第22話 女エルフの苦悩

ー女エルフのリリーと弟妹たちの家ー


「姉ちゃんおかわり!」

「早いな。もっとゆっくりくえ。カラム。」

「お腹すいたんだもーん。」

「お姉ちゃん私もー!」

「私もー!!」


女エルフの家にはリリーの他に弟妹が4人いる。

長男のカラム。

次女のポロム。

三女のリロム。

一番下の次男のタロム。


皆、姉であるリリーを慕っている。

食べ盛りだ。


「ほら、タロ。あーんして」

「あー。」

「お姉ちゃん!ポロムが私のお肉とった~!うぁ~ん!」

「こら、ポロ!みんな同じ数だ!リロ、お姉ちゃんの一つあげるから泣きやみなさい……。」

こんな風景が毎日続いて賑やかな食卓に、リリーは苦労しながらも弟妹の成長を慈しんでいる。しかし、現実的な問題も多い。


人間社会が発展するにつれて、狩りの仕事はへり、動物も減った。


金という概念もふえて、人間社会に馴染みながらでないと生きられない。そんな時代の移り変わりになかなか馴染めないでいる。


そろそろ、本気で安定して糧を得たい。弟妹たちにたらふく食べさせたい。女エルフのリリーはそんな悩みを抱えるお姉ちゃんなのだ。



ーモーニング☆スターにてー


「というわけで、なんとかならないか、ラニャ。」

「おぬしが依頼主として相談に来るとは相当じゃな。」

「俺はあんまり人付き合いが器用じゃないんだ……。人間と折り合いつけて生きていくのは、難しい……。」

「そうかえ?わしは人間じゃぞ?」

「ラニャは色々と普通の人間とは違うだろ?」

「まあ、そこは否定せんが……。」

「何かないかな……。」

「まぁ、ちょうどいいと言えばちょうどいいかのぅ。」

「?なにかあるのか?」

「この店も最近では神秘側の仕事もおかげさまで増えてきておってな、わしにしか出来ん仕事、わし以外ならできること、誰にでもできること、わしにはできないこと、正直この辺の仕事がごっちゃごちゃでな、助手というかわし以外にできる仕事を誰かに回したかったんじゃ。」

「つまりその助手をやってもいいってことか?」

「そういうことじゃ。」

「俺なんかでつとまるのかな……。」


「誰でもいいわけではないぞ?


良識のある

神秘側の

大人で

やる気がある者


がよかったんじゃが、リリーなら何も心配なく任せられる。」

「やる!やらせてくれ!子守でも掃除でも何でもやるから!」

「円満に契約成立じゃな。おぬしが生活に必要な額を算出してくれ。それに合わせて対価をだすぞ。」

「算出か……金の計算は苦手なんだ……。」

「じゃあ、その辺が得意な奴を探しておくから、1日の家族全員の食費ぐらいは出せるか?」

「それなら、たぶん。」

「じゃあそれでよいぞ。」

「ありがとう、ラニャ。」

「気にするな。わしらの仲じゃろ?」

「……前から思ってたんだが、聞いていいか?」

「なんじゃ?」

「人間のあんたはなんで神秘側の奴らに力を貸すんだ?」

「んーまぁ頼られるからというのが第一の理由じゃが……。」

「……。」

「わしの娘の話はしたかの?」

「いや、えっと多分してない。」

「そうかぇ。わしの娘は拾い子じゃが、ホムンクルスでな。長く生きられんかったんじゃ。」

「……そうなのか。」

「その時のわしには力が足りなくて助ける事が出来んかった。じゃからわしは生きている間に助けてほしいと頼られたら力を貸すと決めたんじゃ。それが、人間でもそれ以外でも。最近はそれ以外の方が多いからのぅ。」


「ラニャは、この先、神秘側はどうなっていくと思ってる?」

「まぁ滅ぶじゃろうな。」

「……」

「じゃがいつかはまだわからん。そのためにもわしは依頼をこなすとき、穏やかな滅びへ神秘の者達を導くときもあるし、共存の道を提示することもある。」


「俺たちは共存、ってことか?」

「エルフは耳以外は人間ににておるから、密かに暮らせば共存はできるじゃろ。」


「……そうだろうか。」

「不安か?」

「俺たちは、少なくとも俺は、人の目の届かない静かな所で暮らしたいって思う。昔のように。」

「それは、昔の事を知っておるからじゃ。おぬしの弟妹にとっては今の社会が普通なんじゃよ。」

「……」

ラニャはリリーの隣に座り、肩を叩く。

「ま、弟妹たちがおぬしと同じそうしたいというんじゃったら、当てはある。そのときはわしに教えとくれ?」

「ふっ。ラニャなら、本当に期待できそうだ。」

「そうじゃぞ?期待しとれ?さて早速仕事じゃが今日はわしの夜のお供を……」

「そういう仕事は受けねぇからな!」

「あはは!怒ったー!」

「ったく……ははっ。じゃあ、世話になるぜ、ラニャ。」

「店長と呼んでもいいぞぇ?」

「遠慮するよ。そういう人間っぽいのはさ!そろそろ帰る。」

「うむ。もし、家に弟妹たちを連れてくるなら娘達サロとルーが相手するでな。」

「ああ。もしかしたら頼むかもしれない。よろしくな。」

「食費の計算、忘れるなよ~?」

「わかってるよ。じゃな!」


ガチャ


「全く。でも、これでリリーを家におく口実ができたぞ……グヘヘ」

説明すると、ラニャは属性盛り盛りのリリーがお気に入りなのだ。



こうして女エルフのリリーが助手として働くことになった。


果たして、初仕事やいかに!?



続く。

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