第248話 切り拓いた先には


 地味な、本当に地味な森を切り拓く作業を続けながら、ちょっとずつ前に進んでいく。うぅ、面倒だよー。獅子咆哮で一気に吹っ飛ばしたいよー! 看破で見つけた敵を避けながらの作業だから余計に面倒だよー!


「あっ、この先が少し明るくなってますね! 『爪撃』『連爪』!」


 やった、希望の光が見えた気がする! これで脱出になれば良いけど……さて、切り倒した木の先はどうなってるんだろ? あ、完全に道が切り拓けた!


「いやっほー! これで脱出完了です! わっ!? ぐふっ!」


 って、思わず駆け出したら、すぐに段差になってて落ちたー!? うぅ、折角脱出が上手くいったと思ったら、いきなりそれなの!?


サツキ : サクラちゃん、落ち着いてー!

金金金 : 気持ちは分かるけど、慌てすぎだぞー。

咲夜 : まさか落ちるとは……。


「痛た……確かに慌てすぎましたね。でも、いきなり段差があるとは思わなかったですよ……」


 それに拓けたところに出た感じではあるけど、特にめぼしいものは見当たらないよ? うーん、まぁ沢はあるみたいだし、ちゃんと通れる場所に出れただけ良しとしないと駄目かな? 


ミナト : ここには段差は無かったはずなんだけど……あ、ちょっと位置がズレちゃったかな? そっち側に出たんだね。

ミツルギ : この感じだと西に進んだ方が良かったっぽいな。

富岳 : 上側に出てたっぽいし、そうかもしれん。

チャガ : 未踏破でのマップ情報だから、多少の誤差が出たか。


「えーと、どういう事です?」


 ズレがあるかもしれないって言ってたけど、今の段差ってそれに関係してるの? 確かに期待してたほどの何かはなかったけど……って、ちょっと待って。そういえばなんか割と近くから水音が聞こえてるような?

 えっと、この水音はどこから聞こえてるのかな? ここ、ランダムリスポーンする前にいた湧き水のとこよりも広いけど、その水音? うーん、違う気がする。そうなると、まだ見てない部分? 見てない部分と言えば、私が落ちた段差の方なのかな? とりあえずちゃんと立ち上がって、振り向いてみて……。


「わっ!? 規模はそんなでもないですけど、滝がありますよ! 滝! あー! 虹もかかってます!」


 私が落ちた部分の西側に2メートルくらい先の部分に滝だー! その下に少し水が溜まって、そこから沢になって流れ出してるっぽい! そっか、段差があったのって、この滝があるからなんだ!


水無月 : わー! 虹がかかってる滝だー!

金金金 : ほほう、こりゃいい景色だな。


「そうですよね! これはスクショと取っておきましょう!」


 この景色は今日のサムネイルの有力候補! 滝の真正面に移動してから、スクショを撮るぞー! ……うん、撮れた!

 ここまでの移動は面倒だったけど無事に脱出出来たし、良かった、良かった! でも気になる事もあるよねー!


「これ、もしかして滝の上側に湧き水があるんです?」


 なんとなくだけど、皆さんはそっちの方に案内してたような気がする! 元々誤差はあるかもって話だったし、ズレたっぽいみたいな事も言ってるもんね!


ミナト : うん、その上側に湧き水があるよー! そこから沢を伝って今いる場所にって思ったんだけど、ちょっと位置がズレちゃったね。

富岳 : 流石に全くの未踏破状態で、あの身動きが取れない場所だと正確な位置が分からなくてな。不正確な情報ですまん。


「いえいえ、そこは問題ないです! こんないい景色を見れたのに、文句なんてありませんよー! でも、なんで獅子咆哮だと駄目だったんですかねー?」


 そこが地味に気になってるとこ。敵が集まり過ぎて危険っていうのはあったとは思うけど……というか、普通にLv16のトカゲとかいて、戦闘にならないように気を付けてたけど。単純にその辺が理由なのかな?


いなり寿司 : 出る場所は湧き水の方を想定してたから、下手に吹っ飛ばせばそこの滝までの流れが途切れたり、変わってた可能性がある。

サツキ : そうなの!?

水無月 : それは色々と台無しだー!?

イガイガ : 根本的に水量は少ないからなー。ちょっとした事で影響が出る部分。

ミナト : もう説明してくれたけど、まぁそんな感じの理由だねー! 折角ならここの滝、見ておいて欲しかったしねー!


「そういう理由だったんですか! お気遣いありがとうございます!」


 そっか、そっか! 獅子咆哮でまとめて吹っ飛ばしたら、この滝が台無しになってた可能性があるんだ! 結果的には位置がずれてて問題なかった感じもするけど、まぁそこはズレてる可能性を考えたら避けるとこだよね! 獅子咆哮で大丈夫だったなんてのは、あくまで結果を見てからだから言える事!


