第12話

 ねぼすけのお姉ちゃんを起こすのは、ヨシオ君の役目です。お姉ちゃんはヨシオ君より三つも年上のくせに、いつも目覚まし時計が鳴っても平気な顔をして、ねているのです。ヨシオ君は、まだぐっすりねているお姉ちゃんの顔を見てニヤッと笑いました。

「今日はどうやって起こしてやろう。またふとんの上にのっかってやろうかな。」

するとその時、たまごの声が頭の中に聞こえてきました。

「タオルヲミズデスコシヌラシテネ、ホッペタニペタットクッツケルンダ。ソレカラオオキナコエデ、『オバケ』ッテイウンダヨ。ゼッタイトビオキルカラ。」

 これは、いい考えです。ヨシオ君は急いで洗面所に下りて行って、タオルをぬらしてきました。そして、そーっと近づいて、お姉ちゃんのほっぺたに、いきなりタオルをペチャっとくっつけてました。それと一緒に大きな声で

「おばけー」

と言うと、お姉ちゃんはものすごい声で

「キャーッ。」

と言って、飛び起きました。よほどびっくりしたのでしょう。半べそをかいています。そしてあたりを見まわして、ようやく目が覚めたのか、いきなり

「コラッ、ヨシオー。」

と言うと、ヨシオ君をつかまえようとして、すっとんできました。ヨシオ君はパッと身をかわすと、

「ヤーイ、お姉ちゃんのねぼすけ。ちゃんと起きないから悪いんだぞ。」

と言いながら、逃げて行きました。

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