第24話 のじゃロリ×ゾンビ娘②

博士という魔女のマジックアイテムで墓地へ飛んだ三人。しかし。


「ふぎゅぅ!」

「うわぁ!」

「あー」

ビシャーン

そこは墓地、ではなくどこかの森の中の小川だ。


「あれ~?」

「グレイちゃん。ここが墓地?」

「い~え、ここじゃないですねぇ~」

「だよね。というか寒いね……」

「すみません。死んでるので~あ、今の着地で腕折れちゃった~」

「あらら、大丈夫?」

「大丈夫大丈夫~こうやって~……あれ~?くっつかないや~いつもならこれで~」

「ねえ師匠、グレイちゃんが……師匠?」


川に顔から突っ込んでびしょぬれになったラニャが騒ぎ出すと思っていたルーはこのラニャの顔に見覚えがなかった。



「…………」


驚きと集中。


「師匠大丈夫?」

「シーッ……」

「「??」」

ラニャは人差し指を唇の前に立てて静かにするようにと訴える


「(どういうことじゃ、ここは)」


おそらくマジックアイテムは途中で効果を失ったらしい。だから中途半端な座標で転移が中断されたのだ。


「(ここら一体から向こう側の森……)」



その原因は



()



人間界の空気中にも昔に比べれば減りはしたが、魔力がとけ込んでいる。


神秘の者達が人間界で暮らしていけるのも、それがあるからだ。


彼らにとって魔力は生命力、体力でもある。

魔力が0になっている場所などは自然にはありえない。さっきのチョークとベルは魔力を使うマジックアイテムなのでここで魔力が0になり、緊急停止したのだ。


「こりゃ、寝付きが悪いなんてかわいい話ではなくなったかもしれんのぅ。」

「どういうこと?」

「空気中の魔力がない。0じゃ。これは自然ではありえん。何かがこの先で起きておる。」

「ああ!だから臭いがしないのか……!」

「わたしの身体が治らないのもそのせい?」

「じゃろうな。こりゃルーを連れてきたのは大正解だったようじゃ。」

「でもここはどこなんだろう……。」

「とりあえず目的地の墓地にに向かう途中の森じゃ。この辺じゃろ。」


ラニャは地図を指差す。


森が一番南側で、北に墓地、そしてその向こうには大きな街がある。


「王都ガラルドか。魔術の中心地じゃな。」

「とりあえずこの小川は元は街の用水路の下流の下流だね。ここを登っていけば墓地も通るんじゃないかな?」

「じゃな。ルー、先頭をたのむ。わしは殿(しんがり)じゃ。グレイは真ん中。」

「は~い。」

「足元気をつけてね皆!」


探り探りで歩く三人。


「……」

「……」

「……」


正直、生きているものは自分たちだけのような、静かな世界。静かというよりも寂しい世界。

「静かだね。」

「うむ。」

「皆……大丈夫かな~……」

「皆ってゾンビの?」

「うん~。墓場で暮らしてる皆~」

「どうかなー皆、土の中で寝てるんじゃないの?」

「?昼間は外に出てるはずだよ~?」


「え?」

「え?」

「え~??皆寝るのは夜じゃないの~?」


いや、人間は大体そうだけど。

死んでまでそれ律儀に守る?


「あ~墓場見えてきたよ~?」

「方向は合ってたようじゃのぅ。」

「……待って。人のにおいがする。」

「人?」

「……ルー、それは生きた人の臭いか?」

「うん。」

「こんな時間に~?皆、普通に起きてると思うけど~」

「臭いの方に行ってみる?」

「慎重にな。」


一行は墓地の中を歩く。

昼に活動しているというゾンビ達は影も形も、気配もない。


「あれ~皆~?」

「臭いが強くなってる。」

「ちなみに1人か?」

「ううん。2、3人いる。」

「用心せねば。」


普段ならここまで慎重にはならない。しかし、ここは魔術師にとってはアウェイなフィールドだった。魔術師は空気中の魔力と自分の体内の魔力を使って魔術を行使するが、今はその大きな供給源がたたれている。つまり自前の魔力だけで、戦うことになる。


しかもここは湿っているため、火と金の属性のラニャには相性が悪い。


「ん?あれ!」


ルーは何かを見つけた。


遠くには……?


