第20話 のじゃロリ×両性具有の亜人(あじん)
今日は電話で予約のあった客が来る日だった。
サロとラニャは家で待っているが、予定の時間になっても依頼人が現れない。
「遅いのぅ。電話での対応はどうだったんじゃ?」
「ん~かなり礼儀正しい方でしたよ?」
「じゃあ、普通に迷っとるんかのぅ。」
「それはありますねぇ。この店も変なところにありますし、人払いの結界もありますから~」
「最悪迎えにいくかのぅ。内容は?」
「占いと、体のことで相談があるっていってましたねぇ~」
「身体のことー?」
ガチャ
「ただいまー!」
「あ、ルーちゃん♪お帰りなさいませ~♪あら?」
そこには髪の短い中性的な少年?少女?が玄関に座っていた。
「なんか森で迷ってたからつれて来ちゃったよ?」
「なんでそんなに疲れとるんじゃ?」
「うちを探して歩き回っていたらしいよ?」
「す、すいませ~ん……」
「あらあら。とりあえずお上がりになってソファーで休んでは?」
「じゃな。ちょっと顔色もよくないのぅ。ソファで待っとれ。サロ、手を貸しておやり。」
「はーい♪」
ラニャは台所へ向かった。
ルーはキャスケット帽とコートをハンガーに掛けてソファーにすわる。
「大丈夫?」
「は、はい~……ありがとうございます……」
「うーんあんまり顔色よくないですねぇ」
「運動が苦手で……久しぶりに歩き回っていたら疲れてしまって……」
中性的な声で弱々しく話す
そこにラニャがカップを持ってくる。
「ほれ。これをお飲み。元気になるぞぇ。」
「あ、ありがとうございます。わぁ~いい匂い~」
ズズズズ……
「ホットチョコレート。まじない入りじゃ。」
「おいし~です。ふぅ……」
「口にあってよかった。おぬしが今日の依頼人のテトラかぇ?」
「はい。テトラと申します。……不思議な飲み物ですね。身体がすごい元気になってきました!」
みるみるテトラの顔に赤みが戻ってきた。
「ご主人様、何か入れたんですか?」
「なんもいれとらんぞ?チョコレートは戦場でも速攻で身体を元気にできるからそれをあっためて更に体を暖めたんじゃよ。」
「やだ……このご主人様ママみ高過ぎ……♡」
「なんでも魔術で解決しとるわけじゃないんじゃよ、サロ。」
「見直しました♪」
「師匠ー僕にも今度作ってー!」
「しかたないのぅ。それよりテトラ、話せるくらいには落ち着いたかぇ?」
「はい。本当にありがとうございます。もうこれだけでもここに来た甲斐がありました~。」
「そうかい。サロ、わしにもコーヒー頼むー」
「はーい♪」
「あ、僕も手伝う~」
ふぅーと一息をつく4人。
ここは森の中なので基本家の中も静かなのだ。
「さて。まずは占いじゃが、何を占うんじゃ?」
「恋愛運を!お願いします!」
「ふむ。何か叶えたい恋があるんかえ?」
「いえ……実は失恋したばかりで……」
「あら」
「ふむ。それで次の恋のために占いに頼りたい、といった感じかぇ?」
「そうです!」
「わかった。じゃあ手相からじゃ。」
「はい。」
手相をみる。
「(手細っ……)」
「どうですか?」
「あーおぬし、あんまり愛情表現が得意じゃないじゃろ?」
「あ……はい。」
「きちんと好意を向けないと伝わるもんも伝わらんぞ」
「はい……。」
「手相はやや落ち目じゃが、叶わん訳ではない。自分に素直に勇気をもって気持ちを伝えることが大事じゃ。」
「はい!」
「じゃあ、次はタロットじゃな。一枚好きなのをひいて。」
「じゃあ、これで。」
「その向きで机においてみよ?」
「はい。こうですか?」
「うーむ、『吊られた男』の逆位置か……。泥沼じゃな……。まだ未練があったり、でもあきらめたいとも思っとる感じかぇ?」
「まさにそんな感じです……。」
「うーん今は少し恋愛から距離を置くべきかものぅ。今は何をしても沼じゃ。」
「うぅ~……はい。」
「すごい、師匠がちゃんと仕事してる……。」
「本当に占い師だったんですねぇ~……」
「そこ、外野うるさいぞー」
「はぁ~……ありがとうございました。」
「そう気を落とすな。男も女も世の中には山ほどおるぞ。」
「……」
「もう一つの依頼は身体の相談じゃったな?どこか悪いのかぇ?」
「……ここは」
「?」
「ここは、人間意外の相談も受け付けていると聞きました。それは本当ですか?」
