第18話
ヨシオ君はその授業が終わるのを、いらいらしながら待っていました。それで、やっとベルが鳴ると、すぐたまごに話しかけました。
「ねえ、たまご君、どうして助けちゃいけないの。それに、そんなこと、いったい誰が決めたのさ。」
「クワシイコトハイエナインダケド、オバケニモキマリガアルンダヨ。チャント、オバケノオウサマガキメタンダ。」
ヨシオ君は、目の玉がひっくり返るほどびっくりしました。だって、つい昨日までおばけがいるってことさえ信じていなかったんです。それが、おばけのたまごと友だちになっただけでも、びっくりして目を回しそうなのに、おまけにおばけの国まであるっていうんですから、びっくりするなっていう方が、どうかしています。
ヨシオ君は、しばらくぼーっとおばけの国ことを考えていました。おばけの国って、どんなところにあるんでしょう。たぶん、人が行かないところです。だからきっと深い深い山の中です。そこに緑の木々に囲まれて、おばけの国があるのでしょう。そして王様はお城に住んでいて、魔法で国を治めているんです。きっとおばけたちは、町や森を飛び回って暮らしているんです。人間みたいに、歩かなくってもいいにちがいありません。こんな風に考えていると、目の前をいろんなおばけが飛び回っているみたいな気がしてきます。
授業のベルが鳴って、ヨシオ君はやっと我に返りました。ヨシオ君は、たまごに聞きました。
「ねえたまご君、おばけの国ってどこにあるの。おばけの国って、どんなところなの。いっぺんでいいから、僕を連れてってよ。ねえってば。たまご君。」
たまごは、しばらく何も言いませんでしたが、やっと、
「ダメダヨ、ニンゲンハツレテイケナインダ。オバケノクニノキマリデ、ハナシテモイケナインダ。ソレニ、トテモトオイトコロニアルシネ。」
と言いました。ヨシオ君はふしぎに思いました。
「じゃあ、なんでたまご君はここにいるんだろう。」
するとたまごが答えました。
「ボクハニンゲンノセカイガミタクテ、オバケノクニヲトビダシタンダ。ソシテニンゲントトモダチニナリナガラ、タビヲシテルンダヨ。」
そして、それ以上のことは、ヨシオ君がいくら頼んでも、教えてくれませんでした。ヨシオ君も、
「きまりじゃしょうがないな。それにあんまりしつこく聞いて困らせると、たまご君がどっかへ行っちゃうかもしれないな。」
そう思って、あまりしつこく聞こうとはしませんでした。
その日も授業はいつものように進んで、別に変ったことはありませんでした。ところが授業が終わると、先生はニヤニヤしながら言いました。
「明日、算数の時間にテストをやります。みんなちゃんと勉強してくるように。」
みんなはそれを聞いて口々に
「えーっ}とか、「そんなのないよ。」などと、言い始めました。先生はそんなみんなをながめながら言いました。
「先生だってテストは嫌いだったよ。でもね、みんながいつもまじめに勉強していれば、テストなんてちっともいやじゃないはずだ。先生はみんながちゃんと勉強しているかどうかを確かめたいから、テストをするんだ。だから、しっかり勉強して来いよ。」
先生がそう言ったので、生徒たちはしぶしぶ
「は~い。」
と言って帰って行きました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます