第七話 水路という名の
アリエスの万物鑑定にかかれば隠されていようが入れなくしてあろうが、そんなの関係ねぇのである。
ということで、さくっと隠し通路を開いてそこへ入って行く面々。
ウェルリアムは転移スキルの一部である転移マーカーでこの場所をマークして、いつでも来られるようにして、後を追った。
もちろんアリエスがいなくても行けるように隠し通路の中にマーカーを置いている。
隠し通路の先にはいくつか部屋があり、中には保存食や携帯食糧などが置かれていたが、年数が経ち過ぎているため廃棄しなければならない物ばかりであった。
色々と物色していくうちにレベッカは気付いた。
ここが先代アラムによって作られた場所だと。
そして、レベッカとなった今の自分が、隠されていたここを見つけられなかったことにジリジリとした感情が広がっていく。
前世で培った知識があっても、所詮
挑むような笑みを浮かべたレベッカは、自身の前世であるピートを必ず超えてやると決意した瞬間であった。
レベッカの決意など知らぬアリエスは、ここ掘れワンワンな印象を抱きつつあるジョルジュへと他に何かあるか聞いた。
「んー?分かんない。引っ張られることないから、今のところ何もないかも?」
「そうか。ロッシュ、この先にも通路らしきものがあるんだよな?」
「はい、ございました。これより先は時間的に明日以降になさった方が良いかと思われます」
「そうだな。リム、また頼めるか?」
「はい、大丈夫です。ここが帝国へ続いているとなると、こちらを優先しなければいけませんからね」
教育向上推進部門室長としての仕事と国王の側近としての仕事、それに加えて第一王女コンスタンサの始末があるため忙しいのだが、恐らく室長としての仕事を減らしてこちらを優先することになるだろうとウェルリアムは言い、アリエスたちを転移で研究所まで送って行った。
戻ってきたアリエスたちに気付いたジョルジュの側近たちは、彼が無事であったことに胸を撫で下ろし、シラタマを紹介されてデレデレしている。
敬愛する
ちなみに、アリエスの所持属性が変化したときにジャオの見た目にもそれが反映されており、背中に黒の流線模様が入り、ボディは金のラメをまぶしたようにキラキラとしている。
ちょっと、やんちゃな見た目が気に入っているアリエスであった。
翌日からも穴の調査を行ない、外へとたどり着くまでに何日もかかったが、水が流れて行っている先と隠し通路は途中で合流していることが分かった。
その頃にはジョルジュは水鏡を通して精霊が見ているものを映すことが出来るようになっており、それを利用して外を水鏡に映してみた結果、この先が帝国で間違いないことが分かった。
レベッカはピートであった頃にここら辺を見た覚えがあり、そこはかつて乾いた荒れ地であったと言う。
しかし、今は緑がそこそこ生い茂っていることから、あの滝へ流れるはずであった川の水の恩恵を受けていることが窺えた。
他国の水を勝手に引くことは戦争の理由にもなるもので、これは明らかに宣戦布告案件である。
冷ややかな笑顔を浮かべるロッシュとレベッカ。
今は、血縁関係にないのだが、その様子はそっくりであった。
穴から流れている川の水は、湧き水のように偽装が施されているため、このまま穴を埋めていってしまえば水源が枯れたように思われるだろうということになり、この水路という名の侵入経路は諜報部隊に任せることにした。
隠し通路は水路と合流しており、そこへ至るまでの時間は水路の半分ほどであるため、この水路が見つかってしまったとしても隠し通路を使って先回りし、相手を始末することが可能であった。
先代アラムが裏切りにあって死亡したことにより、継承されることがなかったこの水路。
ここが現役で使われていたらと思うと、ゾっとした出来事であった。
「先代アラムは誰も信用することがなかったのよ。アレが誰かを信じて託すということが出来ていれば、危ない場面はあったと思うわ。ただ、ねぇ……、内側から崩壊させようと辺境伯を仲間に引き入れたところで、辺境伯ごと潰されて終わりなのよ。血が流れるのが多いか少ないかでしかないのよね」
「あー、そういやハインリッヒさんたちの親父さんが気付いたんだっけか。あれか、証拠を突き付けて速やかに掃除するか、疑いからの家宅捜索に踏み切って衝突するかで、辺境伯から兵を差し向けられるところまではいかないのか」
「兵を差し向けられた時点でプレゼントを持って
ソレルエスターテ帝国との戦端が開かれ、その結果ハルルエスタート王国は国土を広げていくことになった。
帝国の方が優勢だろうとそちらにつき、ハルルエスタート王国へと兵を差し向けたところは、少数の兵を率いた
他国は蹂躙、自国の貴族が裏切れば暗部がプレゼントを置いていく。
それが何であるかをレベッカが語らなかったのは、そんな血なまぐさい話をアリエスにしたくなかったからである。ロッシュが冷ややかな視線を向けてきたのもあるが。
プレゼントはその時々によって違うが、ピートや精鋭たちが誰かの首を置いてきている話をロッシュは知っていたので、それ以上話させるのを止めたのだ。
こうして水路の発見という手柄をあげたジョルジュは、アリーたんに褒めてもらい、テレーゼ特製のデラックスパフェを堪能したのだった。
もう扱いが……、誰も何も言わないが、ペットである。
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