第23話

 さて、それからもヨシオ君は一人で野球の練習を続けました。たまにはお父さんも一緒になって練習してくれたので、ヨシオ君はどんどん野球が上手になっていきました。もちろん勉強も忘れずにやっています。ヨシオ君には、男と男の約束も大事でしたが、たまごに絶交されるのは、もっといやだったからです。

 やがて、たまごの言っていたことが、本当になりはじめました。ヨシオ君は、本当にツイているのです。授業で先生にあてられても、そこがちょうど一番得意なところだったり、テストでもちょうど前の日に一生懸命やったところが出たりしました。ヨシオ君の成績はどんどん良くなって、クラスのみんなに一目置かれるようになりました。

 そして、とうとうヨシオ君に、野球をやるチャンスがやってきたのです。クラスのチームのキャプテンで、ピッチャーをやっているススム君が、

「ヨシオ君、一人人数が足りないんだけど、入らないか。一番ボールの来ないライトでいいからさ。」

と、誘いに来たのです。ヨシオ君は胸をドキドキさせながら、

「いいよ。」

と言いました。


 さて、結果はどうだったでしょうか。やっぱりたまごの言った通りになりました。大事な場面で、とても追いつけそうもない当たりを、ガッチリとれましたし、最終回にはなんとホームランまで打てちゃったのです。結局この日の試合は、ヨシオ君のおかげで勝てたようなものでした。

 クラスのみんなはびっくりしてしまいました。なぜって、おとなしくって体も小さいヨシオ君は、今まで全然目立たなかったのですから。みんなは急にヨシオ君のことを見直しました。

 なかでも一番びっくりしたのは、ススム君でした。ススム君は、あだ名をスーちゃんといって、クラスのガキ大将です。勉強の方は得意ではないのですが、遊ぶことになるとサッカーでも野球でも、そのほか何でも一番上手です。なかでも野球が一番得意で、チームではピッチャーで四番打者、おまけにキャプテンまでやっていました。

 スーちゃんは、ヨシオ君に言いました。

「あのホームランすごかったなあ。びっくりしちゃったよ。ヨシボウ、なんで野球がうまいこと黙ってたんだよ。こんなにうまいってわかってたら、すぐにチームに入れてやったのに。」

ヨシオ君はスーちゃんにほめられて、嬉しいよりびっくりしてしまいました。

「だって僕はちびだし、みんなうまいだろ。だから、どうせだめだろうって思ってたんだ。」

スーちゃんは、

「冗談じゃねえや。おまえよりうまいやつなんか、おれのチームにいるもんか。ヨシボウ、今日からチームに入れよ。最初っからレギュラーにしてやるからさ。」

クラスで野球が一番うまいスーちゃんにこう言われたのです。ヨシオ君は大喜びで言いました。

「うん、そうするよ。」

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