第5話

 ヨシオ君は、腕を組んで箱を見ました。この箱なら大丈夫です。いくらあいつが変なたまでも、絶対に逃げ出せっこありません。ヨシオ君は、たまを箱に入れると、ふたをきっちりと閉めて、しっかり鍵をかけました。それからご飯を食べに、下へ降りて行きました。

 ヨシオ君は、ご飯の時にも、あのたまのことは誰にも話しませんでした。だって、話したって誰も信じてくれやしないし、そんなものは捨ててしまいなさいって言われるに決まってますから。

 ヨシオ君は、いつもよりも急いでご飯を食べると、

「ごちそうさま。」

と言って、さっさと二階に上がってしまいました。お母さんも、お姉さんも

「ヨシオったらどうしたのかしら。いつもなら、最後までテレビの前に頑張っているのに。」

と思いましたが、

「宿題でも出たんでしょう。」

と思って、別に気にしませんでした。

 トントントンと階段を上って、ヨシオ君は急いで部屋に入りました。するとどうでしょう、あのたまが、机の上にちょこんとのっかっているではありませんか。ヨシオ君は思わず

「あっ」

と言ってしまいました。それから、あわてて机に駆け寄ると、たまを手に取りました。そして、今度は宝箱を念入りに調べ始めました。

 鍵は?確かにかかっています。ふたも閉じています。箱のどこにも穴なんか一つもありません。ヨシオ君は、おそるおそるふたを開けてみました。ヨシオ君は、もう一回びっくりしました。なんと、あのたまがチョコンとおさまっているではありませんか。ヨシオ君は、握っていた手を開きました。するといつのまにか手の中は空っぽです。ヨシオ君は、思わず力いっぱいふたを閉めてしまいました。

 ヨシオ君は、あやうく大声をあげるところでした。背筋がサーっと冷たくなりました。

「こ、こいつは本当におばけだ。おばけのたまごなんだ。」

そう思うと、何だか急に力が抜けてしまい、ヨシオ君は机に突っ伏して気を失ってしまいました。

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