第14話 のじゃロリ×ドワーフ女②

 ガチャ


「……えっ?」

「ビックリじゃろ?」

「ええええ!!?ここどこ!?」

「ふっふっふ、ここは世界の裏側じゃ。」

「なんで!?普通の家のドアだったのに!?」

 ドワーフの女は混乱している。

「わし、賢者なんでな♪」

「はぁー……有り得ない……しかもここ、聖域じゃないの!?」

「さすがにわかるか。そうじゃよ。」

「空気中の魔力が濃すぎてちょっとくらっとしたわよ。」

「おぬし、えーっと名前なんじゃったか」

「あ、ナタリアよ。言ってなかったね。」

「ナタリアよ。すまんが沢までしばらく歩くでな。辛抱じゃ。」

「ええ。それまであなたの話でもしてよ。」

「しょうがないのー」


 ・・・・


「ふーん。そんな経緯があったわけね。なにがどうなって人とサキュバスと人狼が共に暮らしてんのかとおもったけど。」

「いい子達じゃぞ。おぬしと違って愛想も良いしのぅ」

「愛想なんてドワーフにはいらないのよ。」

「少しはあったほうが色々うまく行くぞー」

「うっさいわね。ていうか、まだなわけ?」

「文句も多いやつじゃな。まだじゃよ。」

 静かな森をさらに奥へ歩いていく。

 するとチョロチョロと流れる小川に出た。


「さ、ここじゃ。存分にさが」

「ぜーぜーぜー……」

 息を切らしているナタリア。

「なんじゃ、運動不足か?」

「ドワーフはインテリなのよ……」

「斧使って建築する種族じゃなかったかの?」

「斧は勝手に働くように魔術かけてんのよ……」

「つまり運動不足じゃろ」

「うるさいわね!」

「元気じゃん。ほれそこの川石なら砥石としていいじゃろ。」

「んーどれどれ……たしかに使えるわね……」

 ナタリアは白いレンガのようなの石を拾い上げる。

「これは仕上げ用ね。もっと堅いのないの?」

「じゃあ上流の方に行くか。」

「また歩くのね……」

 小川の上流はまだ大きな石、というか岩がゴロゴロしている。川の流れで研磨され上流から下流に、岩が石に、れきに、砂になっていく。


「はぁ…はぁ…あーー……」

 ナタリアは途中で立ち止まる。

 その手をラニャが引っ張りあげる。


「ほれ、頑張れ頑張れ」

「あー……」

 じわじわと沢を登り、石を拾えそうなところにたどり着く。

「到着じゃー!」

「あー……ちょっと休憩ー…」

 岩の上に座り込み足を延ばすナタリア。

「こんなに運動したの久しぶりすぎて明日が怖い」

「現代ドワーフの課題が浮き彫りになったのう。」

「そもそもこんなに動くと知ってたら来ないっての」


「「…………」」

 一息の沈黙。

 それをラニャが破る

「おぬし、飲めるか?」

 それはワインの瓶だった。どこから出したのかもう一本片手にもってラッパ飲みしている。

「ぷはー。」

「いいじゃない!ちょうだいよ?」

「ん?ほれ」

 ナタリアもワインをラッパ飲み。

 清浄な沢で酒を煽る2人。



 ~10分後~


「あはははは!ほんとに住みづらい世界になったわよねぇーあたしなんか億劫でしょっちゅう引きこもって酒のんでんのよー!」

「あーあはは……(まずい、絡み酒のやつじゃったか……)」

「あんた結構飲める口じゃない?飲み友になろうよー?」

「性格変わっとるし……どっちが本物じゃ?」

「どっちかっていうとこっちでしょ?ドワーフってプライド高いくせにクソがつくほど真面目な奴が多くて、ああいう野暮ったい感じで偽装してないと、うるさいのよー」

 女はメガネを外し、髪をほどくとなかなかの美人だった。


「あーそういう反動か。なんだか道具の手入れの話も納得言ったわい……。」

「なによ?私がいい加減だっていいたいの?失礼ねぇーラニャは。」

「(え、もう呼び捨てなの?若い子、怖い……)」

「次からは人間の道具使うわー。替えもきくし」

「まあ、それがいいじゃろ。さぁ、さっさと石拾って戻るぞ?」

「了解ー♪戻ったら酒盛りの続きってうぉ!?」

 バシャーン!

 浅い沢ですっころぶナタリア。

「あはははは!転んじゃったよ!」

「おぬし……大して酒強くないんじゃろ?」

「全然酔ってないよ?ちょっと滑っただけ!」


 このあと計五回ほど転んだので結局ラニャが砥石の候補を拾い、フラフラのナタリアを魔術で担いで家に帰った。



「うーん……」

「ご苦労様でした。ご主人様。」

「酒でそいつの本性がでるっていうのは本当かのぅー?」

「それはほぼ間違いないですよ♪ウエイターしてた頃になんどお尻触られたか……」

「わしにも触らせてー……グー」

「あらあら。寝てしまわれました。おやすみなさい、ご主人様♪」


 家に戻ってナタリアは「またくるわねー!」といって陽気に頭をドアにぶつけながら帰って行った。どうきたかもわからないが、夜道で笑いながら斧を持つ女を襲う輩はまずいないだろうというラニャの見解。


 全くの別人で帰ってきたナタリアと、疲れきった様子のラニャをみてサロは


「なにがあったのか、明日詳しく聞かないと気持ちがおさまりません!」という感じで、興奮したまま、眠った。




 ドワーフの女の斧  解決(?)

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