「うむ。いわゆる神秘側の問題もできることは相談にのるし、解決もする。」
「良かった……本当だったんだ……」
「ま、ここにおるのはみんな神秘側じゃ。なんでも話してみぃ?話しにくいなら外させるが。」
「いえ、大丈夫です。」
「実は、僕は両性具有なんです。」
「……意味、わかりますか?」
「?」
「?」
「ああ、わかるぞ。なるほどな、それで見た目ではわからんかったのか。」
テトラは顔立ちはきれいな青年に見える。しかし、小さいが胸に凹凸がある。
「つまり、おぬしは
「はい。当たりです。」
「……聞きにくいことをきくが」
ラニャは耳元でひそひそと
「おぬし、アレはついておるのか?」
本当に聞きにくいことを聞いた。
テトラは顔を赤くして頷いた。
「なるほどのぅ。それは、色々大変じゃったな。」
「……初めてです。」
「?」
「この話をして、嫌悪感を抱かずにしかも、共感してくださるなんて……。泣いちゃいそうです……。」
「そこにおるメイドのサロはサキュバスでな。サキュバスっていうのは男に夜這いを仕掛ける悪魔なんじゃが、こやつの好みは女なんじゃよ。」
「私はご主人様にぞっこんなのです♡」
「こっちの弟子は人狼で見た目はこんな美少年じゃが、女じゃ。」
「ル、ルーくん女の子だったの!?それなのにべたべた触っちゃってごめんなさい!」
「?別に気にしてないよ?」
「他にも男女の概念のない愛らしい機械人形仙人やら、酒癖の悪いドワーフ女や、チャームの魔眼持ちの女好き女子校生、その他諸々。あ、わしのお気に入りの女エルフも。まぁ、とにかくこの家にはそういう複雑な女がよく集まる。故にすまんがおぬしの両性具有もあんまり驚かん。」
「す、すごいですね。なんか。」
「クセが強いじゃろ?本当に話題には事欠かんよ、ここは。」
「なんだか、僕の悩みが小さく思えてきました……。」
「まあ悩みの大小は人それぞれじゃとは思うが、おぬしはおぬしじゃ、テトラ。自分を肯定することは大事じゃぞ?自分を愛せなければ他人は愛せん。」
「ご主人様のママみが上がっている……!?」
「僕は師匠のことママだとも思ってるよ!」
「私は旦那様だと思ってまーす♪」
「……まあ、このようにわしら
「はい。なんだか少し勇気が出てきました!」
「うむ。よかったのぅ。」
その時ドアが開く音がした。
「ちわーっす。ラニャ、工房借りていいか?ってお客さんか。失礼。」
「おお。噂をすればリリー。」
女エルフのリリーが訪ねてきたのだ。
「俺の噂をしてたのか?」
「そうじゃよ。このテトラも神秘側じゃ。」
「ふーん。俺はリリー。エルフだ。よろしく。」
「はい…………」
「ん?どうした?熱でもあるんじゃないか?顔赤いぞ?」
「ぃ、ぃぇ……」
「?」
「?まあいいか。ラニャ、工房かりるぞー」
「おお。開いとるから勝手に使っとくれー。」
「了解ー」
バタン
リリーが来てからテトラは様子がおかしい。
突然口を開くテトラ。
「あ、あの!さっきの方は!?」
「あれがエルフのリリーじゃ。男っぽいくせにドジっ子とちょっと泣き虫属性付きのムキムキ美人女エルフじゃよ。」
「お、お願いします!あの人を紹介してくれませんか!!」
「あ、ああ、かまわんが……。」
「やった!……めちゃくちゃ好みです……♪一目惚れしちゃいました……」
「あー多感な年頃じゃなぁ~」
「あ、リリーさんも好きですが、ラニャさんも好きですよ!」
「そ、そうかぇ。なんかずいぶん元気になったな。まぁ、また困りごとがあったら来るといいぞ。あ、行動に出るにはまだ早いからのぅ。おぬしの事はやつに紹介しておく~」
「はい!ありがとうございます!」
テトラはお代を置いてお辞儀をして出て行った。
どうやらアポロ・ポートにすんでいるらしい。
こうしてまたこの家の常連が1人増えた。
両性具有の亜人(あじん) ー解決!ー
ーメモー
両性具有:男性であり、女性である特徴を有していること。テトラの場合上半身が女で下半身が男。性格は女寄り。
亜人(あじん):人に非常によく似ているが人ではない種。デミヒューマン。
次回もよろしく!
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