第五話 攻略
扉に書かれていた文章をアリエスが読み上げると、宝石のような赤い石から黒いモヤが噴き出し、その色を黒く染め上げた。
完全に真っ黒になったところで扉がゴゴゴ……と砂を引きずるような音と共に開かれたので、アリエスたちは慎重に周囲を警戒しながら中へと入ったのだった。
万物鑑定しながら進んでいたアリエスの視線の先には、棘がビッシリついた真っ黒なバラの
メンバーが全員、中に入り終えるとバタンっと扉が閉じられ、真っ黒な
「
「アブソリュートゼロ!からのー、ヘルファイアぁーーー!!」
「ギっ…………」
「うっしゃ!終了〜〜〜!!」
「鮮やかなお手並みでございました、
「えへへへ」
開幕10秒にも満たない時間で戦闘終了となった。秒殺である。
何のために召喚獣たちまで待機させていたのか疑問であるが、安全を優先した結果のため仕方がなかった。
というのもアリエスが万物鑑定をしていて気付いたのだが、このボスは
しかも弱点が氷だというのだから、遊んでないでさっさと終わらせようとなったのである。飽きていたのもあるが。
んふふ、と笑うアリエスは「やっぱルナールの補助はイイな!放った魔法の威力すげぇわ!」と、ご機嫌だった。
それに対してルナールは呆れた顔で笑うしかなかった。「いくら補助があってもあの魔法の威力は、おかしいわよ。瞬殺って……」と。
今いるダンジョンに入ってから魔法をバンバン撃っていたアリエスは、魔法系のステータスが大幅に上がったため、それに伴い威力もマシマシになったのだ。
残る素材のことを考えずにはっちゃけられるのでアリエスは「イラっときたら、またココで遊ぶのもいいかも!」と気に入った様子である。
そして、ヘルファイアが対象を燃やし尽くしたあとには、報酬の宝箱が鎮座しており、その向こうには魔法陣が輝いていた。
「あれ?魔法陣出てんぞ?」
「そうだな、アリー。49階層で終わってたんだな」
「そっかー。まあ、無事に終われたからいいや。アレと真面目にやってたら怪我してただろうしな」
「安全第一、だろ?」
「そういうこった!」
宝箱の中身は何だろうかとウキウキと開けたアリエス。
そこに入っていたのは、リュックのように背負える可愛らしいクマのぬいぐるみだった。
これ、なんぞ?
そう思って万物鑑定してみると、なんと増幅装置だった。
いそいそと、その可愛らしいクマのぬいぐるみを腕に引っ掛け、普段から使っているそれほど威力のないファイアーアローを放ってみた。
ズガーーーーーンっ…………。
とんでもない威力に誰も声を発することが出来ずにいた。
やった本人であるアリエスもポカンとしている。
顔を引きつらせたハインリッヒは「素材残らないんじゃね?」と、つぶやいた。
「えー、やだよ。私、いい歳こいてクマのぬいぐるみなんぞ持たないし」
「似合いそうだけど、まあ嫌なら仕方がないか」
可愛らしいぬいぐるみだが、性能は全くもって可愛くないのであった。
ボスも倒したし、報酬もゲットしたし、
使われた形跡のない帰還スペースの魔法陣が光ったことで、「おい、誰か攻略したぞ!!」と辺りは騒然となり、誰が現れるのか固唾を飲んで見守っていたところ、現れたのがアリエスたちだったことで周囲は顎を落としてしまった。マジかよ……と。
冒険者が帰還スペースを取り囲むようにしてアリエスたちを見ているため、彼女らはそこから動くに動けない状況になってしまい、イラっ!としたアリエスが「皆で仲良く静電気っ!」と魔法を唱えた。ウェルリアムがいたら「それって魔法としてどうなの?」とキョトンとしたことだろう。
パチパチっ!パチン!という音がそこかしこで鳴り、それに伴ってイテっ!とか、アウチっ!と聞こえ、「やめろ、地味に痛てぇんだよ!」と被害に遭った冒険者たちが苦情を訴えてきた。
それに対してアリエスは、「出口を塞いでんじゃねぇよ!アブソリュートゼロじゃなかっただけマシだと思え!」と言ったため、その魔法がどういうものか知っている冒険者たちだけが一斉にそこから
ったく、もう!とプンスカしているアリーたん。
彼女が雷魔法を放ってしまったので「おや?出番がございませんでしたね」と言いつつ、ロッシュは
ダンジョンから帰還してから数日後、十分に休息を取ったハインリッヒとルシオは冒険者ギルドへとやって来て、49階層が最下層であること、そこへの入り方、ボスの特徴や弱点などの情報を売り、ダンジョンで得た素材で使わないものも売って行った。
アリエスが瞬殺してしまったので脅威がどの程度か不明ではあるが、遠距離範囲攻撃に加えて状態異常を使ってくるとなると、ゴールドランク以下しかいないパーティーでは無理があるだろうとなり、冒険者ギルドはこの情報を買うことが出来るのはプラチナランクが3人以上いるパーティーに限るとしたのだった。
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