第37話 人狼少女×猫又老師

「ふっ!はっ!」

「ほれ、もっと腰を落とすニャ。」

「はい!先生!」

「はっ!」

「そうニャ。そうニャ。」


というわけで人狼少女のルーはカンフーを教わっている。一体なにがというわけでなのか。




ー昨日ー


依頼主は猫又の珠子(たまこ)。


「弟子がほしい?」

「そうニャ。最近の人外たちは皆おとなしくて自衛の手段も持とうとせず、弟子がここ数十年いないニャ。どうにかしてほしいニャが……。」

「弟子かーうーん……」


「はいはいはーい!!!」


「なんじゃルー。おやつの干し肉はいつもの棚じゃぞ?」

「えっそうなの?じゃなくて!僕が弟子になります!ならせてください!」

「おお、本当かニャ?」

「はい!お願いします!」

「うーん、猫又でなくてよいのか?」

「やる気があって素直ならよいのニャ。この子ならぴったりニャ。ぜひ弟子にさせてほしいニャー。」

「んー……遠征とかはさせられんぞ?わしもまだまだ可愛い娘を手放したくないんでのぅ。」

「この子は娘だったのかニャ。人間の娘が人狼とは不思議なところだニャここは。」

「まあ、もう何でもありじゃここは。すまんがお願いする、珠子先生。」

「珠子先生……なかなかいいニャ……。」

「よろしくお願いします!珠子先生!」

「うむ。よろしくニャ、ルーよ。」


そんなこんなでルーは珠子の弟子となった。

人狼の身体能力の高さとカンフーの技が合わされば、割と笑えないくらいの戦力になる。


「はぁはぁはぁ……」

「どうしたニャ。へばったニャ?」

「まだまだ!」

「じゃもう一周行くニャ。」


シュッ

シュッ


今やってるのは鬼ごっこ。

逃げる珠子をルーが捕まえれば勝ち。

木の上では圧倒的に猫又の珠子の方が有利だ。


「ほっほっほっと。」

「まだまだー!」

「ほれほれ、こっちじゃ」

「くっ!うわぁ!!」


ドーン

地面に落ちるルー。なんとか受け身はとれた。


「はぁ……はぁ……きっつーい……」

「足元をみるからじゃ。足裏に神経を集中……といっても正直とばしすぎたニャ。少し休憩するニャ。」

「わかりましたニャ!」

「まねしなくていいニャ。ほら、これラニャからの餞別ニャ。」


「あー!干し肉!」


ガジガジガジガジ


「さすがは人狼ニャ。」

「これ大好きなんですよーガジガジ」

「そうなのかニャ。……ルーに聞きたいことがあるニャ。」

「なんですか先生?」

「にゃんで弟子になりたいって言いだしたニャ?」

「……お母さんが……死んじゃわないように……強くなりたかったんです。」

「?あの人は病気か何かなのかニャ?」

「実はー……」


ーーーーーー


「ニャるほど。預言とはニャー。」

「戦いに巻き込まれるなら僕が守ればいい!そのために強くなりたい!!」

「力のための力ではなく、守りたいもののための力かニャ。とってもいい心がけニャ。」

「そ、そうですか!?」

「そうニャ。成長も伸びしろもあって期待通りニャ。なら一つ今日はネコネコ拳法の技を教えてかえるにゃ。」

「やったー!!」


「教えるのはコレニャ!!」


バッ!!!

パァン!!!


手のひらで空を打ち抜いた瞬間破裂音がした。


「ネコネコ掌底破しょうていはニャ。」

「ネコネコ掌底破……」


ゴクリ


「ワタシくらいになれば今ので人間の骨をおることもできるニャ。」

「に、肉球なのに?」

「肉球なのに、ニャ。」

「やっぱり先生すごいや!」

「ふっふっふニャ。じゃあ真似してみるニャ。」

「はい!……ッ!」


シーン


「はっ!」


シーン



「……」


「最初はそんなもんニャ。続けるニャ。」

「はい!」


そんなこんなで夕暮れ時。


「はぁ、はぁ、はぁ、もう、うごけ、ない……」

「うーん、ちと張り切りすぎたニャ。」



「おおーやっとるかのー」

現れたのはラニャだ。

「ラニャ殿。ワタシも少し力が入ってしまって見ての通りニャ。」

「し、ししょー……」

「はっはっは。どうじゃうちの娘は?」

「将来有望、伸びしろもあるニャ。」

「そうか。期待に答えられそうで何よりじゃ。この子はわしがおぶっていく。先生は夕飯食べて行くといいのぅ。」

「おお、それはかたじけないニャ。ぜひ夕飯は猫まんまで頼むニャ。」

「あー、似たような雑炊なら作れそうじゃが……ほらルー。」

「うへぇー」

ラニャの小さい背中におぶられる。

どうみてもラニャがおぶれるサイズではないがラニャの背中は小さいのに大きく見える。


「……お母さん……」

「んー?」

「僕、強くなるからね。」

「……うん。頼んだよ。」

「!任せてよ、いたたた……」

「はは。明日は休みじゃなこれは。」

「ワタシも指導の仕方を思い出しとくニャ」


大好きな母/師匠のために強くなる。


純粋な思いは


未来を動かすのか。






つづくのじゃ!

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