第43話 亜人救出作戦①
プルルルル
プルルルル
「ラニャ、流石に寝たよな……あの様子じゃ……」
ラニャは出なかった。きっと寝ているし
流石に迷惑をかけてしまうので電話は切った。
最後のカード。この時間に起きてるのは、酔っ払いの友達。ドワーフのナタリアだけだった。
プルルルル
ガチャ
「はい、こちらドワーフ工房」
声の主はナタリアと共に暮らす機械人形の哪吒太子だった。
「ああ、俺だ。エルフのリリー。ナタリアはいるか?」
「リリーか。博士は酔っ払ってるがかろうじて起きてるぞ。代わるか?」
「ああ、代わってくれ。」
「了解。」
ガチャ
「はいはーいリリー?珍しいわねぇ~あたしに電話してくるなんて。しかもこんな時間にさ~」
「悪いな晩酌中。緊急事態なんだ。」
「?なに~?ラニャに相談じゃだめなの~?」
「いや、多分ラニャは疲れて寝てる。頼む、友達のお前が頼りだ……」
「ふーん。結構深刻なんだ~いいよ~」
「ありがとう!今度いい酒おごるから!」
「その時はつきあってよ~?」
「ああ。哪吒に変わってくれるか?」
「んー?はいはーい。」
ガチャ
「哪吒だ」
「すまん!今からそっちに向かうから博士を起こしといてくれ!」
「寝させなければいいんだな?」
「そうだ。」
「了解。」
「よろしく。」
ガチャン
リリーは疲れた身体を奮い立たせる。
そして、ラニャにもらったボウガン、矢筒、狩り用の全身装備(冬の長期戦用)。
完全武装で家を出る。
「カラム!鍵を閉めて、人が来ても誰も出なくていいからな!朝には帰る!」
「はーい!」「行ってらっしゃーい!」「頑張ってね~」「ばいばーい」
「ああ。」
覚悟を決めて家を出る。
向かうはナタリアの工房。
~ナタリアの工房~
「はぁ……はぁ……」
「走ってきたのか。よっぽどだな。」
「ほら、タオル。これで拭きなさい」
「すまん。」
リリーは走ったり跳んだりしてここに来た。事は急を要する。
「で、緊急事態ってなんなのよ?リリー」
「て、テトラが……」
二人に事情を説明する。
「なによそれ……」
「悪党のやり方だな。」
「とにかく、人手がいるんだ。頼む!!」
「んー、まあ私たちに頼んだのは多分最善手よ。だってここには哪吒がいるもの。」
「え?」
「ねぇ?哪吒太子?あなたなら戦闘も探索もお手の物よね?」
「まあただの人間相手なら負ける理由はねぇな。」
「だよね。よしリリー、そいつらの特徴を教えてちょうだい?」
「お、おう。」
「鎧の騎士三人に、荷台付きの馬車ね。こんな夜中に動いてるやつらならすぐ見つかりそうだけど。いける?哪吒?」
「ああ。いけるぜ。」
「よし!じゃあ、哪吒太子発進!」
バシューン!!
哪吒は凄まじい早さで夜空に飛んでいく。
「見つかってもどうやって知らせるんだ?」
「もちろん、電話みたいな通信もあるわよ。本当とんでもないわよね、あの子。」
「す、すごいな。」
「感度、どう?哪吒?」
『ああ。聞こえてる。今、空から探してるけどまだ見つからねー』
「俺たちの家から馬車で移動してったらしいからその轍(わだち)を追えないか?」
『やってみる。』
「にしてもなんで、テトラが……」
「ラニャの言ってた騎士達がそいつらだとしたら、辻褄は合うわよ。」
「そうなのか?」
「聞いた話だと誰かの命令でそいつらは墓場のゾンビ達を消滅させてたらしいから、あたし達みたいな神秘側を消すのが目的なんじゃない?」
「じゃあなんで連れてかれたんだ?」
「そこよね。多分人質なんだろうけど、何かこっちと交渉したい事があるのかしら……」
「そんな事にテトラを巻き込ませたくない……!」
「わかるけど、神秘側を消そうとしてる奴は結構いるよの。」
「くそっ!! 」
ザーッザーッ
『こちら、哪吒太子。応答しろ博士。』
「はいはーい、こちら、ナタリア。」
『怪しい馬車を見つけた。どうする?』
「どの辺だ?」
『奴らはアポロの街の東門を出てしばらくの森で野営してる。どうする?ぶっ殺すか?』
「物騒だないきなり……」
「物騒ね……」
『どーすんだ。命令をくれ。』
「俺も行く。哪吒と合流する。」
「じゃあ、あの頃は騎士を引きつけてその間にリリーがテトラちゃんを救出するってのは?」
「それでいこう。聞こえるか?哪吒太子」
『OK』
「おっ……けー?」
「いいってことよ。」
「よし。行ってくる。」
宵闇の救出作戦の始まりだ。
~野営地上空~
ゴォォォォ
『哪吒、身体に問題ない?』
「飛行機能問題なし。久しぶりに使ったが平気そうだ。」
『あたしが整備してるからね。』
「結局兵士たちはぶっ殺すのか?」
『だから物騒なのよ……銃器は使用禁止。なんとかして追い返すか捕まえて!』
「了解ー」
『魔力は足りてる?』
「ああ。問題ない。弁当もあるから。」
ナタリアは哪吒の体内に魔力精製機構がある。空気中の魔力を取り込んで身体を動かすエネルギーを作る。しかし、空気中の魔力が不安な昨今は弁当(予備の魔力電源)を持つようにしている。
「あ、リリーだ。」
『案内してあげて。そして引きつけるときは派手に、ね』
「了解ー」
「はぁはぁはぁ……」
リリーの身体は疲れているけど、心をエネルギーにして動く
ゴォォォォ
「リリー」
「哪吒か。はぁはぁ……。」
「疲れてんな。飛べない奴は大変だな。」
「おれも飛びたいよ……はぁ。」
「騎士は3人。俺が引きつけてぶっ飛ばすからその間に救出しろよ。いいか?」
「よし。息も整った。行こう」
作戦は始まった。
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