第19話 のじゃロリ×機械少女④
「……んん?どこだここ?」
かくして機械少女は目を覚ました。
「おはよう。私はナタリア。あなたが壊れたまま店先に売られていたところを見つけた、『博士』よ」
「なんかずいぶん積極的じゃな。しかも博士って……」
「最初に見た者を親として認識するってよくあるでしょ?」
「そりゃ鳥の話じゃろ……」
「そうなのか。助かった『ナタリア博士』。他の奴らは助手か?」
「違う違う。わしはラニャ。この家の主人でナタリアと共におぬしを直したものじゃ。」
「ラニャ。覚えたぜ。あんたも博士か?」
「いや、わしは元賢者じゃ。」
「元賢者。覚えた。他のは?」
「わたくしはサロです♪ラニャ様とルーちゃんのメイド兼サキュバスで~す♪」
「サキュバスが副業みたいなっとる……」
「サロ。覚えた。察するにお前がルーってことか?」
「そうだよ。僕がルー・ガルー。人狼です!ルーでいいよ!すごいね、頭いいんだ!」
「機械だからな。一度聞けば覚える。俺は哪吒太子(なたたいし)。哪吒でいい。わかるとは思うが機械だ。人間的には俺を仙人って呼んでるらしい。……なんか俺、ずいぶん眠ってたみたいだ。記録によると約50年の時差がある。」
「う~ん50年もあそこに置いてあったはずはないんですがねぇ~。あの市はよく行きますが、私はあなたを初めて見ましたもの。」
「記録を見てみる」
ピー
少女は目を閉じ、機械的な音をたてて静止している。
「……最後はこの辺の森の中に落ちたみたいだ。そこで魔力切れして停止した。そこからは記録がない。」
「おぬし、動力は魔力じゃが、みたところ起動すればほぼ無尽蔵に動けるみたいじゃが?」
「空気中の魔力を使ってる。だが、今回止まった理由はわからん。長年の起動でガタが来てるのかもしれない。なにせ千年近く動いてるし。」
「「「せ、千年!!??」」」
哪吒太子が生まれたとされる時代は千年前の中華である。超常的な技術で作られた機械である故に千年近く起動できているらしい。故に仙人と呼ばれる。
「その反応も久しぶりだが、この話をするとほとんど冗談として処理されるから、新鮮だな。」
「まぁここにいる全員が世間的には冗談みたいな連中だしね。」
「賢者・サキュバス・人狼・ドワーフ。たしかに。サーカス団かなにかか?」
「冗談までいえる機能付きとはいよいよ機械には見えんなー、まぁいいいか。……つかぬことを聞くが、おぬし水には強いか?」
「一応耐水性だ。」
「よし、じゃあルー。ナタと一緒にシャワー浴びておいで。」
「え、ああ!たしかにすごい汚れてた!よし、いこうナタちゃん?」
「どっちでもいい。でも、機械の俺にはシャワーなんて不要だぞ?」
「気持ちの問題じゃ。行ってこーい。」
「いこいこ♪」
ルーはナタを押してシャワー室へ向かった。
「さて、サロ。すまんが動きやすそうな子供服を」
「もちろんそのつもりで~す♪」
「さすがわしのマイハニーじゃ。ほっぺにちゅーしてやるぞ」
チュッ♡
「キャー♪」
「……」
「なんじゃ、ナタリアもしてほしいのかぇ?」
「ち、違うわよ。なんであの子が停止したのかを考えてたの。」
「ナタとナタリアって似てるな……。呼び方変えるかのぅ?リアとか?」
「ややこしいからやめて。それよりやっぱり人間界の空気中の魔力って顕著に薄くなってるわよね。」
「まぁ、そうじゃな。停止した理由はそこも関係しとるんかのぅ。」
「もしくは何かあの子の中の機構が不調をきたしてるのかも。後で聞いてみましょ。」
「なんか、作戦参謀みたいなポジションになったなおぬし。」
「『博士』ですから!!」ドャァ
「博士、作戦は成功です。よかったのぅ。」
しばらくしてルーとナタが戻ってきた。
ナタの身体は男児とも女児ともいえない特徴の曖昧な作りの体をしていた。
「シャワーなんて初めてだから勝手が分からん。」
「師匠すごいんだよ!ナタちゃんの髪の毛サラサラで人間みたい!」
