第2話

「るーちぇ」

「…」

再びげるまんは背面をコードで繋ぎロボットアームを器用に動かしながら例の小惑星を回収していく

そんな作業をこなしながらげるまんはるーちぇに声をかけた

しかし返事は無く考え込むように一点を見つめていた

「るーちぇてば」

「わ、なっなに?!ごめんね、ぼーっとしてた」

ようやく声が届いたようでハッと我に返りげるまんに優しい笑みを向ける

「見たら分かるわ、…ここらの小惑星回収し終えたで」

アームが届く範囲の小惑星を回収し終えた事を伝えると次のポイントへ動かして欲しいと催促をして

るーちぇはごめんと伝え、言われた通りまた少し船を前進させる

「…姉ちゃんのこと、気になるんか」

「ん、…うん」

ロボットアームをまた動かしながら若干上の空なるーちぇにまた声をかける

今度は聞こえていたようでぼんやりながらも返事をする

「言ったっけ、お姉ちゃんね。ある日突然"おじいちゃんを捜す"って家を飛び出したんだ」

「おじいちゃん?」

「そう、おじいちゃんは…探検家でね。この銀河のどこかにあると言われてるお宝を探してるとかなんとか…詳しくは知らないんだけどなんだか胡散臭いよね」

ふふっと苦笑をするるーちぇ

「浪漫あるやん、でもなんでいきなりそうなったんや?」

「それはね、ある日おじいちゃんから手紙が届いてね。びっくりしたよ、何十年も会ってないのにいきなりだよ」

「っとと、そりゃびっくりするわな」

げるまんの操作するロボットアームが少しズレ、小惑星をつかみ損ねる

「その手紙を読んだお姉ちゃんが、後を追うように飛び出したの。私はその時まだ7さいだったから着いて行かせて貰えなかったの」

「ってことはアレか、その姉ちゃんともこういう形とはいえ数年ぶりに足跡が見えたんか」

一通りの回収終わったでと言うとケーブルを切り離すと格納室へと歩き出す

「足跡…なのかなこの手紙だけじゃ情報がまだないよ」

お疲れ様と一言添えてるーちぇも座標を打ち込み、オートパイロットにすると座席を後にしげるまんに着いていく


「なんにせよ、姉ちゃんからの手紙。ソレが本物やったら何かしらをるーちぇに伝えたいんや、そうやろ?

何かしらのヒントが隠れてるハズやもっぺん見直してみ?」

「…うーん、そうだね」

格納室に着くと回収した小惑星をベルトコンベアに載せ変換機と呼ばれる機械の中へ小惑星を順に入れ込んでゆく

変換機が大きな音を立てながら稼働し物理的圧縮を開始する。

圧縮されたミズゴケの小惑星から出てきた水分が変換機横のパイプを伝い隣の貯水槽へと運び込まれる。

まさにるーちぇたちポロルシア星人の為に設置された水を得る装置だ。

「うし、どうや?これだけあればええやろ」

「そうだね、助かったよげるまん」

小惑星をコンベアに運び終える、あとは自動で全てしてくれる。これでひと段落だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一通りの作業を終えるとげるまんは自分の部屋へ、るーちぇは操作室へと解散し各々が自由に過ごす。

