第7話

「へへへ、ばれちゃったか。」

ヨシオ君は、そう言って頭をかきました。

「ところで君はいったい誰?」

「ウン、ボクハキミノオモッテイルトオリ、オバケノタマゴサ。ボクヲヒロッテ、メヲサマシテクレテ、アリガトウ。ネエ、キミノナマエハナンテイウノ。」

 おばけのたまごは、そう言うと、また目をパチクリさせました。

「僕はヨシオっていうんだ。でもね、みんなは僕のことをヨシボウ、ヨシボウっていうんだよ。」

ヨシオ君はそう答えてから、

「ねえたまご君、僕の友だちになってくれない?君のことは、誰にも話さないからさ。」

と、言いました。

「トナリノナオチャンニモカイ?」

と、たまご君が言ったので、ヨシオ君は思わず赤くなって、

「ど、どうしてなおちゃんのことを知ってるのさ。それになおちゃんがどうしたっていうのさ。別にあんな子なんか・・・」

と、むきになって言いだしましたが、

「ダメダメ。ダッテ、ボクヲナオチャンノシャシントイッショニ、ハコノナカニトジコメタジャナイカ。ヨシボウハナオチャンガスキナンダロウ。トボケタッテチャーントシッテルンダカラ。」

たまご君はそう言うと、いたずらそうな目つきで、ウインクをしました。

「デモ、トモダチニハナッテアゲルヨ。ソノカワリ、ボクガタマゴカラデラレルヨウニナルマデ、ココニオイテオクレヨ。」

「うん、いいとも。」

と、ヨシオ君は思わず大きな声で言いました。



 すると、誰かが肩をゆさぶりました。

「まあまあ、こんなところでうたたねなんてしちゃって、風邪でも引いたらどうするの。早く起きなさい。」

お母さんの声です。ヨシオ君は、フッと目が覚めました。

「あれ、お母さん何してるの。」

お母さんは腰に手を当てて、ヨシオ君を見ました。

「何してるのじゃないでしょう。勉強してるのかと思ったら、こんなところでうたたねなんかして。さあ、さっさと寝なさい。」

「はーい。」

と、ヨシオ君はまるでうわの空で、返事をしました。ヨシオ君はさっきのことを、一生懸命に考えていたのです。

「おかしいなあ。さっきのは夢だったのかなあ。」

ふと見ると、宝箱のふたも、ぴったりと閉まっていますし、あのたまごも机の上にはありません。ヨシオ君には、ますますわけがわからなくなってしまいました。

 ヨシオ君がぼーっと考えていると、

「ほらほら、早くパジャマに着替えて。早く寝ないと明日遅刻してもしりませんよ。」

お母さんは、ふとんを敷きながら、ヨシオ君に言いました。

「ねえ、ヨシオ・・・。」

「なあに。」

「さっき、どんな夢を見てたの。あなた寝言で『うん、いいよ』って、ずいぶん大きな声だったわよ。」

 ヨシオ君はドキッとしました。たまごのことがばれたら大変です。それであわてて、

「な、何のこと。ねえ、僕そんなこと言ったの。」

と、とぼけてみせました。


「きっと、お母さんが急に起こしたから、忘れちゃったんだよ。」

お母さんはニコッと笑って、

「あらあら、ごめんなさい。さあ、おふとんが敷けたから、早く横になって、さっきの夢の続きでも見なさい。」

と言って下へ降りて行きました。

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