの自由でいいとこだよー!

ミツルギ : まぁ少しLvが離れてきてるから、経験値を重視したいならスルーでも問題ないしな。

神奈月 : 自分の方がLvが上になると経験値は減ってくるし、進化ポイント稼ぎだけを狙うには近過ぎるLv帯!

真実とは何か : それが真実である!


「確かにそうですよねー! あ、それならこれならどうですかねー? 『放電』を最大まで溜めで!」


 まだ試してなかった、Lvが上がった事で溜め時間が伸びた放電の最大威力を使う時! 今見えてるヤマメとイワナはスルーするけど、水源の場所までに他の敵もいるはずだもんね。その時までに進みながら、最大まで溜めていこー!


チャガ : あぁ、そういえばまだ最大までは試せてなかったか。

サツキ : そういえば、器用のステータスが上がったから、更に威力が上がってるんじゃない!?

G : あー、確かにそうだな。

水無月 : おー!

富岳 : これ、かなりの威力になるんじゃないか?

ミナト : かなり器用が高くなってるし、相当違うと思うよー!


「あ、そういえばそうなるんですね! それは威力に期待です!」


 そっか、そっか! 放電の威力の強化にもなるからって理由でも器用の解放を優先したんだったもんね!

 ふふーん、だったらその威力は確認しないとですよ! まぁまだ放電の最大までの溜めは時間がかかるし、のんびりと川を進んでいこー!


「そういえば、この川に中にある水草って採集出来たりするんです?」


ミツルギ : ん? もっと川の下流なら川岸に採集出来るのは結構あったりするけど、流石にこの辺の上流の川の中だとそんなにないぞ。

ミナト : 川の中……完全な水中の中だと微妙だね。全くない訳でもないんだけど、川岸とかの方が採集もしやすいし、数はあるよー! あえて水中で狙うのはワサビとかレンコンくらいかな?

咲夜 : まぁ川岸の草系ってシレっと毒草が混じってたりもするけど……。いや、川岸にも限らないか。

水無月 : そうなの!?

いなり寿司 : 毒持ちの植物の敵も、当たり前のように植わってるぞ。


「それは嫌ですね!? うーん、なんかありそうな気もしたんですけど、そこは残念です……」


 全く存在しない訳でもないみたいだけど、あんまりいい状態ではないみたいだね。まぁ川の中を進む事になるし、放電を溜めてる最中の今は意味がない気もするから諦めよっと。

 それにしても、サラッと毒草が紛れてるのは怖いね! 毒の果物と違って、毒草は敵に食べさせるの自体が難しそうだし……。


「あ、放電が最大まで溜まりました! 結構時間がかかりましたねー!」


 正確に時間を測ってた訳じゃないけど、体感的には獅子咆哮の溜めよりちょっと長かったくらい? 獅哮衝波の2段階目よりは短かった気はする! まぁそこそこ時間がかかるって事は分かった!


「さーて、川に敵は……あ、Lv19のヤマメを2体発見です! どっちも機敏ですね!」


 水の中では素早いんだろうね、このヤマメ達! でも、そんなのは私には関係なーい! 完全に距離を無視した、私の今の最大威力の放電をくらえー!


「それでは放電開始です!」


 水を伝っていくんだから、移動の素早さなんで無視ですとも! おぉ、一気にヤマメのHPが削れたね! 今ので、どっちもHPの7割くらいが吹っ飛んだ!


ミツルギ : ん? 思ったよりも威力が低い……?

ミナト : あらら、これは他にも電気が流れちゃったかな? あ、やっぱり。

水無月 : あー! なにか出てきた!?


「わっ!? 大きなカニが出てきました!? こんな上流までいるんですね!」


 このカニ、カラメル河川域で見かけたカニと同じ種類のやつだー! 確かモクズガニだっけ? うん、確かそんな名前のやつ! このカニは、強烈なカニでLv20……既にHPは7割を切ってるけど、なんだか嫌な予感!


