第10話 のじゃロリ×エルフ
~数ヶ月後のある日~
電話にて
「弓を直して欲しいじゃと?」
「ああ、由緒正しいエルフの弓だ。そういう依頼はもうあんたくらいしか受けてくれないんだろう?」
電話の向こうでは強そうな女の声。
「わしは武器屋でも装備屋でもなんじゃが?というかエルフが電話を使うな!」
「いいじゃないか。便利だし。それより、普通の人間には直せないんだ。頼む」
「はぁ。悪いがおこ・・・・」
ガバッ
「もちろんお引き受けさせていただきますぅ♪今からでもお待ちしてますからねえ♪」
サロが受話器を奪った。
「おおそうか!助かる。今から持って行くからよろしく!」
「おまちしおりますぅ♪」
ガチャ
「……」
ジー……
ジト目でサロを見るラニャ。
「おぬしが直すと言うことでいいんじゃな?」
「いえいえ、そんなことできません♪でもでもエルフの弓なんて直したらきっとモットユウメイになりますよ!」
「おぬしが強そうな女に惹かれただけじゃろ」
「あはっ♪バレました?」
「エルフとサキュバスなんて相性真逆じゃろ!」
「あらやだ?嫉妬ですかご主人様?」
「ううう!やーだーやーだーサロをとられるのもエルフの弓なんて難しそうなの直すのなんてやーだー!!」
「あらら、ご主人様が幼児退行してしまいました。」
「誰のせいじゃー!」
「師匠どうしたの?」
「おおルー~、ルーはわしを置いていかんよなぁ?わしのそばに居てくれるよなぁ?ルー?」
ルーにしがみつくラニャ。
ルーはすでに12歳くらいの容姿と中身に成長していた。
人狼の成長は人間よりもずっと早い。
「くっつかないでよ師匠。何があったのサロ?」
「簡単に言うと拗ねてるんです。私が他の女性に興味を持ったと思って……」
「あー……」
「うわーん。浮気者ぉ!」
「やめてよ師匠。服が汚れちゃう。」
「うう、ルーまで冷たい……もう…部屋で寝るぅ……」
キー
バタン
「あらら。ちょっとサロいじめすぎじゃない?」
「すいません、ついからかい甲斐があるというか癖になっちゃって♪でもルーちゃんも素っ気なさすぎなのでは?」
「僕のは性格だし……」
「まあ確かにわたくしをはじめて見たときも全然驚きませんでしたしね~悪魔的にショックですぅ」
「一応、僕も怪物だからね。」
「まあ、そうですね。ご主人様にはあとで何か……」
ーしばらくしてー
コンコンコン
誰かが来た。
「はーい?」
「ここがラニャとやらの工房であってるか?」
「まあ多分あってます。どちらさまですか?」
「さっき連絡した弓を直す依頼をしたエルフのリリーだ。入るぞ?」
ドアを開けて入ってきたのは声通りの長身の凛々しい女エルフだった。細身だがかなりマッチョだ。
「はあああん!かっこいいい♪はっ、いえ、すいません。」
「あんたがラニャか?いや、違うか。」
「ええ。私はメイドのサロです。よく覚えててくださいねぇ?♪」
「んん?ああ。」
「とりあえずお座りください♪」
「師匠よんでくる?」
「お願いルーちゃん!」
「……変な家だな。
お前、サキュバスだろ?
で、あの子供は人狼か?
ここは怪物屋敷なのか?