るーちぇは拾った手紙をじっと見つめていた

「うーん」

何の変哲もないただの紙切れ、

正確にはこの世界で主流の紙で文字が発光をしている

「あれ?」

よーく目を凝らして見ると1部の文字の発光が緩い

そこをるーちぇは何気なく擦ってみた。

すると書かれていた文字が変化し1つの羅列を描き出した


622.415.2.31


「なんだろう…これ」

謎の数字の羅列に戸惑いながらもじっと見つめていると

「座標とちゃうか?」

「ひゃあ?!」

いつの間にか後ろに居たげるまんに声かけられ不意な事に驚くるーちぇ。

「それ、星の座標とちゃうか?」

「えっあ、…え。座標?」

「そや、いっぺん打ち込んでみたらどや?」

「う、うん」

言われるがままにるーちぇは手紙の羅列を惑星検索欄に打ち込む

するとひとつの星が絞り出された

「えっなにこれ」

その星は表記がバグっていた

星の名前も生態も読めずただ画像だけが分かる状況だった

「なんやこれ故障か?」

「分かんない…星の画像も見たことない星だよ」

「うーん、じゃあ座標とちゃうんかなぁ…」

考え込む2人、そこへ突然警告音が鳴り出した

「警告、ロックオンサレテイマス」

「わぁ?!」

「なんやなんや!?」

自動運転中の船が危機を予測して加速する

ロックオンをしてきた船の座標を割り当てレーダーに表示される

と同時にるーちぇはインスペクタのアビリティで電波を受信した

『そこの船、止まってください!…えーと、止まれば危害は加えません!』

「るーちぇ、海賊か?」

「分かんない、止まれって言われた…」

「どの道逃げられへん、止まるか」

「うん…」

座席に座りるーちぇは自動運転を解除し船を停止させる

『わっ、おねーちゃん!止まってくれたよ!……あ、マイク切ってなかった…ブツ』

海賊にしては間抜けなやり取りをるーちぇは聞きながら様子を伺う

やがて現れた小型船がるーちぇ達の船の横にぴたりと張り付く

「小型船やないか中型のオレらに歯向かうなんざええ度胸やないか!」

「げるまん、窓から睨みつけないで」

操作室上部にある小窓から顔を覗かせ船を見ているげるまん

「お、ヒトが出てきたで!2人組や!ブキは持ってへんな…」

どうしようとるーちぇは考える中再び電波を受信した

『あー…えーと。開けてください!僕達は怪しい物じゃない…です!あの…えっと…水を下さい』

「えぇ…。げるまん、いくよ」

気の抜けた声をるーちぇが発する

聞いてる限り怪しさはあるものの、危なさそうでは無いからとげるまんを連れ船の入口へと向かう


「開かないね、おねーちゃん」

「当たり前です〜、リトが変なこと言うからですよ〜」

外ではぽつんと棒立ちの2人組、片方が喉乾いたと話しているとやがて、るーちぇの船のハッチが開いた

「…」

「…」

お互い沈黙のまま入口と船外で棒立ち

少し遅れて小型船の2人組片方がペコリとお辞儀をした

「あの、こんにちは僕達水を求めててあの」

「ええーい、水を寄越すですー!私たちは海賊です〜!!」

ひときわ背の小さい少年が丁寧に話しかけてきたが痺れを切らしたのか少し背の高い少女のほうがやる気の無さげな脅しをかけてきた

「…」

それを見たるーちぇたちは特に驚く様子もなく

黙ってハッチを閉じた


「あぁっ?!おねーちゃんのばか!!!」

「あれぇ、何がいけなかったんでしょーか…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやぁ、助かりました〜」

