第39話 のじゃロリ×文学系死神①


ある夜。ラニャは珍しく独りだった。

ルーはエルフのリリーの家でお泊まり。


サロはサキュバスなどの悪魔の集いで出かけている。


「皆、友達おおいんじゃな~……寂しいよ~」


といって居てもたってもいられずラニャは独りサロと初めてあったよく行くバーに向かった。


カランカラン


「いらっしゃい。おや、ラニャさんが夜にくるのは久しぶりですね。」

「ご無沙汰じゃ、マスター。マティーニをくれのぅ。」

「はい。今日はご家族の方は?」

「今日はみんな出かけとるんで、久しぶりにきてみたんじゃ。」

「そうですか。占いの方は順調で?」

「ぼちぼちじゃな。むしろ相談とかの方が多いのぅ最近は。」

「頼られてるのですよ。ラニャさんは色々はっきりと言ってくださいますから、きっとすっきりして帰られるんではないですか?」

「そ、そうかな?参ったなぁ!あはは!」

「はい、マティーニです。」

「うむ。サンキューじゃ。」


グイッ


「ぷはー。いいのぅ。」

「マティーニを飲んでるとは思えないのみっぷりですね。」

「うまそうじゃろ?この店はどうじゃ?儲かっとるかぇ?」

「ぼちぼちですよ。最近はお一人の方もよくいらして、ほらあそこの方も最近よくいらっしゃってます。」


店の端の方で本を読みながらちびちび飲む女性がいる。黒く長い髪、黒縁めがね、黒いエプロンドレス。黒黒黒……しかし顔は白く、美しい。しかも。


「(おっぱいでっかー……)」


おっぱいがでかい(二回目)


肌は出していないが魅力があふれている。ラニャの好きなタイプだ。


「こちらを喫茶店だと思ってるんでしょうか……。」

「ちょっと口説いてこようかのぅ……」

「だめですよ、ラニャさん。お客様が逃げてしまうのは容認できません。」

「ちぇっ。じゃあ店出た後ならよいのぅ?」

「そこまでは関与しません。」

「決まりじゃな。」

「やれやれ。そういうところはお変わりありませんね。」

「美女が居れば声をかける。でなければ失礼というものじゃ。」

「うーん。それは……あ、お帰りになられるようですね。」


コツコツコツ

カウンターのマスターに向かって歩いてくる文学系の乙女。男達は釘付けになっている。


ラニャはあえて顔を合わせないようにする。

「マスター。お勘定です。」

「ありがとうございます。またいらしてください。」


「はい、ごきげんよう。」

「おぬし」

ラニャが後ろを向きながら声をかける。


「はい?」

「その美貌で夜の独り歩きは危険じゃぞ。明るい道を選ぶんじゃな。」

「あら。ご忠告ありがとうございます。では。」


コツコツコツ

カランカラン


「マスター。」

「はい?」

「惚れたか?」

「……どちらに?それより追われるのでは?」

「ああ。追うぞ。もう一杯飲んだらのぅ。」

「それでは流石に見失いますよ?」

「あわてず、がっつかない。大人のたしなみじゃ。」

「でも、追うんですよね?」

「追う。だって、めっちゃ好き」

「大人のたしなみ……」

「それにこの店の客は落ち着いておるが、外にはそれなりの酔っ払いがおるじゃろ。そういうシチュエーション作りも必要なんじゃよ?」

「大人とは、ずるい生き物なのですね。勉強になります。」

「マスターもよく勉強するようにのぅ。」

「ちなみにラニャさんは旦那さ」

「ゴクゴクぷはー!じゃ!そういうことで金はおいとくぞ!じゃーのー!」


「ああ……お、お気をつけてー」


カランカラン


外は寒いが酒のせいで少しは温まっている。


「さーて美女美女……」

不順な動機で文学系乙女を探すラニャ。



しばらく探して、



「やめてください!」



さっきの乙女の声がした。



「お、お約束の展開じゃ!まっとれー!」


そして暗い路地で

追いつめられている


男達を見つけた。


「やめてくださいと、申し上げましたのに。」


ひとりの男が地面に転がっている。

もう一人の男は腰を抜かしている。

「ひっ!ど、どうなってんだ!?」


「えぇ……ほんとにどうなってるんじゃよ……」


「立ち去ってください。この方のようになりますよ。 」


「く、くそあまがぁっ!!」


「やめんかアホ」


ゴン


とラニャは男の頭を杖で叩いた。

男は転がる男の上に倒れ込む。


「自殺志願者か、まったく。」

「あれ?あなたは、先ほどの。」

「どーもじゃ、きれいなお姉さん。わしと楽しいことしなーい?と思ってきたんじゃが、わしもとことん神秘側と縁があるようじゃ。」


「神秘側……それではあなたは?見たところ人間のようですが?」

「わしゃ賢者じゃ。元じゃけど。近くで占いやら人生相談をしておる。もちろん人外や神秘側の者達のな。」

「まぁ、素敵なお仕事ですね。それにどうやら助けに来ていただいたみたいですね?」

「ま、そのつもりじゃったがあんまりいらなかったのぅ。」

「すいません。手を出されてはこちらとしても切るしかないので。」

「切る?」

「はい。生命力を切り離して一時的に気絶させました。これで。」


すると乙女はどこからともなくいかつい大鎌を取り出しだ。


「あー、おぬしあれか……」


「私はシオンともうします。死神をさせていただいております。」



この出会いがラニャにとってめちゃくちゃ重要になるとはまだ知らない。






つづくのじゃ!

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