6 家族といえども
第一話 リムの報告と次の予定
デビュタントの夜会を終えたアリエスは、くたくたに疲れたのでディメンションルームのコテージにてグデグデした日々を過ごしている。
ウェルリアムの母親であるララは、貴族籍を持っていた。
つまり、彼女はミドルネームを持った貴族令嬢だったのだ。
そして、ララが孤児院で育ったことを考えると、駆け落ちした両親を見つけることは困難であるとして、今後も捜索はしない方向で決まったということを訪ねて来たウェルリアムから聞いたアリエス。
「まあ、生きてたとして、安定した生活を送れていたとして、一度手放した
「そうですねぇ。アリエスさんと出会わなければ母は今頃生きていませんでしたからね。弟妹とも出会うことはなかったでしょうし」
「リムとリサのことは話したのか?」
「あの場では言えませんでしたからね。日を改めて、ということで昨日集まって話をしました。皆、顎を落として固まっていましたよ」
それは、そうだろう。
ウェルリアムは、ヤオツァーオ公爵家嫡男の第二子として第一王女コンスタンサと婚約しているのだ。
それがまさか父親が違うと知れば驚くだろう。
「陛下もご存知だということで胸を撫で下ろしていましたが、心臓に悪いと愚痴られましたよ」
「ははっ、そりゃそうなるわ。だけど、コンスタンサとの婚約はリムありき、だ。リムの出自なんて関係ねぇよ。まあ、伯爵家令嬢が産んだ私生児ってことを考えると、何とも言えない感じはするけどな」
「ああ、母が伯爵家の貴族籍を持っていたので、僕とリサはそうなりますね。本当に、アリエスさんとパーティーの皆様、受け入れてくれたヤオツァーオ公爵家の方々にも感謝しかないですよ。本当に、ありがとうございます」
「私としては父ちゃんのことを押し付けた感じだからな。ギブアンドテイクだって」
ヤオツァーオ公爵家から
全てを明かされなければメルリーサを孫娘だと知らずにいたのだと知った彼らは、自分たちを信じて話してくれたことに感謝すると言い、話し合いが終わったあとはヤオツァーオ公爵家嫡男とララとの間に生まれた、ちんまい双子の兄妹をデレデレと可愛がったのだった。
ウェルリアムは、お土産にテレーゼ特製のキントンパイかぼちゃバージョンを持ってニマニマと帰って行った。
アリエスが、あつあつのパイをはふはふと食べていると、ロッシュから「グラントゥルコ侯爵領に到着いたしましたよ」と、声を掛けられた。
「今は……、14時かー。んじゃ、テキトーなところで降りて見てみるかな。そういえば、何で困窮してんだっけ?」
「農作物が実る前に枯れてしまい、収穫が出来なくなっていると聞き及んでおります」
「へぇー。肥料が足りねぇのかな?それとも合わないとか?気候とかも関係あんのかなぁー」
パイを3つ食べて満足したアリエスは、幸せそうな笑みを浮かべて馬車から降りた。
いつもの如く、馬車内にディメンションルームの入り口を展開してアマデオ兄貴にカッ飛ばしてもらっていたのだ。
アリエスがうまうましている間にアマデオ兄貴が走り続けた結果、畑のど真ん中に到着したのだが、「丁度いいか」と言ってしおしおに萎れている苗が植わった畑をアリエスは万物鑑定してみた。
「んー。肥料が合ってない?全体的にそうなのかな?ちょっと他のところも見てみるか」
「では、アマデオに乗って見て回りますか?」
「そうするー」
ロッシュと2ケツでアマデオに乗ったアリエスは、すったかたったったー!と走って移動してもらっては鑑定するを繰り返した結果、肥料が合ってない、肥料のやり過ぎ、または足りない、水が多かったり少なかったりと、作物と育て方が合っておらずメチャクチャになっていることが分かった。
「ここまでチグハグだと、いっそスゲェな……」
「わざとではないでしょうが、何らかの意図を感じますね」
「あー、グラントゥルコ侯爵領を手に入れたいヤツが、こうなるように仕向けた可能性もあるのか。じゃなければ、ここまでチグハグなことにはなってねぇか」
「その可能性も視野に入れておいた方が良いかもしれませんね」
いくら侯爵領を手に入れたいからといって、これでは領民の生活だってメチャクチャになっているだろうにとアリエスはちょっと怒っていた。
偶然こうなってしまったのであれば、無能なトップをすげ替えるだけで済むが、何者かの介入があってこうなったのならシバいてやる!と、ぷんすかしている。
ロッシュがぷんすかしているアリーたんを見てデレっとしているが、いつものことだとスルーを決め込むパーティー"ギベオン"のメンバーたち。
とりあえず、領民に話を聞いて誰かから指導を受けたのか、そうであるならば誰から受けたのかをメンバーたちに聞いて来てもらうことにしたアリエスは、ミストとブラッディ・ライアンにこの状況を改善できないか見てもらうことにしたのだった。
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