第12話 のじゃロリ×ホムンクルス②
それは戦争がまだまだあった時代。
ラニャは二流の魔術師で軍人だった。
この時代、戦争の戦術は魔術戦がおおく、ラニャは衛生兵だった。
多くが戦い、傷つき合い、傷つけ合った。
その先に希望があると、思い込んで進むしかなかった。
「あそこは違う世界じゃ。人の形をした殺意が歩いておった。」
戦いの終盤
ラニャの所属する部隊が攻めていた敵国の施設の一つに、錬金術の研究施設があった。
そこではあらゆる魔術、呪詛が研究されていた。
人を使って。
「禁忌に手を伸ばした施設。人体実験じゃ。」
そこで研究されていた錬金術の結晶
それが
「わしの娘、ララ。
あの子は
人造人間(ホムンクルス)だったんじゃ。」
「……えっ」
「……」
「見つけたときは10歳くらいじゃったが。」
「わしはララを戦地から連れ帰ってそのまま除隊したんじゃ。あの子を助けるためにのぅ。」
「???助ける?」
「……子供のララには数十の呪詛がかけられておった。」
「そのままなら半月もせずに死ぬほどの数の呪詛じゃ。」
「なんて、ひどい……」
「……ご主人様はそれを解呪するためにララ様を引き取ってお家に……?」
「……大変じゃったよ。」
呪いは毛糸玉のようにどこが始点でどこが終点なのかわからないほど複雑に絡み合っていた。
ラニャは簡単なものから解いていくしか、なかった。
「わしはその時は二流の魔術師じゃったから、とにかくあらゆる魔導書を毎日毎日読みあさって、解呪法を試しまくった。」
「そして最後は奇跡に頼るしかなくなったんじゃ。それが【賢者の石】」
「賢者の石……って?」
「錬金術の到達点。不老不死をあたえるとされる奇跡の石じゃ。結局子供一人も救えんかったがの。」
「師匠はその、奇跡を作り出したの!?」
「だから、わしは【賢者】なんじゃ。」
「でも、ララお姉様は助からなかった……。」
「できた頃にはもう手遅れじゃ。結局何もできんかったのと同じじゃ。」
「そんなこと……。」
「あの子は14歳でこの世を去った。じゃからわしはあの子の非力さを、無力さを、忘れんようにするために自分自身に誓約をかけておる。じゃから体は14歳くらいなのじゃ。」
「そういうことだったんだ……。」
「最後の姿は今も覚えておる。あの歯抜け顔で笑って「ありがとう」と言って、死んだんじゃ。結局過ごせたのは4年くらいじゃったな。あの子の人生はそこがゴールじゃ。わしはそう思うておる。」
「……」
「あの子もハンバーグが好きでのぅ。毎日毎日作って作ってとうるさくてのー。おかげで得意料理じゃ。」
「うん。師匠のハンバーグ、僕は大好きだよ。」
「ありがとう、ルーや。」
「うっうっううぅ……」
「泣き過ぎじゃサロ……おぬし本当に悪魔なの??」
「だってぇぇううー……涙が止まりません……」
「悪魔が感傷に浸ってどうする……」
「師匠は、泣いてもいいんだよ?」
「涙はこの子が死んだときに枯れるほど流したのでな。もう残っとらんよ。わしは大丈夫じゃ、ルー。」
ルーの頭をなでるラニャ
「まあ、あと何度ここに来られるかはわからんがおぬしらも年に一回は付き合ってくれよ?」
「もちろんだよ!」
「はい。お約束します~」
「さて、そろそろ、帰るかの!」
「「はーい!」」
・・・・
ー帰り道ー
「まあ、先の短いわしから言えるのは、おぬしらはこの先どう生きるのかってことじゃ。ルーはどうしたい?」
「僕は…うーん…本をいっぱい読みたいかな?」
「ほう。勉強家じゃなルーは。」
「わたくしは、ご主人様のそばにいられればオッケー♪」
「……そうか。そうじゃな。」
わしを看取ってくれ、とは言えないラニャだった。
「一応わしにも夢があってな」
「なになにー?」
「聞きたいですぅ♪」
「わしはお迎えが来るまでに、ここに家を建てたいと思うておる。」
「おおー♪そうすれば毎日ララお姉さまに会えるわけですし」
「あ、そっか!」
「それにここは静かじゃからの。あっちのいえは占い屋だけで使えばよいからのぅ。」
「家づくりか~やってみたーい!」
「その前にドワーフあたりと知り合えれば尚よいんじゃがなぁ。」
「んーでもいずれ来そうじゃありません?この感じだと?」
「「確かに!」」
ははは。と笑う三人。
「じゃあまたの、ララ」
「また来ますね、お姉さま」
「またね、お姉ちゃん」
それぞれがそれぞれ挨拶をし、いつもの家に帰っていった。
続く
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