咲夜 : まぁ結果的には獅子咆哮でも良かった気はするけどな。

G : 途中で結構敵がいたぞ? サクラちゃんよりLv高いのばっか。

イガイガ : 獅子咆哮を使ってたら、袋叩きだったかもなー。湧き水の効果って、湧いてすぐのとこじゃないと意味ないし。

名無しのカカシ : あー、ここが出口だったなら、ただ格上の敵と乱戦をするだけになってたのか。


「そういう危険性もあったんですね!? やらなくて良かったです!」


 何体かは私も敵の姿は確認したけど、確かに全部私よりも格上だった! うん、ここまで来れたとしてもまた死んでそうだし、それ以前に辿り着く前に死んでたかも! やらなくてセーフ!


「折角なんで滝の上の湧き水も見てきましょうか!」


 折角近くまで来てるのなら、湧き水も見ておきたいもん。でも、これってどうやって登ればいいのかな? 水で濡れてるから、普通にジャンプしたら滑りそうだよね。


「……これ、どうやって登ったらいいんです?」


サツキ : 滑るの覚悟で、ジャンプだよ、サクラちゃん!


「大真面目に聞いてるので、茶化さないでもらっていいですかねー!?」


 姉さん、適当な事を言うのは止めてー! 滑って転びたくないから聞いてるんだし、それ以外の真っ当な手段を求めてるんだよ!


サツキ : 大真面目なのに……。サクラちゃん、酷いんだー!

ミツルギ : サクラちゃん、大真面目にそれが1つの手段なんだよ……。

G : ふざけてるように聞こえるけど、本当に大真面目にそれが手段の1つ。


「えぇ!? そうなんです!?」


 待って、待って!? さっきの姉さんのって、適当な事を言ってた訳じゃないの!? それなら謝っとかないと駄目だよね!? うぅ、まさかの真面目な案だったなんて思わなかった!


「わー!? サツキさん、今のはごめんなさい!」


サツキ : ぐすん……。いいよ、いいよ。私は真面目なアドバイスとか出来ないもんね……。

金金金 : あ、拗ねた。

いなり寿司 : まぁ今までの事を考えると、サクラちゃんの反応も分からなくはない。

富岳 : 割と自業自得だよな。

水無月 : みんな、辛辣だね!?

咲夜 : いつも大体こんなもんだよ。

サツキ : うわーん! サクラちゃん、みんなが辛辣だよー!


「あれ!? そこで私に来るんです!?」


 って、これは姉さんが拗ねたふりをしてるだけのやつだー! うん、そういう反応になるなら特に問題なさそう! 姉さんが本気で怒ってたら、こういう反応じゃないもんねー! 怒ったら黙って完全スルーになるもん。


サツキ : うぅ、私だって真面目なアドバイスは出来るもんね! サクラちゃん、その辺の木を切り倒して足場にすればいいよ! そんなに高くないし、それで行けるもん!

ミナト : うん、それがもう1つの手段だねー!


「他にあるなら、そっちを先に教えて欲しかった気もしますけどねー!?」


 そういう他の手段を知ってて、なんで敢えて滑る方の手段を言うんだろ? うーん、姉さんの思考はいつも謎だよね。まぁいいや、滑るのを覚悟するよりはそっちが良い!


富岳 : 滝の上に行ったら、そこからはランダムリスポーンする前の沢でやってた移動でいいぞ。


「あ、はい! とりあえず木を切り倒すとこからですね! 『爪撃』!」


 もう切り倒して足場にするのが前提みたいな感じで、丁度いい位置に丁度いい木が植わってるからこれを切り倒そう! というか、どう考えてもこれを切り倒せって事で設置されてるっぽい! うん、上手く滝の上への道が出来たー!


「さーて、それじゃ出発……です?」


 あれ? 今、ちょっと何か想定してなかったものが見えた気がする? えーと、倒れた木から何かジャンプしてたよね? 見間違いじゃなければ、多分今のって……やっぱりいた。


「なんでこんなとこに、エリアボスのカエルがいるんですかねー!?」


 ちょっと待って、ちょっと待って!? ここでLv14の強烈なカエルが出てくるとか想定外なんですけどー!? 渓流エリアなのに、なんで森の中でエリアボスに遭遇するの!?


金金金 : へぇ、てっきり水中かと思ってたけど、森の方に出てくるのか。

ミナト : そこは運次第だねー。渓流エリアなら水中の方が確率は高いけど、両生類ならどっちでも水中でも陸地でも出てくるからさ。

ミツルギ : まぁ昨日の湿原エリアの蝶よりは珍しくはないな。

いなり寿司 : むしろ、陸で遭遇する場合だと、カエルは割と普通のパターンじゃね?

咲夜 : 水中に出現してたなら、遭遇せずに素通りって事もあるしなー。


「言われてみれば確かにそうかもですね! いきなりですけど、エリアボス戦開始です!」


 遭遇した以上は戦うしかないよね、これ! Lv的には差は無いし、時間を飛ばした影響はエリアボスには出てない範囲。急な出現で慌てたけど、決して勝てない相手じゃない!

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