第36話 のじゃロリ×精霊のふたご②


「預言者?」


預言者とは高い確率で未来を予知できるものだ。


「そうです。今日はラニャさんにどうしても伝えたいことがあってきたのです。」

「わしに?っていうか名前言ったっけ?」

「あんたぐらいの異色占い師なら業界では有名人だよ。」

「へ、へぇーそうなんだ~……」

「ご主人様、口元とろけてますよ」

「べっ、べつに嬉しいわけじゃ(以下略)」


「とりあえずお座りください……といっても席を作らないと……」

「大人はたってていいんじゃないか?」

「そうね。でも太子はどっちなのかしら。」

「どっちでもいいんじゃね?」

「グレイは座らせてもらいな?」

「は~い」

「ミルカさん!コーヒー追加お願いします!」

「合点です!サロの姉さん!」


「すまないのぅ。騒がしくて。」

「いえ。にぎやかでとてもいいと思います。」

「みんな人外だから気も遣わないしなー」

「鈴は少しくつろぎ過ぎよ!」

「えーいいじゃん。ごゆっくりってかんじなんだからさー」


ざわざわと人が入れ替わり全員がなんとなく自分の収まる場所を見つけた。


「で、預言者のぬしらがわしに用ってのはつまり預言なんじゃろ?」


「はい。そうです。」

「ここに集まってもらったのは関わってる人には知っといてもらった方が後腐れないかなーって」

「みんなが集まる時までわかるなんてすごいね!」

「だろー?ま、今回は特別だ。普段はこれほどの制度はでない。」

「?」


「単刀直入に申し上げてもよろしいですか?」







「………わし、死ぬんじゃろ?」





「えっ!?」

「そうなのか!?」

「………」


「そのくらいじゃなきゃわざわざここにはこんじゃろうて。」


「……はい。おっしゃるとおり、ラニャさんは近いうちに、亡くなります。」


バタン

「そ、そんな……」

ヘタッと地面に座り込んでしまったのはサロだった。


「いやです……いやいやいやいや!」

「サロさん……」


サロは常に和やかで落ち着きがある分こういう取り乱し方は今まで見たことがなかった。

座り込むサロを抱きしめたのはルーだった。


「……出直しましょうか?」

「いや、ここで出直しても同じじゃよ。それはどのくらいの精度の預言なんじゃ?」

「うーん。申し訳ないんだけど滅多にないくらい高い。なんせ俺たち双子が全く同じ夢を見ちまった。しかもあんたの顔もはっきりわかるくらいだ。」

「そうか。ま、来たなって感じじゃな。」

「そんなあっさり……師匠!嫌だよ!」

ルーは今にも泣き出しそうだった。


「ルーや。生きてる物は必ず死ぬ。わしは人間じゃから一番早いのは避けられんのじゃ。」

「嫌だよ!!……お母さん!!」

「……まったく。ほら、おいで。」

「うっ、うわあああああん」

ついに泣き出してしまったルー。

ラニャはルーを抱きしめる。


つられてテトラやグレイ、サロも泣いている。

「はは。死ぬ前に葬式やってるようじゃな。」

「縁起でもないわよ、まったく。」

「はいはーい質問」

あまり様子に変わりのないゾンビ博士は預言者に質問をする。

「はい、なんでしょう?」

「3つあるから、一つずつ確認ね。まず

①近いうちというのはどのくらいか

②どういった死に方なのか

③私達がここに集められた理由

この三つがどうしても腑に落ちなくてねー」


「ま、説明するつもりでいたから答えはちゃとあるぜ。」

「皆さんがよければお話をつづけますが、どうしましょう?」

「続けておくれ。この子達にも関係あるんじゃろ?」

「はい。では①から。」


「これは、五年以内には必ず、しかし明日かもしれません。正直なところ、②の内容次第なのです。」


「②はなんなんじゃ?」


「……近いうちに、ラニャさんはある事件に巻き込まれます。そして、その最後に五体四散して亡くなります。」


「なんか、また豪快で具体的な死に方じゃなー……」

「これは俺も同じ夢だった。あんたはなんかと戦うことになって、拮抗するんだけど負けてバラバラに吹っ飛ぶ。だから多分五体四散ってのは確定だ。」

「嫌だなー……」

「思い当たる節はありますか?」

「うーんないなー。」


これは、嘘。

ラニャにはあった。

思い当たる可能性が。


「……そうですか。そういうことにしておきます。」


「③についてはそうだなー……俺たちの預言も確率は高いが絶対じゃない。」

「今回は例外的に確率が高いですが、それでも絶対じゃないんです。」

「ここで、ここにいる奴ら全員がこの事実を知ったことで、未来は大きく変化する可能性があるんだ。」

「例え話ですが、預言した未来を水面、投げる石を人間の行動だと考えてください。水面に石を投げると波紋ができます。その石が多ければ多いほど波は大きくなる。つまり、見えた未来に関わる人が多くなるほど未来は変動しやすくなる。」

「んーつまり、ここにあたしたちが集まったのは未来を少しでも変化させるためってこと?」

「そうです。ラニャさん、あなたは自分のことを神秘の者達はどう思っていると感じますか?」

「んー、にぎやかし?」




「いえ。あなたは『星』なのです。」





「ほし……?」

「神秘の者達は皆、急に変化する世界に戸惑っています。それは私たちも例外じゃない。その中であなたは夜闇の空の星なんです。」


「預言した俺たちがいうのもなんなんだが、あんたにはあんな死に方はしてほしくないんだよ。だから少しでも未来を変えるために俺たちもここに来たんだ。」


「なるほどのぅ。なんだか気を遣わせてしまったのぅ。」


「……いやだよぅ……お母さん……」

「やれやれ。困った娘じゃなぁ。サロ?」

「……」

「あーほら、おいで。」

「うっ、うううう~!」

ラニャは二人をの頭を胸に抱く。

「よしよし。わしの娘たちよ、わしは誰か言ってみよ?」


「ごじゅじんざま゛……」

「お゛があ゛ざん゛……」


「ちがーう。

元賢者のラニャ・オウル・マギラステ様じゃ。そのわしが死ぬじゃと?

この場所で、あきらめておらんのはもしかしてわしだけか?」


「……え?」


「未来は確定されたものではない。本来ならわしももう寿命がきておるが、色々あって長生きしておる。わしはまだ、諦めるわけにはいかんのじゃ。ララを蘇らせるまでは、のぅ。」

「お母さん……」「ご主人様……」


「そう言ってくれると思いました。」

「ま、俺たちは戦闘とかできないけど、なんかまた預言に変化があったら連絡するからさ。」


「ああ。それは期待したいところじゃ。」


「あと、これをあなたに。」

「これは?」

「お守りです。身代わりになってあなたを守ってくれるように。」

「そうかい。ありがとうのぅ。」

風は人型のような、高麗にんじんのような

人形を渡した。

「私が……作りました……」

「あんたの隠れファンなんだとさ。」 

「ちょっと!鈴!」

「そうなのか。辛い役目をさせてしまったのう……」

「いえ。私は信じてますから。」



預言者の風と鈴は帰って行った。

集まった全員がこの話をきき、そしてこの後の未来がどう変化するかは


まだ誰にもわからない。





つづくのじゃ。


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