第4話

 見れば見るほど変なたまです。別にどこにも変わったところはないのですが、なんとなく妙な感じがするんです。ヨシオ君は、ほほづえをついて、なんとなくそいつを見つめていました。

 すると、ふしぎなことがおこったのです。ほんのまばたきするくらいの間ですが、そのたまの形が変わったのです。ヨシオ君は思わず、

「あっ」

と声をあげました。そしてそのたまをあわててつかむと、よく調べてみました。でも、たまは拾ったときと同じで、別に変ったところはありません。

「おかしいなあ。たしかに形が変わったように見えたんだけどなあ。それとも気のせいだったのかなあ。」

 ヨシオ君はそう思いましたが、それでもなんとなく、あきらめきれません。

「もしかしたら、もう一度形が変わるかもしれない。」

そう思って、またじっとたまを見つめだしました。すると、下からお母さんが、大きな声で呼びました。

「ヨシオ、ご飯ですよ。早くいらっしゃい。お姉ちゃんは、もうちゃんと来てますよ。」

ヨシオ君は

「ハーイ。」

と返事をして、下へ行こうとしましたが、ふと、

「もしかしたら、ご飯を食べている間に逃げちゃうかもしれないな。」

そんな考えが頭に浮かんできました。ヨシオ君は、どこか安全なところはないかと、部屋中を見まわしました。あった、ありました。ヨシオ君の大事な宝箱です。


 ヨシオ君の、誕生日のプレゼントにと、お父さんが買ってきてくれたものです。厚い木でできていて、見るからに頑丈そうな箱で、海賊の宝箱に似せて作ってあるのだそうです。そして、もっと嬉しいことに、この箱には鍵がかけられるのです。ヨシオ君は、この箱に宝物をいくつも、入れていました。きらきら光るビー玉、よく当たるおもちゃのピストル、ミニカー、それから、隣のなおちゃんの写真です。

 でも、このなおちゃんの写真のことは、誰にもないしょです。ヨシオ君は、なおちゃんのことが大好きだったのですが、恥ずかしくって、まだ誰にも言っていないのです。なおちゃんは、ほんとは直子といって、隣の歯医者さんの娘です。ヨシオ君と同い年で、小さいころから大の仲良しでした。でも、この頃は、何だか一緒に歩くのが照れくさくなってきて、わざと朝寝坊をして、遅刻ぎりぎりになって学校へとんで行きますし、学校に行っても、なんとなくなおちゃんのそばには行かないようにしています。そんなヨシオ君に、なおちゃんはちょっぴりさびしそうです。でもヨシオ君は、どういうわけか前みたいに気楽に声をかけられないのでした。

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