第9話 のじゃロリ×淫魔③

 唇と唇で、真夜中の魔力ドレイン合戦が行われた。




 勝ったのは ……






「勝ったぁぁぁあ!コロンビア!!」

 ラニャだった。 謎のガッツポーズに意味はない。

 



「ま・・・・まさかサキュバスの得意分野で人間に負けるなんて・・・・」


「今日はエリクサーを三本キメたからの・・・・」


「ぐやじい~~泣」


 サロを見ると少しずつ薄くなっている。


「おおい!?なに成仏しかかってるんじゃ!?というより悪魔って成仏するの……?」


「多分契約切れですねえ。サキュバスの全力を出して負けちゃったので……はあ。」


「まてまて!おぬしわしの家でメイドとして働かんか!?わし、おぬしみたいなムチムチおっぱいの美女がだいすき……じゃなくて!今日ここに来た理由もきいとらんし……!」


「・・・・」

ジトー

サロはジト目でそのまま消えようとしている


「はい、沈黙は賛同ということで再契約じゃな。」

「ええ!?ちょっと!?」


『我、汝を使役するものなり・・・・以下略!』

「えええ!?雑じゃないですか!?」

 悪魔に生死の概念はなく、人間界に存在する悪魔は基本的に召喚術で契約された者だ。


 この場合はフリーランスになってこの世にとどまれなくなりそうなサロとラニャは再契約をし、なんとか消滅を免れた。


「あうぅう……なんか流れで契約更新されてしまいましたぁ……」

「安月給で働かされるよりましじゃぞうちは♪まあ、どうせ魔界に帰るだけなんじゃろ?悪魔は不死なわけじゃし」

「まあそれはそうですねぇ。」

「わしと楽しいすけべライフ送ろうよ~ねえ~」

 サロの腕にしがみついて駄々をこねるラニャ。


「はあ、わかりましたぁ。一つご相談にのっていただければそれでいいですぅ。」

「なんじゃ?ゆうてみ?」


 サロのひざに寝たまま、サロの髪をくるくるいじるラニャ。

「わたくし言った通り強い女性が好きな淫魔でして」


「珍しいのぅ。男はかなり寄ってくるじゃろ?」

「そうなんです!あのごつごつして汗臭いのが嫌で、もう困ったもので……」

「そういうのを好むのがサキュバスなんじゃがのう……色々いるんだなぁ~」

「そうですね。わたくしは一般的なサキュバスではないので……」


「仲間内でも、外でもわかってくれるものが少ないのはなかなか生きづらかったのではないか?」

「まあー……それは……」

「じゃろうな。

 ただでさえ人間の世界で戦争は減り、神秘はどんどん暴かれておる。

 こっち側のもの達は姿を変えて人間界に溶けこむか、人間にさとられない場所に移るしかないからのう」


「・・・・」


「二階で寝とるのもそういう子じゃ。

 あの子が生きていくには人間としての生き方を学ぶか、隠れて生きねばいかん。おぬしは決めかねておったんか?残るか、帰るか」

「わたくしは、次に仕える方を最後として魔界へ帰るつもりでした。」

「ふーん。仕えるなら強い女がいいのじゃな?」

「??ええ、それはもう♪」

「よし、ちょっと待っとれ。」

 そういうとラニャは奥の部屋に向かった。

「?」



 ~5分後~


「おまたせしたのぅ」

「はぁ。一体何……!!???」

 そこにいたのは白髪の美しい女だった。

 細く長く、美しい手足。

 身体のラインは程よいおうとつで長身。

 しかし爪は鋭く、目は幻想的な赤。

 ついでにちょっと着替えてきている。

 その非現実的な容姿が強者感を醸し出している。


「どっどどどちらさまですか??」

「さっきまで話しておったろぅ?わしじゃよ。おぬしのご主人様じゃ。」

 声まで低くなって、蠱惑的な色気を出している。

「ラッ、ララニャさん・・・・なのでしょうか?」

「【ラニャさん】じゃと?いけない子じゃな。ちゃんと【ラニャ様】か【ご主人様】と呼ぶんじゃ。ほれ。」

「はわわわわわわわ♪」

くいっと顎を持ち上げるラニャ。

鼻息あらく、そろそろ鼻血が出そうなサロ。


「慌ててる割に喜んでおるなおぬし?いけない子じゃ。【お仕置き】がいるかのぅ?」

「おおおおしおきですかぁ?♡」

「【お仕置き】は、あとでたっぷりな?まず飼い犬には首輪をせんとなぁ?のう、サロや?」

 サロの首に手をかける。ポンと首の周りに大きめの首輪が巻かれた。

「ご主人様、素敵ですぅ……はぁはぁはぁ……♡」

目がハートだ。

「いい子じゃサロ。【ご主人様】といえたのぅ。どうじゃこの家にいる気になったかぇ?」

「はい♪住み込んで働きます♪」

「本当にいい子じゃなサロや。よしよし」

「ははははーん♪ご主人様ぁ~♪」


 サロはSっ気のあるきれいな女性に弱い。

 サロの見た目はSっぽいが、ドMだった。


 ~翌日~


 ラニャはいつものスタイルに戻っていた。


「ほれメイド服じゃ」

「あら~可愛いですねえ♪」


 古風な給仕服だった。

 足首くらいまでスカートで隠れている。


「もっとミニスカートな物が出てくるかとおもいました。」

「あんなの邪道じゃ。この清楚さに隠された内なる野獣がいいのじゃ。

 おぬしはメイド服の良さがわかっとらんからみっちり教育するぞぇ。」

「ええ~」

「ししょ~おはよう」

「おはようじゃ、ルー」

「・・・・だれ?」

「メイドのサロじゃ。昨日雇った。」

「めいど?」

「家の事を色々やってくれる者じゃ。一緒に住むから仲良くのぅ。」

「初めまして♪サロといいます♪今日からよろしくねルー様?」

「うん。よろしくね、さろ」

「はい♪」

「ちなみのルーはおなごじゃ。」

「なんと!?こんな凛々しいのに!?」


 しゃがんで目を合わせるサロ。

「・・・・」

「・・・・?」

「・・・・ゴクリ」

「ゴクリではない」

 コツン

「あいたぁ!」

「品定めをするな!」

「だってー、ルー様がそっちに目覚めるかもしれないじゃないですかぁ~?」

「目覚めさせる、の間違いじゃろ?今、チャーム使おうとしたな?」

「・・・・あはっ♪」

「この淫魔め!ってそもそも淫魔なのか・・・・」

「そうでーす。ふふふっ。なんだか楽しくなりそうです!さあ何から始めますか?ラニャ様♪」




 こうして同居人がまた一人増えた。


 この日から

 わいわいがやがやした、のじゃロリと人狼少女と女好きサキュバスの共同生活が始まった。

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