【コント】 ラーメン屋
ツッコミ「……ん? おお! 携帯見てて気づかなかったけど、なんだここ。ラーメン屋『ボナペティート』? たしかイタリア語で『いただきます』だったっけ。近所に住んでるのに初めて見る店だな。……ふむふむ、店の軒先に花を飾っているところを見るに、新しく出来た店っぽいけど、人の気配はなし。そこはかとなくヤバそうだな……でも、こういう店に挑戦してこそのグルメブロガーだよな! よし、さっきから俺の独り言がデカくて、往来の人がじろじろ見てくるけど、ここは気にせず入店してみるか!」
ボケ「ラッシャッセーイ!! セーイ! セーイ……セーイ……」
ツッコミ「セルフエコー……?」
ボケ「何円落としてくれますか?」
ツッコミ「いきなりがめついな!?」
ボケ「あ、申し訳ない、間違えました。……何名様ですか?」
ツッコミ「すごい間違え方だな……ひとりです」
ボケ「千円か……」
ツッコミ「え? いまなんて?」
ボケ「いえいえ! そんな! ぼくが大事なお客さんを一人当たりの客単価で見てるわけないじゃないですか!」
ツッコミ「こっちはまだ何も言ってないんですけど」
ボケ「……もう、席についていいよ」
ツッコミ「なんでやる気なくしてんの!? なんか帰りたくなってきた……」
ボケ「ンなこと言わずに食ってけって! ウマいから! マジで!」
ツッコミ「いきなり馴れ馴れしいな……まあいいや。メニューとかってありますか?」
ボケ「ないよ?」
ツッコミ「え!? ないの!?」
ボケ「ああ! ぼくは何者にも縛られない自由な鳥! 自らを律するような、メニューなんてものはないんだよ!」
ツッコミ「おまえをじっくり煮込んで鶏ガラにしてやろうか。……ということは、このお店ってすべてお任せってことですか?」
ボケ「うーん、いや、そもそも何を出そうか迷ってるんだよね」
ツッコミ「……開店してるんですよね?」
ボケ「そうとも言うし、そうじゃないとも言う」
ツッコミ「うぜえな。帰るわ」
ボケ「待て待て、待ってくれ給へ。きみ、ほら、あれだろ? グルメブロガーとかいう人種なんだろ?」
ツッコミ「な、なぜそれを……!」
ボケ「店の前でうるさかったから」
ツッコミ「ぐぬぬ……なんか恥ずかしい……!」
ボケ「こうやって巡り合えたのも何かの縁……ここはひとつ、その知識を生かしてメニュー開発に力を貸してくれないかい?」
ツッコミ「いやですよ」
ボケ「協力してくれたら飴ちゃんあげるから」
ツッコミ「正当な労働に対して支払われる対価じゃないですよね」
ボケ「いや、でもほんとマジでこの飴美味しいから! 見てて、今から舐めるよ!」
ツッコミ「なぜ?」
ボケ「うま!? ……え? うまま! マジでうまい。なにこの飴? キモ! むしろウマすぎてキモい!」
ツッコミ「なんて最低な演技なんだ……けど、わかりました。これ以上続けられても地獄なので、自分の役立てる範囲で手伝います」
ボケ「わあい、飴でブロガーが釣れたよ!」
ツッコミ「著しくやる気を削いでくるの止めてくれます? とりあえず、そうですね、ここの看板メニューを出していただけますか?」
ボケ「看板メニューかぁ……飴ちゃん、かなぁ」
ツッコミ「飴から一旦離れませんか?」
ボケ「飴がダメだったらもう、アーリオオーリオペペロンチーノとかしかないね」
ツッコミ「え? いまなんて?」
ボケ「アーリオオーリオペペロンチーノ」
ツッコミ「アーリオオーリオペペロンチーノ……イタリアの料理ですよね」
ボケ「アーリオオーリオ『エ』ペペロンチーノね」
ツッコミ「……でも、店長さんもさっき『エ』って言ってませんでしたよね?」
ボケ「エ!?」
ツッコミ「やかましいわ! ていうか、ここラーメン屋さんですよね。なんでイタリアンなんですか! そもそもなんで店名がボナペティートなんですか!」
ボケ「いや、イタリアで3年くらい修行してたし……」
ツッコミ「じゃあイタリア料理で店だせや!」
ボケ「いや、料理じゃなくて滝に打たれる修行だよ」
ツッコミ「イタリアで!? 3年間も!?」
ボケ「ちょっと解脱しようかなって」
ツッコミ「なんでコンビニ行くついでみたいな感覚で、悟りを開こうとしてるんですか!」
ボケ「なんか暇だったから」
ツッコミ「バカなんですか?」
ボケ「エ!?」
ツッコミ「もういいよそれ」
ボケ「じゃあこうしよう。今からイタリア料理店にするから、お客さんはそれを宣伝してよ」
ツッコミ「いいの!? でも、店はどうするんですか?」
ボケ「実家が金持ちだから何とでもなるなる!」
ツッコミ「……なんかムカつくな」
~3か月後
ボケ「なかなかお客さん来ないね」
ツッコミ「来ませんね」
ボケ「ちゃんと宣伝してくれたの?」
ツッコミ「ええ、そりゃもう」
ボケ「ちなみに、ブログ1日の平均アクセス数どれくらい?」
ツッコミ「そうですね。2、3人くらいでしょうか」
ボケ「もうお店、やーめた!」
ネタの墓場 水無土豆 @manji
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