第4話
第2章「げるまん」
るーちぇの姉が示したファントム星を探す旅をはじめた2人は、リミナルドライブの中でこれからどうするかを詳しく話し合っていた。
金銭面はるーちぇの仕事が旅をしながらでもある程度は行える職だった為問題は無く、燃料と水の補給さえ欠かさず行えば旅が出来そうだ。
問題は海賊と遭遇した時だった。
るーちぇの船は中型船、そこそこに大きくリミナルドライブでの航行距離はあっても通常時の移動速度は小型船より遅い。
また、武装なども一切装備されておらず
万が一到着した先で小型船の海賊等に出逢ってしまうと、逃げるにはリミナルドライブでその場を離れ長距離航行をするしかない。
そうなると場合によってはいつまで経っても目的の星へたどり着くことが出来ない。
海賊が居そうなところに向かう際は警備隊を雇い護衛してもらうのはどうかという案も浮かんだが、ファントムを探していることを知られるのはマズイ。
「どうしよう…」
「どないしよか…」
うーんと考え込む2人、しばらく沈黙が続いた後、るーちぇがホットココアを飲む音が静かな部屋に響いた
「そうするとオレが思いつくアイデアとしては、あとは…装備を買うかやな」
げるまんがビスケット菓子の袋を開きひとつ取っては口に含む
「えー、高いよう…」
「せやなぁ…」
「それにこの船に物騒なモノは付けたくないなぁ」
「それも分かる、この船元々は探検家のじいちゃんの船なんやろ?大事にしてるのも知ってるからなぁ…オレも勧められはせんわ」
げるまんの言葉を聞きながらるーちぇも開封されたビスケットを齧る、口に含み損ねた大きな破片が半重力によってゆっくり落ちてゆくのを片手で拾い口に入れる。
「あ!、物騒なモノやなかったらええんやろ?相手にも危害を加えへんもんはどうや?」
「なにそれ?」
「この前見たんや、ちょっとまってな…えーと」
げるまんが目の前に画面を開き何かを検索する
「これや、ほら電磁波みたいなンを周りに放出して相手の船の動きを止めるやつ。これなら相手に直接危害加えへんし船の外見も物騒やない、どうやろうか?」
表示された画像をるーちぇに見せる
そこにはL社の最新鋭!という大きな文字と一緒にアニメーションで船から衝撃波が発生し近くの船の電飾やライトが消える様子が映し出されており
海賊船に効果アリ!という売り文句も書かれていた
「こんなのあるんだ、これ、いいかも」
「な、ええやろ!」
「うん。これ幾らなんだろう…えーと」
るーちぇは画面を縦にスクロールし詳細を確認する
電磁波装置、3000エルと書かれていた。
「え、高っ!」
「ほんまや!?なんやこれぼったくりちゃうか?!」
普通武装類の相場は1000エル~1500エル程度であるが、それの倍以上の値段がそこには表記されていた
「んあー、これはアカンなぁ」
なんかごめんと謝るげるまん
「マモナク到着シマス」
そこへ船内アナウンスが流れる
ジャンプ先に設定していた星へと近づいたようだ。
「仕方ないね、海賊についてはまた考えよう」
アナウンスを聞いたるーちぇは立ち上がり操作室へと足を進めた。
リミナルドライブでジャンプが完了すると自動操縦を解除しそのまま近くの星へとガイドを表示しゆっくり航行する
ガイドに従い進むと惑星へと入れる大きなゲートが見えてきた。
そのまま発着場に入り2人は船を降りる。
ゲートと呼ばれるこの場所は惑星に入るための入口で入星審査口を超えると軌道エレベータになっている
るーちぇは民間パスを入口の警備隊に掲げそのまま軌道エレベータに乗り込む。
「ところでるーちぇ、なんでこの星に来たんや?」
「いつも通り惑星調査かな、あとはこの星にしかないものを買いに来た感じ」
「なるほど。…お、るーちぇ見てみい!ブラスタや!」
るーちぇの肩に乗っているげるまんがエレベータ内で嬉しそうに映し出されているモニターを指す、何かのコマーシャルのようで若い少女が可愛らしいというよりはカッコよく歌っている映像が映し出されていた
その少女はげるまんが好きなアイドルらしく肩の上で大人しく真剣な眼差しでコマーシャルを見ている
「いやぁ〜、やっぱ可愛ええなニーナちゃんは〜!」
「そうだね、ほら行くよ」
そうしている内にエレベータが惑星地上に到着する、落ちないでねといいるーちぇが惑星に足を踏み入れる
高層ビルがいくつも映え栄えた街並み、目の前の広場にはいろいろな広告が映し出されており大きな時計台の下には待ち合わせに利用しているいろんな種族のヒトがたくさん居た
「るーちぇ、るーちぇ!」
「わ。なになに?どうしたのよ」
広場を歩いているとげるまんが突然何かに反応したようで頬をぽんぽんと叩く
「さっきのブラスタのグッズが売ってるで!なぁ、行ってもええか?」
「叩かないでよ。いいよ、わたしトイレに行ってくるからその間に行っておいで」
はしゃぐげるまんを肩から地面に下ろしはいといいお小遣いとして4エルをげるまんに渡す。
「おおきに!何やエエモンあるかなぁー!!」
お金を受け取りウキウキした様子で物販へと足を運ぶげるまん、その背中をしばらく見つめたあとるーちぇは御手洗を探しに歩き出した
