第23話 のじゃロリ×ゾンビ娘①

今日の依頼主は際物も際物だった。


「最近、寝付きが悪くて~……」

「寝付き?」

「はい~いつもの墓穴でもすぐに目が覚めてしまって~」

「ゾンビに寝付きとかあるんじゃな……なんか眠たくなるしゃべり方じゃな~……」

「すいませ~ん。生前からなもので~」


おっとりしたマイペースなゾンビ娘は顔色こそ悪いがなぜかゴスロリを来ている。普通なら可愛らしいのだろうが、顔色の悪さと合わさって可愛さと怖さを両立させている。


「ふーむ寝つきについてはさっぱりじゃが、まさかゾンビが依頼にくるとはのぅ……」

「すいませ~ん。ゾンビで~」

「いや、もうこれで何が来ても驚かんぞ。」

「そんな~ゾンビとしては複雑です~」

「ふぁ~……いかん!ペースに飲まれつつある!普段は何してるんじゃ?えーっと名前なんじゃったっけ?」

「まだ言ってませんよ~。


アールグレイロール・ダマスカス・ポホルン二世です。」


……


「……もう一度言ってみ?」

「えーっと


アームストロング・ナポリタン……?」


「ああ、もういいわ!」

「ごめんなさ~い。脳みそ半分溶けちゃってるから~元の名前はわすれちゃったんです~」

袖をパタパタさせるゾンビ娘。

「はぁ……」

「でも、博士が名付けてくれたのでもアールグレイは好きだから~グレイって呼んでくださ~い。」


「では、グレイ。おぬしが言っていた博士とは誰じゃ?」

「んん~?博士は博士ですよ~。わたしたちゾンビが大好きなの~」

「そうなの~その人どこにいるの~?」

「それが~突然いなくなっちゃって~。そのころから寝付きが悪くなってしまって~」

「そうなんだ~。……まずい、またペースが。んーとりあえずその寝床って場所にいかんと何もわからんな~。よし、久々の現地調査じゃ。ん?そもそもグレイはどうやってここまできたんじゃ?」

「博士の道具でビューンときたよ~。」

「博士の道具?」


グレイはチョークとベルを見せる。


「行きは地図にしるしをつけて~このベルを鳴らすと~そこにビューンって飛んでいくよ~」

「な」

「帰りは~地面に円を書いて~その中でベルをならすと~墓地にひとっ飛びなの~」

「なん……」


紛れもなくそれは、マジックアイテム。

しかも、人を馬鹿にしたようなアイデアとぶっ飛んだ理論、結果。常識なんてお構いなしのチートアイテム。これは間違いない。その博士は。



「魔女か」



「そ~だよ~。博士は魔女で博士でゾンビ研究家なんだよ~」



・・・・


「準備できたよ。師匠。よろしくねグレイちゃん!」

「はい~ルーちゃん。よろしくです~」

「……」

ラニャは少し緊張感を覚えていた。

魔女。

魔術に関しては賢者であっても釈迦に説法、戦闘になれば渡り合えるかわからない。


そのために足が速く、魔女ですら認識できない透明化の力を持つ人狼のルーをお供にした。

「師匠?怖い顔してるよ?」

「まあの。緊張しとるし。」

「えぇ!?師匠が!?」

「正直断りたい依頼ナンバーワンじゃが、その不調の原因が何なのかはわかっておかんと。タフさで有名なゾンビの不調なんて、人間ならどうなるか……」


「……」


「うわーーん!でも怖いよールーー!!」


情けなくルーのお腹にしがみつくラニャ。切羽詰まると幼児退行するのが、のじゃロリの特徴の一つ。


「よしよし。師匠は僕が守るからね。」 「やだ……うちの弟子ったらカッコ良すぎ……結婚しよ?」

「ふざけてるなら行くよー?」

「あーん!!いやじゃーー!!!」

「グレイちゃんお願い!」

「はーい。」

「いやじゃーーーー!!!!!」


チリンチリン

チリンチリン


ベルをならすと

一瞬で三人は空に吸い込まれた。



続く


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