第19話

 学校からの帰り道で、ヨシオ君はぶつぶつと文句を言いながら、歩いていました。

「チェッ、何がツキを呼ぶだよ。ちっともいいことなんかなかったじゃないか。おまけに明日はテストがあるっていうし。」

 ここまで考えた時です。ヨシオ君は、急に朝のたまごの言葉を思い出しました。そうです。テストで百点が取れちゃうんです。そう思ったら急に気が楽になって、ヨシオ君は家へ帰ってからも算数の勉強を全然しないで寝てしまいました。

 次の日、いよいよ算数の時間がきました。先生は昨日言ったように、ちゃんとテストの問題を持ってきました。

 さあ、今からテストが始まります。ヨシオ君は自信満々で問題を読み始めました。ところがです。どういうわけかヨシオ君の苦手なものばっかりで、全然わかりません。今度はたまごも黙っていて、教えてくれません。結果は、もうメチャクチャでした。ほかのみんなはいい点を取ったのに、ヨシオ君は0点にはならなかったものの、クラスで一番びりで、先生にも、お母さんにも、大目玉をくってしまいました。


 特にお母さんのは大変でした。

「ヨシオ、何ですか、このテストの点数は。学校から帰っても、全然勉強しないで野球ばっかりやってるから、こんな点数を取るんです。あとでお父さんが帰ってきたら、うんと叱ってもらいますからね。」

 ヨシオ君は、ため息をつきました。お父さんは、ふだんはやさしいのですが、怒るとものすごくおっかないのです。ヨシオ君は二階に上がると、自分の椅子に腰かけて、たまごに文句を言い始めました。

「フン、なんだい。たまご君の嘘つき。ツキを呼べるって言ったじゃないか。だから勉強していかなかったんだぞ。おかげで先生にもお母さん芋大目玉をくっちゃうし、あとでお父さんにも怒られちゃうじゃない。たまご君は知らないだろうけど、お父さんって怒ると怖いんだから。きっと、もう野球の練習なんかさせてくれないよ。たまご君の嘘つき。どうしてくれるんだよ。」

 考えれば考えるほど、くやしくって腹が立ってきます。こうしてヨシオ君がプンプン言っていると、たまごがいきなり話しかけてきました。

「ヨシオクン、ソンナニオコルナヨ。テストデワルイテンヲトッタノハ、キミガワルインダヨ。ボクハ、ツキヲヨブコトガデキルトハイッタケレド、アタマヲヨクスルコトガデキルトハイッテナイヨ。イクラツキヲヨビコンデモ、キミガナニモヤッテナインジャ、ドウニモナラナイヨ。イイカイ、セッカクツキヲヨビコンデモ、ヨシボウガソレヲニガサナイヨウニドリョクシナキャ、ツキハニゲテッチャウンダヨ。」

「よくわかんないよ。」

ヨシオ君は、まだふくれています。

「ヨシボウ、ツイテルッテイウノハネ、タトエバヨシボウガバッターニナルト、イチバントクイナコースニボールガトンデクルッテコトサ。キミガチャントレンシュウヲヤッテレバ、ゼッタイホームランダヨ。デモ、ヤキュウヲハジメテヤルコニハ、トクイナコースナンカナイヨネ。レンシュウシテナカッタラ、ハジメテヤルコトオンナジデ、ドンナニイイボールダッテウテルワケナイヨ。

 ベンキョウダッテオナジコトサ。ゼンゼンベンキョウシテナカッタラ、トクイナモンダイナンテアルワケナイダロ。イクラボクガツキヲヨボウトシテモ、ヨベナイジャナイカ。」

 なるほど、言われてみると、確かにその通りです。さっきまでぷりぷりしていたヨシオ君も、すっかりしゅんとなってしまいました。

「あ~あ、結局僕が悪いのか。でもお父さんのカミナリ、おっかないだろなあ。いやだなあ。」

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