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御手洗を済ませ広場に戻ったるーちぇ、げるまんは買い物終わったかなと物販があった場所へ赴く。
物販コーナーは、人気のアイドルらしくかなり混み合い賑わっていた
「げるまーん、おーい」
人混みを掻き分けげるまんを呼ぶ
「あ、いた。げるまん行くよ!」
奥の方で小さな紫色した影を見つけるーちぇはげるまんの頭をぽんと叩く
「なにかいいモノあっt…あれ?」
「…?」
振り向くとそれはげるまんではなく、かなりそっくりだが別のドールだった
「おねえちゃん、だれ」
「げるまんじゃない…?」
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「ん、あれ…?」
どこかの狭い空間の中げるまんが目を覚ます
「…んにゃ」
ぼんやりとしている
ここが何処なのかがイマイチ分かっていないが分かるとするならついさっきまでアイドルの物販コーナーで好きなアイドルのプロマイドを見ていたのと、今誰かの膝の上で優しく撫でられていることだ。
いい匂いがする、心地がいい。もう少し寝ていようという気持ちになりげるまんは再び視界を閉じるーーー
「って、ちゃう!なんやここ?!」
「わっ」
間一髪で目を覚まし起き上がるげるまん
見るとここは車内でひとりの少女と目が合う
「どうしたの、チャッピ?」
その少女がげるまんを不思議な名で呼びながらまた顎下を撫でてくる
かなり気持ちのいい感覚に襲われる
「ふにゃ…えぁぁってやめ!やめんか…っ!オレはげるまんだっての!つかあんた誰や……?!」
うっとりするもすぐさま手を払い除け正気に戻る、若干キレながらも自分はげるまんだと名乗り少女を見る
「……に、ニーナちゃん?!?!」
つい先程まで見ていたプロマイドやら惑星に入る時に見たコマーシャル。そこに映っていた少女と全く同じ顔をしていた
「チャッピ、なんだか変だよ?熱でもある?」
謎の少女…ニーナと呼ばれた彼女はげるまんを相変わらずチャッピと呼び両手で抱っこしおでこをピタリとくっつける
顔がかなり近い
「ーーー!!?!?!」
そんな今の状況に理解が追いつかずげるまんは声にならない悲鳴をあげ、ぼっと音が出そうな程顔も赤らめそのまま
軽く気絶した。
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「それで、どういう訳かキミは迷子なんだ」
「うん」
一方その頃るーちぇは例の別のドールを一時的に保護し一緒に近くのファーストフード店で食事をしていた
注文したサラダを食べながら目の前のドールにいろいろ尋ねる
「名前はなんていうの?」
「ちゃっぴ」
「ご主人はなんてお名前?」
「まま」
「どこから来たの?」
「あっち」
人格が幼いのか名前以外が曖昧な答えで返ってくる
どうしたもんかと思いながらるーちぇはサイドのフレンチフライを口に含んだ
とりあえず警備隊に預けようかと悩んでいる時チャッピが真剣に後ろのモニターを見ているのに気づく
モニターにはとあるバラエティ番組が映し出されており司会のお兄さんが元気よく話している
「ではここで今日のペットのコーナーです!今回のゲストはこちら、時代を動かすアイドル、ニーナさんです!」
拍手に迎えられニーナが画面に映り出す
またあのアイドルかぁ人気すごいなぁとあまり興味無さそうにフレンチフライを齧りながら見ていると
「ままだ」
突然チャッピがモニターを指す
「…まま?」
「うん、まま」
「へー、キミのご主人…あのアイドルなんだぁ」
「うん」
流れるように受け答えをする
直後異変に気づき食べようとしていたフレンチフライを落とす
「ままぁ??!?!」
一際大きな声を出しガタと席を立つ、まわりのお客がるーちぇを見つめ一瞬の注目の的になった
「あの…お客様、騒ぐのは御遠慮ください」
お店のウェイターがるーちぇを注意する
「んんっ…!すみません。…ご主人があのアイドルかぁ…なんにせよ情報がひとつ分かったし警備隊に任せたら大丈夫でしょう…よかったねチャッピくん、ままの元に帰れるよ」
「うん」
とりあえず今は食事をしようとモニターを見ながら今度はドリンクカップを手に取りジュースを飲む
モニターにはかわいい動物や補助ドールの面白映像等が流れていた
「いやぁー可愛かったですねぇ」
「はい、面白かったです」
「ではここでゲストのニーナさんのペットを紹介していただきましょう」
司会のお兄さんが相変わらず元気よくニーナとやりとりをしてる
「あ、はいっ!ワタシのペットはこのチャッピちゃんですね!」
そこへ出てきたのはお世辞にも似合わない格好におめかしされた、ノビたげるまんがモニターに映し出された
「ブファ----ッ!!!!!!!!!!!」
「お客様ぁ?!??!」
突然のことに驚き盛大にジュースを吹き出するーちぇ
店員も驚きのあまり声が裏返る
そして再びまわりのお客がるーちぇを見つめ注目の的になる。さっきよりも見られる時間が若干長くもあった
「げほ、げほっっ…げ、るまん…なんであんなところに…っ!?」
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