「すみません強引なやり方をしてしまい」

結局あれからるーちぇ達は船内へ案内しコップ1杯の水を与えた

こくこくと喉を鳴らして飲み干した少女と少年がぷはぁと一息ついて改めてお礼を言う

「ボクはリトと申します、こっちは姉のシトリーです」

「よろしくです〜」

リトという少年が丁寧に挨拶をする

シトリーと呼ばれた少女は軽く会釈をした

2人はヤギ族の獣人でお互い片耳にピアスをしている

少し背の高い姉のシトリーは星型のピアスを左耳に

背の低い弟のリトは指輪型のピアスを右耳に

着ている紫の服には星のマークが所々に描かれている、どこかの星の制服のようなピシッとした服だった

「わたしはるーちぇ、こっちはげるまんです…2人は、海賊なんですか?」

るーちぇも挨拶を返して

「いえ、僕達は海賊じゃないです

ただの旅人なんですが、ご覧の通り水が不足してしまい…」

リトの会話に割り込むように限界だったんです〜とシトリーが話し

「この地帯はなかなか船が通らないエリアなのでもうダメかと思ってたところでこの船を見つけたんです、なので強引にロックオンさせて頂きました…ほんとにすみません」

「なるほど、確かにここらは船もなかなか通らへんもんなぁ」

げるまんがウンウンと頷きながら

「小型船なのもあって備蓄していた燃料も残り少なく、リミナルドライブが出来ないんです」

「そうだったんだ…」

リミナルドライブというのはこの世界の全ての船に搭載されているワープ機能でこの機能を使い星から星へジャンプする。

燃料を分けてあげたい気持ちはあるがこちらもドライブ1回分程しか無いため渡せないことにるーちぇはどうしようと悩む

「るーちぇ、ちょっといいか」

「どうしたのげるまん」

そこへげるまんが声をかける

「燃料渡さんでも、追尾航行で近くの星まで運んでやったらどや?」

「あの、もしよければ追尾航行でジャンプ先まで一緒させて頂けないでしょうか」

同時にリトが同じことを口にする

「なんや、意見は一緒やないかほれ、どないする?るーちぇ?」

ハモったように同じことを言ったのをわははと笑いるーちぇの背中をぽんぽんと叩いて

「そうだね、うん、追尾航行で連れてってあげる」

「!、ありがとうございます!!」

「よかったです〜嬉しいです〜ちなみに何処へ向かうんですか〜?」

シトリーのやる気の無いような緩そうな表情がじっとるーちぇを見つめる

これからどうするのかというよりは、もう一杯水をくれませんかと言いたげな表情で

「あ、お水まだいるかな?とりあえずは1番近いステーションへ飛んで燃料補給しなきゃだよね」

表情に気づいたるーちぇがコップに水を注いで

「わ、ありがとうございます。近くのステーションだとここからどっちの方角になるんでしょうか」

「座標調べといたで、ここからやとウルテミスって星のステーションが近いみたいや」

「よし、じゃあ早速飛ぼっか。リトくん、追尾航行体制に入って貰えるかな」

「あ、はいっ!」

先行ってるねと部屋を後にし操作室へ向かうるーちぇ。

リトたちはおかわりした水を飲み干し船を後にし自分たちの船に乗り込んだ。


お互いの操作室で追尾航行の体制に切り替え船の陣形を縦1列にする


リトたちの船の表示モニターに連結のアイコンが表示され操作権限がるーちぇの船に移る

るーちぇがそれを確認すると、ゆっくりと操縦桿を前に倒した。牽引されるように自動で後ろに続くリトたちの船


お互いの無線をオープン状態にし皆と会話が出来るようにも設定をする


「ほんとに何から何までありがとうございます」

「いいのいいの、困った時はお互いさま」

片手で操縦桿を握り片手ではキーボードに手を当てタンタンと近くのウルテミス星近くのステーションへのルートを打ち込む

「げるまん進路障害物は?」

「大丈夫やオールグリーンやで」

「リトくん、シトリーさん、リミナルドライブ発動するよ」

ピッピッピッとリズムよく3つのスイッチを入れる

「はいっ」

「お願いします〜」

徐々にリアクターの出力が跳ね上がりワープ体制に入る

目の前にはカウントダウンのモニターが表示されていて

「4…3…2…1…リミナルドライブ、発動シマス」

機械音声と同時にポ-ンと音が鳴ると、ぐいと一瞬身体が引っ張られる。

宇宙空間のあたりの点だった星が線となり高速航行状態に入った


到着予定時刻と距離が先程までは何時間何億光年とありえない数だったのがぐんと縮まり現実的な数字になる


「予定時刻40分やで」

「40分かぁ、結構距離あったんですね」

げるまんは時間を告げると座席を倒しリラックスした体勢になる

それを聞いたリトも別モニターを開き読書をする

「ところでなんですが〜、るーちぇ達はこれから何処へ向かうのです〜?」

読書を始めたリトを横目に見ながらシトリーがるーちぇに尋ねる

「んーと、特に考えてなかったかなぁ。出身惑星に帰ろうかと」

「るーちぇ、姉ちゃん探さんでええんか?」

リラックスした状態のまま首だけをるーちぇに向けるげるまん

「だって手がかりが無いんだもの…」

「せやからこれから行くステーションで情報収集やんかぁ!な、ええやろ?」

「手がかり〜?情報収集?なんだか面白そうですね〜?」

2人の会話に、シトリーが興味あり気に割り込んでくる

「その話、詳しく聞かせてくださいよ〜」

「ボクも気になります」

いつの間にかリトも興味を持ち始めていて

「もー、2人とも…」

あんまり面白くないよ?と添えてるーちぇは事の経緯を話す。救難ポッドを拾い手紙が入っていたこと、ソレが自分宛だったこと。

そしてこの手紙の送り主である姉は数年前に居なくなったこと、事の発端はおじいちゃんを探すこと。

そして謎の数字の羅列を教えた。

リトたちも座標ではないかと答えるがそれは違うかもとるーちぇは否定、一応座標として打ち込むもやはり同じように表記がおかしい見たことの無い星が浮かんだ

「この星は見たことないですね…」

「わたしも見たことないです〜」

リトとシトリーが星の映像を見てうーんと顎をかく

ただ、リトは星の画像をみて何か思い当たる節があるようだ

「あの、ボクの知り合いにこの銀河をくわしく知っている者が居るんです。もしかしたらそのヒトなら、この惑星が何なのか分かるかもしれません」

「リト、それってまさか〜…」

リトが2人にそう告げるとシトリーが反応しどこか嫌そうにしている

そんなシトリーは置き、リトがどうでしょうかと提案をする

「ほうほう、それは気になるなぁ!るーちぇ、早速真相に近づけるんちゃうか!」

「えっ、ええ?…本気で探すの?」

「当たり前やん、るーちぇの姉ちゃん探そうや」

未だにその気になってなかったるーちぇはみんなの熱意に驚き唖然とする

そんな様子を見てげるまんがバシバシと背中を叩く

「もう、わかったよ…行き詰まったら帰るからね?」

「おっしゃ、交渉成立やな!ほなリト、ステーション寄って燃料補給したらその人の所へ案内してくれへんか!」

渋々なところもありながらるーちぇはいいよと了承する

げるまんは嬉しそうにリトによろしくと伝えた

「うんまかせて!」

「いやー、楽しみやなぁ!」

リトがいいよと言うと早速ルート検索を行う

これからはじまる旅にげるまんはウキウキとしていて


そうこうしている間に補給地点のステーションが目の前まで近づいてきた。

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