ていうか何でそんな近いんだよ。」
サロは狭い方のソファに座る依頼人の隣に無理やり座って腕を組んでいる。
「細かい事はぁ、気にしなーい♪」
「俺にチャームは効かないからな?」
奥からルーがラニャを連れて出てきた。
「連れてきたよ。」
「やーだー……ってもう出来上がってるじゃと!?」
「あらご主人様。こちらが依頼主のリリーさんですよぉ♪」
ラニャの腕をつかむサロ
「おぬしも自由じゃのぅ……」
「あんたが、賢者のラニャか?すまんが世話になるぜ。」
「はぁ。まあ受けた依頼じゃからな。」
「恩に着る。」
「気にするな。」
・・・・
見上げるラニャ。その身長差は40~50センチ
「あーすまん5分だけ待っててくれるかの?」
「??ああ、構わないぜ?」
「サロ、お茶をお出しするの忘れとるぞ」
「はっ!?失礼しました!今お持ちしまーす」
「ねぇ、お姉さん?この弓見てもいい?」
「ああ、いいぜ。持ってみな」
~5分後~
ガチャ
「待たせたのぅ」
「おう……?」
「キャーーー♪」
「師匠……」
ラニャは夜モードの大人ラニャになって戻ってきた。
「あんたラニャなのか?」
「これが本来の姿なのじゃ。すまんが、話してて首が痛いのでな」
「あーなんか気を遣わせたな。」
「いや、わしが勝手にやったんじゃ。気にするな」
「(はぁはぁはぁ…リリーさんも素敵ですが、大人ラニャ様もいい……両方家に住んでくれないかなぁ……)」
「そこで興奮してるやつは気にせんでくれ。女好きのサキュバスっていう珍獣じゃ。」
「お、おう」
「この可愛い子供はわしの弟子で、ルーという。」
「よろしくお願いします。」
「ああ。よろしく。」
「で、本題じゃな。」
「ああ、これなんたが」
壊れた弓を見せて貰う。
弦の先が欠けている。
「あらま」
「こりゃ、ずいぶんやったのぅ。」
「恥ずかしながら」
「これってくっつけたら直るの?」
「いや弦の部分を直してもただの弓じゃ。
これは術師の杖と同じで、完成してから魔術錬成を施すんじゃ。」
「そうしないとうまく魔術がつかえないんだ。」
「そういうことじゃ。」
魔術錬成した武器が欠けたり、壊れたりすると、もう一度錬成をし直さないといけないのだ。
「じゃあもう直せないの?」
「まあ残った弦の部分だけで弓にしたらかなり小さいしのぅ。」
「やっぱりそうか。くそっ」
「そもそもなんでこんな壊れ方するんじゃ。」
「・・・・」
「すごい幻獣とかと戦ったとか!?」
「まあ!素敵ですぅ♪」
「聞きたい!聞きたい!その話!」
「いや・・・・」
「どんな猛獣と戦ったんですかぁ?」
「ドラゴン?やっぱりドラゴン?」
「あの・・・・」
ラニャが制止に入った。
「まてまて!リリーが困っとるから話を膨らますな。」
「すまん、助かった。」
「いや、で、どうなんじゃ。」
「正直」
「?」
「酒のんでたからあんまり覚えてないんだが、確か」
「山中で服の裾が岩に引っかかってそれを取るために弓で岩を持ち上げようとしたら、バキッっと……」
「・・・・」
「じっ自分でも情けないって思ってるんだからそんな顔するなよぉ……」
顔が少し赤くなるリリー。
「!!!(かわいいいいいいい!)」
「(いかんちょっと可愛いと思ってしもうた。)」
「なーんだ、ドラゴンじゃないんだ」
「やめてやれ、ルー」
「とりあえず話はわかったが、正直マジックアローとして使う場面は最近あるのかの?」
「まあ、正直最近は使う機会もめっきり減ったな。」
「じゃろ。普通の弓で良いではないか。」
「それなんだが」
「?」
「俺は……弓があんまりうまくないから魔術で補正してたんだ。
だから普通の弓じゃ狩りがうまくいかないんだ。」
「あー…なるほどのぅ。」
「だから魔術の使える弓がいいと。」
「(見た目は超美形で凛々しくてムキムキなのに、弓はポンコツでドジっ子って…いけない、鼻血が……)」
「おいなんか、鼻血出てるぞ」
「気にするな。妙な妄想してるんじゃろ。」
「んー、しかしのう。マジックウッドなんて、もう手に入らんし……」
「なんとかこれ直せないのか?」
「無理じゃ。わかるじゃろ」
「・・・・くそっ」
「それはなんか思い入れがあるのかぇ?」
「家に伝わる弓なんだ。俺の親もその親も、その親も代々使ってきたんだ」
「なるほどのう。」
「酒に酔ってたとはいえ、おれはなんて事を……くそっ」
「・・・・もう夜更けじゃな。」
立ち上がったラニャはリリーに近寄り顎をクイッと掴む
「!!??(あわあわあわわわわ、絵が美しすぎますぅご主人様……)」
「なっ何だよ?」
「建設的な案があるがおぬし金は持っておるか?」
