第6話
気を失っている間に、ヨシオ君はふしぎな夢を見ました。いいえ、ひょっとしたら夢じゃなかったのかもしれません。夢の中で、ヨシオ君は箱をそっと横目で見ていました。するとカチッと音がして鍵がはずれて、ふたがひとりでに開いてゆくではありませんか。ゆっくりと、少しずつ、でも音はしません。とうとうふたが開ききりました。そして中から、何かが出てこようとしています。
何だかわかりませんが、灰色でくねくねしています。へびのようにも見えますが、それにしては、のっぺらぼうです。そいつは、箱から顔を出すと、ぐーんと伸びました。まるで、ゴムでできているみたいです。そして頭が机の上に届くと、今度はすーっと縮まってきました。頭が机にくっついているので、箱の中に入っていた尻尾も、机の上に出てきました。どんどんどんどん縮まります。最初は細長いへびのようだったのが、だんだん太く短くなってきて、ソーセージのようになり、たるのようになり、とうとうあのたまになりました。いえ、もうたまじゃありませんね。これからはたまごと呼ぶことにしましょう。
「ハハーン、ああやって出たのか。」
と、ヨシオ君は思いました。ヨシオ君は、これからどうなるか、見ていてやろうと考えて、もうちょっと、じっとしていることにしました。もし外へ逃げようとしたら、つかまえてしまえばいいんです。別にあわてなくても平気でしょう。
たまごは、しばらくじっとしていましたが、だんだん動きはじめました。まず、たまごの表面がいきなりでっぱって小さな角ができ、またあっという間にひっこんでしまいました。たまごのあちこちが、こうして次々とでっぱってはひっこんでいきます。まるでたまごの中に何かがいて、それが外に出たがって暴れているみたいです。
そのうちに、あきらめたのでしょうか、またたまごは、動かなくなりました。そして・・・、おやおやこれはどうしたことでしょう。真っ黒なかわいい目が二つ、パッチリと開きました。まるで、目だけがくっついた作りかけの雪だるまの顔みたいです。
たまごは目をパチクリさせて、しばらくキョロキョロとあたりを見まわしていましたが、いきなりヨシオ君の方を向きました。そして、
「ネエ、オキナヨ。ネタフリヲシテルノ、チャントワカッテルンダカラ。」
こんな声が、ヨシオ君の耳に聞こえてきました。なんともおかしな声です。まるで頭の中に、じかにとびこんできたみたいです。ヨシオ君は、思わず顔をあげてしまいました。
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