「ちょっと距離を取った方が良いがします!」


 白い模様になってるハサミを持ってる強烈なカニとか、どう考えても嫌な気がする! 絶対、そのハサミで挟んでくるよね! 今は距離を取って、放電を連発……って、放電は最大まで溜めて使ったばっかだったー!?


「わっ!? このカニ、相変わらず動きが速いですね!? 『獅哮衝波』!」


 とにかく近付いてくるカニから距離を取りつつ、次の攻撃の準備! 下手に近付かずに倒し切った方が良い! 前に戦った時とは進化階位が違うけど、この素早さは種族固有の物だったりする? うん、その可能性はありそう!

 ヤマメ2体は……なんだろ? 水の中から出てくる気配はないっぽい? うーん、勝手に陸地に打ち上がって弱ってくれたら嬉しいんだけど、未成体まで進化したらそんな自滅はしてくれなくなっちゃった? まぁ今はカニを優先して放置でいいや。


水無月 : これ、ヤマメ達は放っておいても大丈夫なの?

ミツルギ : あー、今のところだと何とも言えん……。

富岳 : ただ単純に攻撃手段を持ってない場合もあるんだが、今回はどうなのかが分からん。

いなり寿司 : 知恵が上がっていると自滅行動はしにくくなるからなー。

ミナト : 俊敏系統以外のスキルで、何を持ってるか次第だねー。


 うーん、ヤマメ達については俊敏のスキルツリーでの攻撃以外に注意しないと――


「わっ!? このカニ、脚を挟まないでくださいよ!?」


 うがー! カニからの攻撃は避けてたつもりなのに、少し意識を逸らしたら一気に距離を詰められて思いっきり脚を挟まれた! うぅ、凄まじい勢いでHPが減っていくんだけど、獅哮衝波の溜めは……あと少し!


「離さないのなら、こうですよ! えいや! えいや!」


 近くにあった岩に、カニをひたすら叩きつけていくのみ! 多分、これは私の噛みつきと一緒で効果が切れるまでは離せないやつ! だから、私の今の攻撃からは逃げられない! カニからの攻撃が痛いし、私自身が逃げられてないけど!


「溜めが終わりましたし、これでトドメです! 獅哮衝波、発射!」


<未成体を撃破しました>

<進化ポイントを1獲得しました>


 ふっふっふ、この至近距離から外す訳がなーい! とりあえずこれでカニは撃破完了! さーて、次はヤマメだけど……って、わわっ!?


「なんか片方のヤマメの口から放水されてるんですけどー!?」


 何これ!? ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って!? 口の中から水を吐き出してるけど、どう考えても出てくる水量がおかしい……って、そんな事を考えてる場合じゃなーい! 回避、回避ー!


「わわっ!? 追いかけてきてるんですけど-!?」


 ぎゃー!? これ、多分当たると危険なやつ! ともかくひたすら逃げて避けるしかないよねー!


ミツルギ : 片方は器用の溜め攻撃を持ってたか。

金金金 : ん? メダカが使ってた『魚雷化』とは別物か?

富岳 : その辺は器用の別ルートのスキルだな。今回のはサクラちゃんの『獅子咆哮』と似たような系統のスキルだぞ。

金金金 : あー、なるほど。


「これ、その類の攻撃なんですね!?」


 獅子咆哮と違って、放水し続けてる部分は違うけども! どっちかというと、これって連撃じゃない!? これを単発攻撃とは認めたく――


「ぐふっ!」


 何か大きな水の塊が吹っ飛んできたけど、今のはもう1体のヤマメからの攻撃!? って、考えてる余裕はないよ! HPが半分を切ってるし、すぐに立ち上がって……ぎゃー!? まだ放水が続いてるし、水の弾がどんどん放たれ始めたから、回避、回避、回避―!? 水中からでも充分危険だよ、このヤマメ達!

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