「うぁぁぁぁ……やめてくれぇ……」

「全く、ゾンビなんて本当にでるとはなっ!」

ザシュッ!


鎧の騎士は

つかんだゾンビに銀の剣を突き刺した。

ゾンビは灰になって消えた。


騎士は



「あれって……!?」

「あ……あ……」

「あの剣、屍人殺ゾンビスレイヤーか!?」


ゾンビは聖の魔術を付与された剣でしか消滅させられない。

騎士の持つ銀の剣はその類だ。


「や、やめてよ~~!!」


グレイは騎士達の方に走り出してしまう。


「あっ、待て!!」


「これで、最後、ん?なんだ?」

「やめて~~!!」

「あ?ゾンビの子供?」

「生き残りだ。やるぞ。」

「子供は気が引けるな~」

「賢者様が言ってただろ?俺達が導いてやるんだよ。」


騎士はグレイに向かって剣を振り上げる。


「ああ……」

「いかん!ルー!」

「!!」


バシュン!!



ルーは一瞬でラニャの隣から消え


ガァン!!


「っ!!」

「ぐぁっ!!」


一瞬で騎士をドロップキックして吹き飛ばした。


ザッ!


「うわぁ~!」

グレイを抱えてラニャの元に帰ったルーは息が切れていた。


「はぁはぁはぁ。なんか、水の中にいるみたいに、身体が……重いよ師匠……」

「空気に魔力がらないからじゃ。」


「なんだ貴様等!?ゾンビを庇うのか?」

「我らがの命令によってここにいることを知ってのことか?」


「賢者様……?」


「おい、なんか変だぞ。あの子供、耳が生えてる。」

「!?まさか、人狼か!?」

「その隣の白髪の子供!その人狼とゾンビをこっちに渡せ!」


「くっ……やり合いたくはないんじゃが……」


「とりあえずダウンだけさせる!!」

「ルー!待て!」


ルーは騎士のひとりと戦闘になった。

「仕方なのう……!」

ラニャは身体の魔力を肉体と杖の強化に回した。


騎士は3人、2人を相手にするのは機動力のあるルー。だが、この土地のせいで機動力も落ちている。

「このっ!」「おりゃぁ!」

「フン!!」

「うわぁ!!」

ダァン!

ルーは地面に押さえつけられる。


大人の人狼ならまだしもルーはまだ15歳だ。体格の差がここに来てでた。


「お前はこいつを。俺は予定通り子供ゾンビをやる。」「了解」


「くそっ!待て!」


1人の騎士はグレイに向かっていく。


「っ!師匠ぉ!!」

「!!?ルー!」

ビュン!

カーン!

「ぐぁっ!」


声を聞いてラニャは杖をルーを押さえつける騎士向けて飛ばした。自由を得たルーはグレイの元へ跳んでいく。


「あぁ~……ああ~……」

「悪いなガキ。任務なんでな!!」

騎士は剣を振りかざす。


ザッ! 

ブン!


騎士の剣は空振りに終わったが、先には血が付いていた。


ザザーッ

「ルー!」

間一髪でグレイを救い、小脇に抱えてラニャのところへもどったルー。

「いてて……」

腕のあたりから出血している。

「ルーちゃん~……」

「へーきへーき……と言いたいけど、ちょっとヤバいかも……」

傷は深くないが、怪物であるルーには銀の剣は多少効果がある。しかもこの状況、普段の超回復力は魔力依存のためうまく機能しない。

「師匠……どうしよう……」

「ラニャさ~~ん!泣」

ラニャはたたずむ2人を両肩で抱く

「大丈夫じゃ。何とかする。」

「何とかするって……」


「子供ゾンビに、人狼に、謎の白髪少女。ゾンビ以外は城へ連行するか。」「そうだな。」


騎士達はラニャたちに近づいてくる。


「(奥の手を使うしか、ないかの……)」


ラニャはポケットに手を入れる。

握ったのは、御守り。


「(仕方ない……か!)」


覚悟を決めたその瞬間だった




。」



ブォン!!!!



大きな丸太のような何かが三人の騎士を吹き飛ばした。






続くのじゃ!








ーメモー

人狼の力:超回復力、怪力、脚力、透明化など。大人の人狼の戦闘能力はずば抜けている。ルーはまだ体が子供のため機動力のみ大人レベル。


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