第11話 のじゃロリ×ホムンクルス①

―約束の日曜日—


「準備はできたかぇ?」

「うん。なんかスースーするけど。」

「バッチリですよ♪ルーちゃんも、たまにはスカートもはかないと!」

 三人は黒い衣装をきている。


 サロとルーは黒いドレス。

 ラニャは黒い礼服にマントを羽織っている。


「うむ。では行くぞ。」


 ラニャは花柄の鍵を取り出す。

 再び家の中から鍵をかけ、開ける。


 扉の外は森の中だった。

出てきた建物は物置き小屋。


「ここ、いつもの家の外じゃないんだね」

「転移の魔術でな。鍵によってあらかじめ決めておいた扉に繋げられるんじゃ。」

「本当に賢者だったんですねご主人様」

「疑っとんたんか!」

「まぁ、それっぽいところ見たことなかったですし……」

「ううー!いいもん!今度から積極的に見せてくもん!」


・・・・


「これからどこへいくの師匠?」

「すぐに分かる。」

「?」


 いつもの森より暗い森。

 聖厳な空気が漂う。


「へぇ。ここなんかすごーい」

「ここには誰もこんからのぅ。」

「空気中の魔力が普段と段違いですねぇ~」

「確かに!身体がなんか軽い!」

「結界で護られてるんじゃここは。じゃから空気も昔のままなんじゃよ。おぬしらは魔族側じゃからそっちの変化がわかるんじゃな」


「ふーん。あっ何あれ!?」


 ヒヒーン

 という嘶きと、光る馬。


「ユニコーンのポチじゃ。ここを守ってもらっておる。」



パカッパカッパカッパカッ……

ブルルルル


「久しぶりじゃの、ポチや。」

 一角獣は近づいてきて身震いをした。


「ユニコーンにポチってどうなの。」

「わたくしたちのこと怖がりませんねぇ?」

「おぬしらのことは教えておる。ポチは賢いからのぅ。敬意を払うようにの。」

「ぼく狼だけど?」

「人狼じゃユニコーンは倒せん」

「そうなの?こんにちは!ポチ!」


 ブルル


「でもご主人様?何を守らせてるんです?」

「んー?もうすぐじゃ。」


 進む三人の前方に現れた、開けた土地。


 その中央にそれはあった。


「これ……お墓?」


 墓標には


 【ララ・オウル・マギラステ】



 と書かれている。




「……ララ・オウル・マギラステ……」


「わしの、娘の墓じゃ。」




「「……!?」」



「師匠って結婚してたの!?」

「ご主人様はノンケでしたの!?」


 ゴツーン

 ゴツーン


「「あいたぁ!」」


 どこからともなく金だらいが降ってきた。


「二人とも失礼じゃな!結婚もしとらんし、ノンケでもないわ!」


「いてて……でも娘って……」

「そうですよぉ~……アイタタ」



「戦場で拾った子じゃ。ほれまずは挨拶。」



 ラニャをまねして手を合わせる2人。

 両手を重ね、握る。



「ララ、今年もきたぞ。今年は賑やかなのもおるがそういうのは好きじゃろ?」


 といってサロの腕を抱える


「こっちがわしのメイドのサロでこっちが弟子のルーじゃ。」


「伴侶と弟子ではあるが、まあ……その……」

「いうなれば、ララ、お主と同じわしの家族じゃ。おぬしが生きておったらさぞかし賑やかな家族になったじゃろうな。生きてる間に与えてやれんですまんな……。」


「ララお姉様、ご主人様はわたくしたちに任せを♪」

「ララお姉ちゃん、師匠は僕たちがちゃんと育てるからね」



「わしをもらってきた犬みたいに言うなー!キーッ!」


「「ハハハハ!!」」


 ラニャの声が森に響く。


 そして、ふぅとため息を付いて少し離れた木の方へ歩く。


「サロ、ルー、こっちで少し話さぬか?」

「ララちゃんの話?」

「そうじゃ。おぬしらには話しておかねばな。」

「ではお昼の用意をしますね。敷物しくの手伝ってくださーい」


「「はーい」」


 ランチボックスからサンドイッチが出てくる。

 大きなハンバーガーはルーのだ。


「肉好きじゃのぅ……」

「人狼ですから!」

「はい、お手拭きですよ~」

 ラニャはポケットから写真立てを取り出した。


「今日はララも一緒じゃ。よかったのぅ」


 写真の少女は12歳くらいのショートの赤毛の女の子で抜けた歯で笑っている。


「可愛いですねぇ」

「ララちゃん、前歯がないね」

「でも、いいえ顔じゃろ?」

「うん。とっても。」


 ワイワイと昼食をとる三人。

 仲良しな家族のピクニック。



 ・・・・


「……ご主人様。ララ様は、戦場で拾った、つまり戦災孤児ということですか?」

「いや、違う。少し長くなるが眠くなったら寝てもよいぞ。」

「寝ませんよー」


「……わしが20代の話、今から50年近く前の話じゃ。」



 それは戦争がまだまだあった時代。

 ラニャは二流の魔術師で軍人だった。



続く

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