「わるいが、ない。人間社会のルールはめんどくさくてさ」
「ならば身体で払ってもらおうかのぅ?わしは女もいける口でな?」
「始まった。師匠の悪い癖が。」
「あーん!ずるいです私もまぜてくださいましー!」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!心の準備が!」
「さあ奥の部屋にゆこうか?サロもリリーも可愛がってやるからのぅ?」
「女同士楽しみましょう♪」
「ちょっまって…!助けてくれルー!」
「ごめんね、お姉さん。どうやら2人にかなり気に入られちゃったみたいだから……でも弓の件はちゃんとするからさ」
「助けてくれー!」
バタン
「……僕も寝よう。」
その日は女3人は仲良く夜を楽しんだ。
~翌日~
「・・・・」
「やっぱり思った通りの相性の良さでしたねリリー様?」
「な!?わしのほうが相性よかったじゃろ!?なぁリリー?」
「・・・・」
「弓の件を、頼む。」
「ああ。すまん。いじりすぎた。」
「……ぐすっ」
「「(泣いてる!?)」」
2人のSっ気にまた火がつきそうになったが何とか押さえつけた。
ラニャは部屋の奥から何かを持ってきた。
「これが新しい弓じゃ」
「…………?」
それはいわゆるボウガンだった。
「腕にはめてみよ。」
カシッ
「おお……」
「これは弓から発展した、新しい弓じゃ。」
「へぇ。軽いな。」
「威力は弓ほどではないが制度が桁外れによい。一応魔術錬成もしてある。まあエルフは金属の装備は嫌いという話も聞くがどうなんじゃ?」
「いや、俺は気にしないな。鎧も来てるし。それより、これはどうしてもってたんだ?」
「ああ。わしは若いころ軍人だったんでな。」
「「!?」」
「そうなんですかご主人様!?」「そうだったの師匠!?」
「なんでこいつらが驚いてるんだ?」
「教えてなかったからの」
ラニャは自分の過去を話さない。
話したがらないのだ。
「これはその時に手に入れて、やめたあとに護身用に置いといたんじゃ。使わんかったがの」
「なるほど。それならまあいいか。弓の精度と魔術がつかえないのが難点だったからこれで大丈夫だ。」
「狩るのは小さい獣じゃろ?それくらいなら楽勝じゃよ。」
「ああ。助かった。恩にきるぜ」
・・・・
「2日も世話になったな。」
「いやいや、わしらが泊めてしまったみたいなもんじゃ。」
「確かにな。まあ久しぶりに同族……ではないがこっち側のやつと気を遣わず話せて楽しかったぜ。」
「また遊びに来てくださいね♪」
「またね、お姉さん。」
「ああ……また、くるよ。」
「次は夜泣きするでないぞ?」
「次は昼に来る!!!」
「……じゃあな。」
手を振って帰っていったリリー。
「ご主人様、軍人だったんですねぇ」
「知らなかったよ師匠。」
「・・・・」
長いソファーに座るラニャ。
「隠し事なんて珍しいですねぇ。」
横にくっついて座るサロ。
「隠してたわけではないわい。」
「聞かれなかったから言わなかったの?」
ルーはラニャの膝を枕にする
「なんじゃ~おぬしら」
「んー、ルーちゃんと私は多分同じ気持ちだと思いますよぉ?」
「家族なんでしょ?僕たち。」
「そうですぅ。大事なことは教えていただかないと!」
「拗ねちゃうよ?僕」
「・・・・なんじゃなんじゃ」
「私はラニャ様の昔話聞きたいなぁって思います♪」
「ぼくも。師匠の昔話聞きたい。」
「はぁ。」
「おぬしら、今度の日曜日出かけるがよいか?」
「?もちろん構いませんが?」
「ぼくも大丈夫だよ?」
「そうか。すまんがサロは黒いドレスを探して用意しといておくれ。ルーの服はある。」
「???どこかいくの?」
「日曜日までお楽しみじゃ。」
「・・・・」
「よいかサロ?」
「あっ、はーい!用意しておきますね♪」
「うむ。じゃあそろそろ夕飯の支度するかー」
「はーい。そういえばリリーさんにもらったジビエがありますよ!」
「あー食べたい食べたい食べたい!!」
「ルーは本当に肉好きだのぅ」
「師匠、いらないならちょうだいね!」
「やらんわい!」
エルフの世界も神秘の終わりを迎えつつあった。
この占い処はそちら側のモノにとっては最後の砦になりつつあったのだ。
ーメモー
エルフ:とがった耳を持ち美しい容姿をした存在。魔法と弓の扱いに長けているとされる。リリーもエルフだがかなり血は薄くなっており、長寿ではあるが不死ではない。
読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします!
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