第11話

 ヨシオ君は、ふと目覚まし時計を見ました。すると、もうお母さんが起こしに来る時間です。こんなところをお母さんに見られたら大変です。もし、秘密がばれてしまったら、せっかく友だちになれたたまご君をなくしてしまうかもしれません。いえ、それより先に、お母さんが目を回してしまうでしょう。ヨシオ君はたまごに

「そろそろお母さんが起こしに来るから、また箱の中に入っててね。学校が終わったら出してあげるから、またおしゃべりしようよ。」

と言いました。するとたまごは、

「チェッ、ツマンナイノ。アンナハコノナカナンテタイクツダヨ。ソレヨリ、ヨシボウノガッコウヘツレテッテオクレヨ。ポケットノナカナラ、ジャマニナラナイダロ。ソレニネ、ポケットノナカカラデモ、ヨシボウニハナシカケラレルンダヨ。」と言いました。ヨシオ君は、びっくりしました。

「僕の学校へ連れてってくれだって。もし見つかったらどうするつもりなんだろ。でも、ポケットの中からでも話しができるなんて、おもしろいな。そうしたら、今日一日退屈しないですむし、それに、もしおいていったら、心配で心配で、一日中うわの空でいるかもしれないもんね。よし、一緒に連れて行こう。」

 ヨシオ君はそう決心して、たまごの方を見ました。すると、もうたまごは宝箱に中に戻っていて、言わなくてもわかってるよ、とでも言いたげに、目をパッチリさせてウインクをしました。


 ヨシオ君は箱のふたをそっと閉めました、すると、下からお母さんの上がってくる足音がしました。ヨシオ君は、あわててふとんの中へもぐりこむと、目をつむってねたふりをしました。

「ヨシオ、起きなさい。朝ごはんですよ。早く起きないと遅刻してもしりませんよ。」

お母さんはそう言うと、ヨシオ君のかけふとんをさっとめくりました。

「う、う~ん。」

と、ヨシオ君はまるで本当にねむくてたまらないみたいな声を出して、目をこすりながら起き上がりました。お母さんは、そんなヨシオ君を見てニコッと笑いながら、

「ほらほら、さっさと顔を洗って、着替えちゃいなさい。お母さんは朝ごはんのしたくで忙しいから、ちゃんとお姉ちゃんを起こすんですよ。」

と言うと、また階段を下りてゆきました。

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