「たしかに艶があるな。」
「博士、ラニャ。どうやらおれの体内に不調があるみたいだ。直してくれ。」
「え?やっぱり機構に不調がでてたの?」
「ああ。さっきスキャニングしたら見つかった。魔力変換機に不調があるらしい。」
「つまり外の空気を取り込む吸気のところか。」
「ああ。予想以上に人間界の空気は汚れてて、活動するには定期的に掃除する必要があると判断した。だから頼んだ。背中側の装甲が外れるようにしたから中を見てくれ。あ、中はデリケートだから優しくな?」
「よし!このナタリア博士に任せなさい!」
ー現在ー
かくして現在にもどり、機械少女はときおり淫靡(いんび)な声を出していた。
「あっ……」
「またか」
「そ……そこ……」
「ここ、ね?」
「んんん!!!!」
「ビ、ビックリしたぞ……」
「そこ、あ゛ぁ゛~……いい。」
「急に年寄り臭くなったわね。」
「そこ、そこだ~あ゛~」
「さっきの方がよかったのぅ。」
「ん゛~最高♪」
「これでよし。ナタ?どう調子は?」
「ん?終わったか?なら装甲を閉じてくれ。スキャニングする」
「OKー」
「温度差すごいのぅ……」
『スキャニング中……』
「ねぇ。ラニャ」
「なんじゃ。」
「私達としてはこの子どう扱うべき?」
「どうとは?」
「男の子としてか、女の子としてか。」
「本人はどっちでもいいと言っとるじゃからどっちでもいいんじゃろ。わしは女の子のほうがいいと思うが。」
「だよね。女の子として扱うわ。」
「おぬしが引き取るんじゃろ?なにせ『博士』なんじゃから。」
「ま、まあ。やぶさかでもないわ。一応本人に聞くけど。」
「そうじゃな。」
『スキャニング完了。異常アリマセン。』
「……ん?終わったな。」
「大丈夫そうじゃな。サロ。服を着せてやってくれ。」
「はぁーい♪さぁこちらでーすよー。」
「うん。頼む。」
着替えて髪を結んだナタはなんというか
「おおー!」
「なんか!」
「すごい!」
「かわいいですねぇ~♪」
かわいい女の子になった。
「俺はかわいいのか。記憶した。」
「太乙なんとかとかいうやつはかなりこだわりが深いみたいじゃな。」
「太乙真人様は気持ち悪いからな。」
「揺るぎなき罵倒……」
「なあ。さっき俺、暴走しただろ?」
「あー、最初に起動したときのこと?」
「その辺の記録は残っててな。ラニャが色々やって止めてくれたみたいだな。しかも、なるべく壊れないように。」
「まあ、機械とはいえ見た目が子供の相手には気が引けるからのぅ。」
「さすが、ご主人様♪お優しい♪」
「師匠は子供に甘いんだよ~」
「そうか。感謝する。謝謝(シェイシェイ)。あんた、いい奴だな。」
「そうほめるでない。子供の姿の大先輩に誉められるとかどういう気持ちになったらいいかわからん。」
「子供っぽくふるまえばいいのか?ならー」
ナタはラニャの腕にしがみつき
「ありがとぉ♪お姉ちゃん♡」
「「「!!??」」」
ギィーー……
ラニャの新たな扉が開いた。
「ホ、ホホホホ、ど、どういたまして??エ、エヘヘヘェ~♡」
気持ちの悪い笑みを浮かべるラニャ。
「(これは……)」
「(新たなライバル出現ですかぁ!?)」
それを見ながら謎の危機感を覚えたサロとルー。
「な、なぁナタ?おぬし、わしの家に住ま」
「「ダメです!!!!!!」」
「ヒッ」
ラニャは恐怖した。
ラニャには分別がわからぬ。
結局、ナタは予定通りナタリアと共に暮らすことにした。人間界で暮らすには定期的な点検がいるからだ。
「博士、よろしくな。」
「うん、よろしく。わたしも話し相手が出来て嬉しいわ。」
「そうか。博士は独りで寂しいやつなんだな。」
「うるさいわね!」
こうしてラニャのハーレム関係に新たなライバルが出現したのだった。
謎の機械少女 ー解決!ー
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